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[27393] {習作} 悪魔との契約(なのはオリ主)
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/04/24 22:05
チリチリと音が聞こえる
ガラガラと崩れる音が聞こえる
バチャと液体がぶちまけられる音が聞こえる
一体何の音なのかさっぱり(さっぱり?)解らない
そうやって自分に嘘をつくが勿論現状は変わらない
意識は理解を拒むのに頭は意識を拒む
チリチリという音
それは炎が燃え上がる音
ガラガラという音
それは建物が崩れる音
バチャという音
明瞭だ
人の中に流れる赤い紅い朱いアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイ

血だ


この数時間、いや数分
それとも数秒だろうか
よく解らない
とにかくもう見慣れてしまったものだ
いい加減飽き飽きする
しかし俺自身はもう動かない

動けない

動く気が起きない
別に今日は特別なことなんてなかった
ただ家族と買い物しにこの地獄
このデパートに来た
ただそれだけである
そしたらご覧の有様
デパートは一瞬で地獄に早変わり
地獄の大安売りである
ああそういえば俺の家族はどこに行ったのだろうか
今、俺は体を仰向けにして寝ている
この地獄に変わる前までは一緒にいたはずだ
そう思って力の入らない体というか首を無理やり動かして左右を見る
すると案の定
そこには物も言わなければ音も作らない見覚えのありすぎるガラクタが

一つは天井から崩れてきたコンクリートの破片に色々刺されたガラクタ
破片と言っても数メートルぐらいの大きさだが
それが男の体中に刺さっていた
そのせいか体から黒と赤が混じった内臓を吐き出していた
俺がついさっきまで父と呼んでいたものだった

もう一つは爆発をもろに受けたのか黒焦げのものだった
ジュー、ジューと肉が焼ける音がまだ聞こえる
これでは判別がつかないが距離的に見れば多分ついさっきまで母と呼んでいたものだったのだろう

何だかおかしい
何故自分はこんなにも冷めた思考をしているのだろう
ついさっきまで自分はどこにでもいる子供であった
くだらないことで笑い、泣き、怒り、悲しみ、喜び、悔しがり、楽しむ
そんな平凡な、そいでいて幸せな自分だった
何が自分を変えたのか
この状況で些か考えるのはおかしいかもしれないがかまいやしない
どうせもうすぐ散りゆく定めだろう
ならば自分がしたいことをするまで
そう思って数秒思考する
答えは簡単であった
目の前の地獄
それが俺を変えたのだろう
この地獄が俺から喜怒哀楽を奪ったのだろう
流石、地獄
地の底には相応しい
ああ
だから地獄に相応しいように俺を変えたのか
納得
では俺は既に人ではないものに変わったのだろうか
まぁ、別にどうでもいいことだ
さっきも考えたようにどうせもうすぐ消える運命(さだめ)だ
消えるものが人であろうがあるまいがそんなものは大した違いはないだろう
どうせ堕ちるところは一緒だろう
ならば足掻くだけ無駄、無駄、無駄
そう思い目を瞑る


だが世界とは皮肉なものでそう思うと全然終わる気配がない
面倒だがもう一度目を開ける
そこはやっぱり変わり映えのない世界
飽きるのを通り越してうざくなってきた
そう思うと苛立ちが募る
体が動かないのがこれでは最悪だ
ああ
むかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつく

ああ
こんなもの全て
■■してやりたい

「その願い叶えてやろうか」
その瞬間
目の前に立っていた
さっきまでそこには何もいなかったのにそこに立っていた
そこに立っているのは女性だった
年は14ぐらいの少女であった
髪は白で長く背中まで届くぐらいのロングヘア
身長は150~155の間くらい
顔は可愛らしさと綺麗さを合わせた美を三個ぐらいつけてもいい造形だった
服装は何だか中世のお姫様が着てそうなドレスを真っ黒にしたものであった
そして何よりも印象的だったものは
その瞳のアカさせあった
炎よりも紅く血よりも朱いアカ
この地獄の中でも尚アカく輝いていた
何故だろうか
どこからどう見ても人間の美少女
しかし俺はこの少女を人間と定義するのは間違いだと本能的に思った
何故だと思っていたら気付いた
この場所
この地獄にあまりにも似合いすぎている
まるで地獄を住処にしているようなものだ
この美もそう異界の美
魔とも呼んでいいくらいだ
美しすぎるものには魔が宿る
まさにその権化だ
そして願いを叶える
となるとあほらしいがこの少女は

