【ドバイ支局】ウサマ・ビンラディン容疑者の死亡により、同氏の直接の指示に基づく新たなテロの懸念はひとまず後退した。だが、同氏が築いたテロ組織アルカイダは世界各地の独立組織が緩やかに連携していることが特徴だ。第2、第3のビンラディン容疑者が、遺志を引き継ぎテロ攻撃を激化させる恐れは消えない。
「テロ」と「大量破壊兵器の拡散」との戦いを掲げてきた米政権にとって、2003年のイラクのフセイン元大統領の拘束(06年死刑執行)と並び、ビンラディン容疑者の死亡は外交上の得点となる。化学兵器を使用した独裁者が支配したイラクが民主化に動きだし、リビアが大量破壊兵器の開発計画を破棄したことは「フセイン拘束」効果の大きさを示すものだ。
しかしビンラディン容疑者の死亡が対テロ戦争にどれだけの“武器”となるかは未知数だ。
フセイン元大統領を頂点とした厳格な統治機構が存在したイラクと異なり、現在のアルカイダにとってビンラディン容疑者はいわば象徴的な存在の側面が強かった。小規模の「細胞」単位でテロを計画・実行するのがアルカイダの特徴で、指導者拘束でも組織壊滅は容易ではない。
米同時テロを実行するまでのアルカイダは、タリバン政権が支配するアフガンという「破綻国家」(ブレア英元首相)を温床にしてテロ訓練所をもうけるなど勢力を拡大した。しかしアフガンで02年6月に暫定政権が誕生した後、アルカイダのアフガンでの組織は著しく弱体化。一部のメンバーは03年4月にフセイン政権が崩壊したイラクに密入国したとされる。その土壌にあるのが反米意識だ。
中東和平の難航もあり、米国とイスラム世界の亀裂はむしろ深まっている。民衆レベルでの嫌米感情が拡大し、過激派の主張が通りやすく、戦争直後で武器や実行犯が集まる環境が強まった。
アラブ諸国の経済閉そく状況など、過激派を生み出す構造問題も放置されたままだ。中東の多くの国は人口爆発に直面するが、原油依存の経済構造転換が遅れ、若者に十分な職を提供できずにいる。エジプトやサウジアラビアでは、フラストレーションを抱えた若者が過激派組織の活動に走るという共通の構図があった。
米国がイスラム過激派の追及を強めるほど、反米感情を駆り立て活動が活発になるという悪循環で対テロ戦争が泥沼化する恐れもある。通常爆弾に放射性物質を詰めてまき散らす「汚い爆弾」や生物・化学兵器の使用など、テロの手段も高度化、被害を広げる懸念が強い。
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