(cache) 津波被害、避難車の渋滞で拡大 「車で逃げるな」 - 47NEWS(よんななニュース)
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  • 津波被害、避難車の渋滞で拡大 「車で逃げるな」


     津波で押し流され、山積み状態となった車=3月12日、宮城県気仙沼市

     東日本大震災の地震直後、沿岸部各地では避難しようとする車で渋滞が発生、立ち往生した多くの車が津波に襲われ、被害を大きくした。

     北海道・奥尻島が壊滅的打撃を受けた北海道南西沖地震(1993年)など過去にも車で逃げた人が津波にのまれた例があり、津波避難では車を使わないよう呼び掛けていた自治体もあったが、惨事が繰り返された。

     「逃げろ、逃げろ」。3月11日の地震直後、宮城県石巻市の国道398号では激しい渋滞が発生。国道そばの小学校に自転車で避難した市議庄司慈明さん(60)は動けない車に呼び掛けた。窓を閉めて聞こえないのか、応じる車はなかった。

     必死に校舎2階に駆け上がり、助かった庄司さんは、多くの車が転倒しているのを見た。「これからは車で逃げないことを常識にしてほしい」

     宮城県名取市の閖上地区でも、海岸から市役所方面などに向かう県道に車が殺到。農業遠藤広美さん(48)は、家族が車3台に分かれて逃げた。渋滞にぶつかったが「車を置いていくのは嫌だ」。国道を逆走し、脇道から逃げて助かった。

     渋滞はほかにも岩手県大船渡市など各地で発生が確認されている。宮城県気仙沼市の菅原茂市長は「多くの住民が車ごと津波にのまれた。これまで車は使わずに高台へ逃げるよう呼び掛けてきたが、周知徹底できていなかった」と唇をかむ。

     車を捨てた判断が命を助けたケースも。名取市の遠藤さんの夫は車を降り、高架の高速道路に上がって無事だった。

     石巻市の会社員新田毅さん(42)は津波目撃後、車で高台を目指したが、渋滞を見て断念。付近の寺に車を捨て、落石防止ネットを7~8メートルはい上がって助かった。

     「車の方が早いと思ったが、そのまま目指したら死んでいた。考えるだけでぞっとする」。新田さんは身震いした。

     宮城県亘理町の民生委員、佐藤れい子さん(60)は、まず車で小学校に逃げた。車50~60台が停車していた。津波が迫るのを見た教職員が「車は置いて、歩いて避難してください」と誘導。足の悪い人だけが車に乗り、全員が難を逃れた。

     東北大の今村文彦教授(津波工学)は「渋滞を招くので、津波避難はできるだけ車を使わないのが原則。日ごろから渋滞が起きやすい地点などを把握しておくことが望ましい」としている。

      【共同通信】