「そう賢しいわね。私、悪魔なの」
心を読んだのか
俺が考えていたことを言う
それにしても悪魔ときたか
まぁ、地獄があるくらいだ
悪魔がいてもおかしくはないだろう
その悪魔が一体何の用だろうか

「だから言ったでしょう。貴方の願いを叶えてあげるって」

そう言ってそいつは唇を三日月の形に歪めて笑う
その笑みを見て確信する
さっきまでは半信半疑だった
死に際に幻を見たのだと思っていたが違う
こいつは

真性の■■■■だ

「話が早くて助かるわ。ねぇ、だからその願い叶えてあげましょうか」
ケタケタ笑いながらそう囁く
まさしく悪魔の囁きだ
俺の願い
俺の願いとは一体なんだろうか

「あら、忘れたフリをしてるの。それとも目を背けたの。さっき貴方願ったじゃない。全てを■■したいって」

耳がおかしくなったのか
言葉の途中でノイズが走る
肝心なところが聞こえなかった

「ああ、最高の匂いがしたわ。何せ私が惹きつけられるくらい傲慢で、醜く、おぞましくて、最低に最高だった!ああ、きっと食べたらそれだけでイってしまいそうだったもの!グッと来た!最高の逸材よ貴方!」

いきなり悪魔が嗤いだす
言ったいる意味がよく解らない
さっきまで人の意志を無視して理解しようとしていたくせにこういう時に邪魔をする
まぁ、そもそも悪魔が語っていることを俺が理解できるはずがない
悪魔の嘲いはまだ続く

「きっと貴方は私と契約したら最強最悪の存在になれるわ!人を辞め悪魔を超え神を殺す!とんでもなく異常で、とんでもなく埒外で、とんでもなく常識外!そういった存在になれるわ!」

一体この悪魔は何が言いたいのだろうか
ぼうっとしてきた意識でそれを考える
まるで願いを叶えたら俺はナニカに変わるみたいに言っている
悪魔は魂を奪うだけじゃなかったのだろうか
悪魔は答えない
ただ嗤う
黒い狂気は地獄の中で更に黒々と輝く
そして悪魔は同じことを繰り返す
その言葉こそが悪魔の定義なのだから
唇を三日月に歪めた悪魔はただ要求する
契約のサインを

「その願い叶えてあげましょうか」

そして俺の意識は消える
視界は黒色に染まる
悪魔色に



あとがき
すいません
もう趣味に走った内容です
ストーリーは滅茶苦茶変わると思います
魔法以外にも新しい力や設定も加えます
こういうのが嫌いな方は読まない方がいいです






