【社説】貯蓄銀行の帳簿操作、金融業界全体の危機に

 営業停止となった破綻貯蓄銀行8行の会計帳簿の大半が虚偽の数字で粉飾されていたことが明るみに出た。金融委員会によると、釜山貯蓄銀行の場合、2カ月前の時点で帳簿上は純資産が一部残っていることになっていたが、ふたを開ければ、1兆6800億ウォン(約1280億円)の自己資本割れだった。

 検察は営業停止直前に不正に預金が引き出された大株主・行員の口座3588口を追跡しており、金融監督院は彼らがひそかに引き出した1077億ウォン(約82億円)を回収しようとしている。しかし、釜山貯蓄銀行の事態は、違法行為を犯した大株主や経営陣を処罰したり、監視・監督の目をつぶった金融監督機関の責任を問うたりするだけでとどまりそうもない。預金者は裏帳簿を通じた虚偽の決算書類に「これだけで済むはずがない」と感じ、問題がないとされる他行までも疑わざるを得なくなった。破綻貯蓄銀行8行のうち、釜山、釜山第2、中央釜山、宝海の4行は、営業停止の1年2カ月前(2009年12月末)まで自己資本比率が8%を超え、信頼して取引できる銀行に数えられていた。金融当局も当時はそれが正しい数字だとしていたが、実は顧客をだますためにでっち上げられた架空の統計にすぎなかったことが分かった。

 韓国政府は破綻貯蓄銀行の問題が、大きな危機に拡大する兆しを見せていることに差し迫った危機意識を持たなければならない。預金者が金融機関の帳簿に疑惑を持てば、預けた資金を引き出し、安全な場所に移そうとするのが当然の反応だからだ。08年のリーマン・ブラザーズ破綻、世界最大の金融機関シティグループに対する3回の緊急融資実施も、帳簿を疑った顧客が先を争って取引を断ち切ったことがきっかけだった。

 われわれも早期に破綻貯蓄銀行の選別を成し遂げなければ、預金者の不信感は健全な他の貯蓄銀行だけでなく、一般銀行にまで拡大しかねない。ただでさえ、銀行は大型のプロジェクト融資の返済が滞っている状況ではないか。政府は貯蓄銀行に対する不信に端を発する預金者の動揺が金融業界全体に広がらないよう、何としてでもファイアウォールを築くプランを立てなければならない。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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