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F.E.R.C Research Report - File No.1463

忍び寄る放射線の恐怖!
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2000/12/10 報告 報告者:伊達 徹、吉川 美佐、片山 健


台湾台北市の民生という70世帯以上300人が住むアパートで、16年間に14人の住人が甲状腺ガンに侵されていた。甲状腺は、体の発育や新陳代謝を促すホルモンを分泌する、喉の下にある内分泌腺。甲状腺ガンはガンの中でもまれで日本人は0.0001%の発生率。原因は遺伝子の異常かヨードの不足または放射線。名古屋大学理学部 河田昌東博士は、民生アパートの場合、大量の放射線が原因という。 放射能−放射性物質が放射線を出す能力、放射線の強さ、量を表す。放射線−放射性物質から放たれる電磁波や高速粒子。α線、β線、γ線、X線、中性子線の5種類あり、人体の被曝量はシーベルト(Sv)という単位で表す。
250mSv −人体への影響は殆どない。
500mSv −白血球が一時的に減少する事もあるが自然に回復するので大きな影響はない。
1000mSv −吐き気や倦怠感
1500mSv −放射性宿酔という二日酔いに似た症状
4000mSv −細胞が変異したり死滅する。浴びてから1カ月以内に死亡する確立は50%
7000mSv −死亡率ほぼ100%
放射線がガンを引き起こすケース
1.内部被曝−放射線物質を体内に吸い込むと甲状腺に放射性物質がたまり甲状腺ガンになる。体内に放射性物質が入っているので内部被曝測定装置で被曝量を推定できる。 2.外部被曝−放射線を放つ物質に近づいた事で、外側から甲状腺の細胞が傷つきガンが発生する。内部被曝測定装置では測定できないが白血球の染色体を調べることで被曝量を推定できる。
1992年 この14人を調べると全員染色体異常が見られ、中に原発事故に居合わせたという程の600Svもの放射線を浴びたと考えられる人もいたが、台湾で原発事故は起きておらず、放射性物質にかかわる仕事や放射線治療を受けた人もいなかった。 放射能安全促進会理事長 王玉麟氏 によると、1983年に建てられた中国商業銀行の社員寮の建物が放射線に汚染されその鉄筋から放射線が放出されていた。この建物は実際に使用されることなく取り壊され、台湾原子力委員会の一部の人々で内密に処理されていた。 放射能汚染鉄筋の原因
仮説1.鉄筋の製造過程で医療用・工業用の放射性物質が混入した
仮説2.原子炉の補修の際に出た鉄くずが違法に民間廃品業者に販売され、その鉄くずから鉄筋が作られた
仮説3.原子力潜水艦等を廃棄した場合自国で処理せずコストの安い海外の国に持ち出される事がまれにある。台湾の廃品回収業者が知らずに輸入し鉄筋が精製されてしまった。
中国商業銀行の事件を知った王氏は、民生アパートも同様に鉄筋から放射線が放出されていると考え、調査した結果、民生アパートは中国商業銀行と同じ製鉄所で作られた鉄筋が使われており、1984年にはコバルト60(放射線物質)により年間1000mSvの放射線が出ていた事が判明。また放射能安全促進委員会が独自に調査したところ、民生アパートの鉄筋が放射線に汚染されていたことは、なんと1985年の時点でわかっていたという。今回の被害は、その事実を隠したために引き起こされた人災だった。アパートができた翌年の1985年3月30日に放射線測定員がアパートにある歯科医院のレントゲン装置の安全点検に訪れた際、アパートの鉄筋から強い放射線が出ていることを知ったが、その事実は告げられなかった。放射線測定会社の社長は、中国商業銀行の寮の事件がまだ明るみにされていない頃の台湾原子力委員会の所長であり放射線物質に関する責任者だった。事件を知った社長は責任逃れのため、測定員に調査の打ち切りと隠蔽工作を指示した。1980年代の台湾では放射能に関する認識が甘く、この事件の放射性物質量は法律で規制されない範囲だった。 この後、事件を隠した関係者は裁判で有罪判決が下された。また放射能に汚染された物質は何十年たっても汚染が消えないものもあるため、世界各国では厳重な管理がなされている。しかし原子力委員会の調査では台北には放射能に汚染された鉄筋で作られたビルが約140棟、一般家屋が約1500棟あるという。台湾政府は買取り壊す事を決定したが、買取りと補償金が莫大な金額になるため殆どが放置されている。


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