[27393] 第一話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/04/25 19:22

「いい加減に起きなさい!風雷慧!」

その声で無理矢理起きてしまった
一瞬の自分の喪失
そのあやふやさを心地よく思う
数秒でようやく自分を取り戻す
しかし今度は今の状況の理解が遅れている
頭の理解の遅さを五感が自動的に補正する。便利な頭だ
視覚は風景を
嗅覚は人がいる証を嗅ぎ取り
聴覚は人のざわめきを
触覚は堅い木の感触を
味覚は別に何も
それらの情報を頭の中で整理してようやく今の状況を理解する
ここは聖祥小学校一年の教室
時間は外を見る限り放課後だろう
じゃあ周りのざわめきはクラスメイトが帰ろうとしているからでであろう
昨今の若いやつらは落ち着きが足りないなぁと自分も昨今の若者だということはとりあえず棚に上げる
そしてようやく本題?
俺を睡眠という名の安楽地獄から目を覚まさせた諸悪の根源の方を見る
目の前にいるのは平均身長ぐらいのロングヘアな少女である
しかしこの少女。他の子供と違って違う所がある
それは金髪でつり目なところだ
もう一度言う
金髪でつり目なのだ
サーヴィスにもう一度
金髪でつり目なのだ
自分のサーヴィス精神の大きさに自分でもびっくりだね
後五回ぐらい続けたいが話が進まないので仕方なく断念しようではないか
世界の修正に感謝するがいい
アリサ・
「バーニング」
「そうそう、燃え上がる魂、熱き鼓動、進は紅蓮の道。その名はアリサ・バーニング!!ってアホか!」
素晴らしい。ここまで自爆してくれるといじめ甲斐があるというものだ
では続けようか。悪魔の加護の下で
「すまない、故意だ」
「そう、それなら仕方ないわね。じゃあ私は寛容な心で貴方を滅殺するのが人として正しい判断かな」
おおっと、意外とアグレッシブな
「すまない、恋だ」
「「そう、それなら仕方ないわね。恋とはまさしく燃え上がるような想いだものね。それならバーニングと間違えてもってんなわけあるかい!」
しかし二度ネタは減点だな
まだまだツッコミの経験が足りんな
「で、何の用だ。用がないなら帰らさせてもらうぞ」
「あんたのその一瞬の切り替えには私もついていけんわ。はぁ、一応の義務だから聞くけど一緒にかー」
「だが断る」
「なんで一瞬で断るの!」
「あ、アハハ」
いきなり声が増えた
まさか
「バニングス!ついに影分身の術を覚えたかっ。流石人外!」
「あんたの中での私は一体何に分類されてんのよ!しばき倒すわよ!」
「ははは、何に分類されているかなんて鏡を見給え。一瞬で理解できぐわっ」
「アリサちゃん!ダメだよ、ただでさえおかしい風雷君の頭を叩いたら更におかしくなっちゃうよ!」
「なのはちゃん、本音が漏れているよ」
仕方がないのでそちらを見る
そこにはまぁ、バニングスと並ぶ美少女と呼んでいいだろう少女が二人立っていた
一人は高町なのは
身長は三人の中で一番小さく髪の毛は栗色でツインテールで束ねている。語尾になのをつける可哀想な人類だ
もう一人は月村すずか
身長はアリサと同じくらいの身長で髪の毛はカラスの濡れ羽色でストレートに下している。清純というのがよく似合っている女の子だ
そして個人的だが俺は高町が苦手だ
何故かというと
「さぁっ、今日こそ名前で呼んで!」と強制してくるのだ
もはやストーカーと呼んでもいいレベルだ
なるほど
「高町は変態だったのか……。まぁ、特別驚くような事ではないか」
「いきなり自己完結しないでなの!ていうかどうしてそんな結論に!」
「ああ、確かになのはのそれはもう呪いレベルだものねぇ……」
「ごめんね、なのはちゃん。フォローできないよ」
「いじめだよ!」
「「「Yes,correct!」」」
「ふぇーん!」

これが俺
風雷慧の日常
あの地獄から戻ってきた日常だ
大切なものは地獄(あそこ)で失くしたが



[27393] 第二話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/04/26 22:02

結局今日も高町ストーカーから難なく逃げて街を彷徨っている
いつも通り
俺らしく
断っておくが別に俺は高町自身を特別嫌っているとかではない
……苦手にはしているが
バニングスも月村もそうだ
むしろ今の若者の事(自分も含めて)を考えると今時珍しすぎるタイプだろう。多分だがあいつらは他人のために命を張れる素晴らしい馬鹿だろう。人間としては最高クラスの人間だろう
よくあんな希少種になれたもんだと度々感心する
よほどご両親の教育が良かったのだろう
ん?
じゃあ高町の家族も高町みたいな性格をしているのだろうか?
………一家総出でストーカーか。いやらしい家族だ
なるほど。確かに希少種だと改めて実感をする
個性が薄い俺から見たら憧れはしないが感嘆はしてしまいそうだ
心の中で自嘲する
実際の顔の筋肉はまったく動かないが
すると今日見た二年前の夢を何となく思い出す
あの火災
あの地獄
そう
あの時
あの場所は地獄であった
生きる希望は光の速さよりも速くなくなり
絶望は絶望しすぎて感じられなくなる
否、絶望こそが当たり前だと認識してしまうが故に絶望を感じれなくなってしまう
そんな地獄
それが地獄
その中から何を間違ってか生還してしまった
本当に、本当に運よく助けが間に合ったらしい
奇跡だとよく言われたものだ
だがしかし、しかししかし
生還した少年は地獄を体験する前の少年ではなくなった、いや亡くなったと言った方が適格かもしれない
あの地獄を経験した後、もう既に俺は今までの俺ではなくなったからだ
喜ぶことができなくなった
怒ることができなくなった
哀しむことができなくなった
楽しむことができなくなった
笑うことができなくなった
つまり感情を表すことができなくなった
医者が言うには自己のショックで感情を出しづらくなったのだろうという一般論を言ってきた
別にそんな一般論は興味がない
重要なのは治療法がないということだ
当たり前だろう
別に病気や怪我ではないのだ
治す方法なんてない
そして何より俺が治す気がない
治そうとする気力がそもそも欠落しているのだ
治るはずがない
そう
だから俺は理解できない

何故高町はあんなに必死になって友達になろうとするのか

まったく理解できない
何で友達が必要なのだ
何で他人を信用しなきゃいけないのだろうか
まったくもって理解できない
あれなら殺人鬼の方が理解できる
結局はそういう事だろう
地獄から無事救出されたと思われた少年は実質命を救われた代わりに救われない生き物になったのだろう
まぁ、こんな思考はただの被害妄想だろう
考えるだけで馬鹿らしい。そう考えると自己嫌悪がふつふつと湧き上がる
その自己嫌悪で思わず
■■してしまいそー



一瞬の空白
ついさっきまで何を考えていたのか思い出せなくなる
自分の迂闊さに自分で呆れる
そう、確か夢の話だっただろうか
あの夢も別に久しぶりというわけではない
というか一週間に4、5回のペースで見ている
いい加減何度も同じ映画の同じシーンを見ているみたいで飽き飽きしている
だが唯一気になるところがある
あの少女
人の形をした悪魔
あの唇を三日月に歪めて笑うあの不気味すぎる笑み、あの嗤い方
今でもはっきり覚えている
しかしあら不思議なことにあの少女はあれ以降一度も会っていない
やはりあの火災の中で現実逃避をするために自分が生み出したただの妄想の産物なのか。
だがそれにしても

あの悪魔の嘲笑は
嫌でも゛本物´だと実感させる

自分でも馬鹿らしいと思うが思うことは止められない
あれは悪魔なのだと
人の魂を契約で貪り食らう化け物だと
それ故に疑問がもう一つ残る
俺は
俺はあの悪魔に対して何を願ったのだろうか
その答えもあの地獄に置いてきてしまった
知ろうにも覚えていない
聞こうにもその対象がいない
あの地獄の中、俺は一体何を願ったのだろうか
それが唯一の自分の目的かもしれない
それを知ったら俺は
変われるだろうか………
答えは誰も知るはずがない
それこそ悪魔の知恵がなければ
……………………………
いらないことを考えすぎたようだ
目の前には図書館がある
丁度いい
暇つぶしに本を読もう
そう思い目の前の建物に入ってく
いつも通り
適当に



[27393] 第三話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/04/27 22:47

よいしょ、よいしょと車いすを足場にして私、八神はやては目当ての本を取ろうとするがこれがなかなか取れない
まぁ、足場にするいうても足は動いてないから足場じゃないんやけどな
と自分にツッコミを入れながら頑張って目当ての本を取ろうとする
さっきも言った通り私の名前は八神はやて
普通なら小学校に通っているはずの子供や
そう普通なら
実は私は両親が既に他界しており、しかも両足が動かないというマイナスのステータスを持っているんや
簡単に言うなら不幸の美少女ていうやつやな
…………はい、そこ
自分で美少女言うんやないとかツッコまない
そう一人寂しくボケながら本を取ろうとする
寂しく
そう、私はこの孤独の状況を寂しく思っている
でも、私は学校に行くのには少し気後れする
別にお金がないとかいう世知辛い理由ではない
足のせいで他人に迷惑になる…………とも思っているけどそれは多分言い訳、いや綺麗事やと思っている
多分私は見たくないのだろう
家族がいて、元気に走り回っている自分と同い年の幸福満点の子供を
私も人間
他人を好ましいとも思うし、嫉妬もする
世の中にはそれでも我慢するような人がいるのかもしれないけど、私はそこまで人間ができてないいんや
だから黒い感情が生まれても我慢することはできないんちゃうかと思う
だからあんまり学校に行きたくない
……まぁ、こんなのはただの引きこもりの言い訳かいなぁと思いながら再び本に手を伸ばす
……………むぅ、取れへん
あとほんの数センチ
あとほんの数センチが取れへん
仕方ないから周りの人に助けを求めるか、もしくは諦めようかの二択を考える。別に誰かの手を借りてまでして見たいというわけでもないので諦めようかな~と思っていると
いきなり目当ての本が後ろから抜き取られた
一瞬、思考と動きが止まる
しかし直ぐに両方の動きを再起動する
きっと親切な人が本を取ろうとして取れない自分を見て手伝ってくれたのだろうと思いながら、ゆっくり振り返ろうとする
そういえば、後ろから伸びてきた腕はそこまで高い位置にない
もしかしたら自分と同じくらいの子供かもしれない
そう思いながら振り返る
本を取ってくれた礼と本を受け取るために
そして後ろに立っている人を見た瞬間

今までの自分の価値観が木端微塵に壊れた

目の前に立ったいたのは少年だった
年は予想通り自分と同い年くらいで
背はこの年頃の子供の平均身長くらいで、体格は結構がっしりしてるような気がする
髪の毛はやや長く、しかし伸ばしているというよりもほったらかしにしている感がでている
しかし問題はそこではない
他の特徴はどうでもいいんだ
そこらへんはどこにでもいる少年だ
問題は顔、詳しく言えば表情

そこには何の感情も浮かんでいなかった

思わず息をのむ
こんな顔をする人間。大人、子供を含めて見たことがない
普通に言えば無表情と言えばいいのかもしれないが、普通の無表情はここまで『無』に近づけない。無表情といえどもそこには少しは感情を含んでいるはずなのだから
しかし彼の表情はまさしく『無』表情だ。
何の感情も無いのだ
どうしたらこんな人間になるのだろうか
そんな風に思っていると目の前の少年は可愛らしく首を傾げて
「あれ?これが目当ての本だったのではないのかね」
と問いかけてきた
意外にも声には希薄だが感情を読み取ることが出来た
そのギャップに戸惑いながらも
「ええと、あ、ありがとう……」
とどもりながらも本を受け取った
そしたら彼はうなずぎそして直ぐ近くの空いてる席に座りながら本を読みだす
しばらく放心状態になりながら彼をじーと見てしまう
すると案の定
「何か用」
と質問されてしまう
こちらはただぼーとしていただけなので何も思いつかず少し焦ったがとりあえず目の前の本をネタにした
「ええと、な、何を読んでいるんや?」
「ん、今はやりの謎探偵ゴナン。持ち前の暴走と子供らしい安易な発想で犯人を突き止め周りのおっさんに睡眠薬をぶちこんで特技の声帯模写をして謎を解き明かす漫画。ただ子供なので時々犯人を冤罪で捕まえたり、睡眠薬の多量接種をさせてしまい、周りのおっさんが死んでしまうけど、その時は「ミスっちゃった!犯人さん、おじさん。許してピョン」という独創的な漫画」
「………………かなり前衛的な漫画やなぁ」
「言葉を選ばなくてもいいぞ」
思わず半目になってしまうのは許して欲しいと思う
そこではたと気づく
普通に会話が出来ていることを
自分は多分だが人見知りが超激しいと思っていたのに
この不思議すぎる少年には何も思わなかった
それを不思議に思いながら、口は意志に逆らって言葉を紡ぐ
「あ、あの。私、八神はやて言うんやけど君は?」
「風に雷。そして慧眼の慧で、風雷慧」
即答だった
私は何をしたいんやろうと思いながら言葉を紡ぐ
何も考えてないということは本心を勝手に語ろうとしているのだろう
口は動く
己の無意識を表すために
「ま、また会えへん!」
己の願望を
この不可思議少年との再会の約束を
まだ会って三分ぐらいしか経ってないのに
多分だがこの少年に惹かれたのかもしれない
この少年の非人間性に
答えは簡潔だった



[27393] 第四話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/04/28 22:34
図書館に行った翌日。八神とは約束はできないが会えたらまぁ、会ってやろうという約束をした
というわけで再び聖祥学校の教室
既に時間帯は放課後
つまり帰宅時間
ああ、何て素晴らしい時間
学校が終わったと自覚した時本当に幸福だと思ってしまうのは学校に行っている人で理解できない人はいるだろうか、いやいない!
その幸福に浸りさぁ、帰ろう♪と思っていたら
「待ったなの!」
と叫ぶ声
最上級の幸福の時間は一瞬で壊れた
小さいけど、しかし確かに幸福だった俺の時間はたやすく、呆気なく壊れてしまった
だから高町に角度45度からの鋭いチョップを入れたことを悪いと思う人間がいるだろうか
いたら征伐してやる
「いたっ!お、女の子に手をあげるのはいけないことだと思うよ!」
「やかましい。そして俺からの有難い言葉を一つ言ってやろう。耳の穴を増やしてよーく聞け。この世は男女平等だ」
「立派なことを言ってるけど、それを言い訳に叩いてるようにしか思えないの!というか耳の穴は増やせないの!」
「なに?高町、俺の言う事を聞けないなんていつからそんなに偉くなったんだ。後で掃除ロッカーに突っ込んでやる。入り口をガムテープで止めて」
「いじめだよね!いじめだよね!大切なことだから二度いうよ!」
「で、何の用だ」
「今までの会話は一体何だったの!」
見ればいつの間にか残りの二人がやってきた
こいつら他に友達がいなのかと自分を棚に上げてこの三人の交友関係の心配をした
「と、とにかく、今日こそやってもらうからね!」
高町はいきなり目的語を抜かしていきなり戯言をほざきやがった
今日こそやってもらう?
そんなに何か高町から要求されていたことがあったか、自分の記憶を点検するがまったく身に覚えがない
だが高町は必死に頼んでいる
ならばこちらもちゃんと考えねばと思考する
いや、待て
もしかしたら高町が言っていることの漢字変換を間違えたのかもしれない
頭の辞書を使ってレッツ漢字変換
やってもらう→殺ってもらう
まさか高町にそんな自殺願望があったとは人間とは見かけや性格からは解らないもんだと理解する
いや、しかしまだ他にもあるかもしれない
もう一度よく考えてみよう
やってもらう→ヤッテもらう
なるほど、これが最近の問題の性の乱れという事か
政治家の人たちが慌てるのは無理もないと現場の苦労の一端を思わぬところで得てしまった
だがしかしまだどちらが真実か決定していない
どちらを取るかによって高町の人間性が変わる
これは心してかからなければと誓い真剣に考える
「あ、あの~、何でそんな今まで見たことはないくらい真剣に考えてるの」
「何を言う。今まさにこれからの俺が高町への態度を決定的に変わるかもしれないという瞬間なんだ。真剣に考えなければ失礼だろう」
「!?あ、ありがとう慧君!」
感謝された
ここまでされたなら答えを出さなければ、誠意にならない
ならば後は今までの高町の知識で答えを出すしかない………
考える
高町と言えば……
そうだ、そうだったではないか
まさか忘れていたとは、我ながら忘れっぽいと思う
今度メモ帳を買おうと心のメモ帳に書いとく
そう
高町は
いやらし子だったではないか……
だから答えは後者だ
なるほど
欲求不満なのか
まだ子供なのにと思うが人それぞれだろう
ならば答えなければいけない。自分の意志を
「すまないな、高町。俺はお前と違って健全なんだ」
「私のお願いをどう解釈したらそうなるの!!」
ドンガラガッシャー!と何やら机や椅子が倒れる音
見ればバニングスと月村が勢いよく倒れている
スカートの中身がよく見える
白と青か……
若いなと思う
だが高町の反応を見るとどうやら不正解のようだった
ではまさか答えは前者だったのだろうか
解らない
もうここまで来たら本人に聞いてみよう
「では、何なんだ」
「ただ名前で呼んで!って言いたかっただけなの」
ああ、なるほど。こっちとしてはケリがついたこととしていたのでその発想はまったくなかった
だから言おう
「断る」と
「むぅー!いい加減素直に言って欲しいの!」
「素直に断ったはずだが……」
この少女の頭の中では俺が本当は名前で言いたいんだがみたいな変換を勝手にしているのだろうか。幸せな頭だな
「むぅ、じゃあ今回は諦めさせてもらうけど……」
おや、諦めがいい
それに不安を覚えてしまうのは気のせいだろうか
その不安を現実にするかのように高町の言葉が続く
「そのかわりお願いがあるの」
「お願い?」
不安が徐々に大きくなる
嫌な予感は嫌な現実を引き寄せるという俺の経験が痛いくらい主張している
「つまりね」
ようやく体制を整えたのか月村とバニングスも会話に入ってくる
不味いと心の警戒音が響きまくっている
そして締めは月村が言った
「これからなのはちゃんのお家で遊ばない?」
その瞬間
俺は窓から逃げた
ここは二階だが、これぐらいの位置からなら無傷で着地できる技術ぐらいはある
今までの経験に感謝
自分の状況判断と条件反射に感謝した
だが、着地予想地点の場所に何やら見知らぬお姉さんが立っている
髪の毛は三つ編みで野暮ったい眼鏡をかけていて、年齢は高校生くらいで帰りなのか制服を着ている
身長はその年齢の女性の平均身長くらいで小柄だがしかし引き締まっているという感じがしており、その野暮ったい眼鏡の下は美少女と言ってもおかしくないぐらい整っていた
その唇はすこし驚きに歪んでいた
しかしそれは人が落ちてきたことに驚いたという感じではなくむしろ
本当に落ちてきたという表情だ…………!
しまったと後悔するが遅い
空中では身動きができない
その女性の手が伸びてくる
こちらを捕まえるために
こいつらグルかと捕まる一瞬で思った
まさか高町達に出し抜かれるとは抜かった
勿論奇跡など起こらずあえなく捕まってしまった
とりあえず明日高町を掃除ロッカーに一時間ほどぶち込んでやろうと決心する


あとがき
すいません、物語の進行が遅くて
あと、感想掲示板で色々言われていますが、駄作であるのは自分でも解っていますし、厨二臭いのは百も承知です
だからこんなものは見たくないと思っている方は見なくて結構です



[27393] 第五話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/04/30 18:24

いつもの我が喫茶翠屋
しかし今日は少し店じまい
久しぶりの休暇なのだ
最近家族での団欒をしていなにので丁度いいだろうと思って桃子と一緒に提案したのだ
それに前の仕事での事故のおかげで家族みんなに迷惑をかけてしまった
特になのはにはつらい思いをさせてしまった
不幸中の幸いか
なのはにも友達ができて毎日の学校を楽しく過ごせているようだ
それが何よりも嬉しかった
今日はその友達も連れてくるらしい
良いことだ
アリサちゃんとすずかちゃん
二人ともいい子だ
しかも不思議なことにすずかちゃんのお姉さんの月村忍ちゃん
彼女は何と我が弟子にして頼れる長男の恭也の彼女なのである
縁とは面白いものだ
二人の関係は良好そうだ
時々なかなかの甘々空間を作成している
思わず美由希が泣いて「痛い!私の青春が痛い!」と意味が解らない叫びをあげながら逃げたぐらいだ
ふふふ、しかしまだ桃子と俺のいちゃいちゃ固有結界にはには勝てんなぁ
俺たちの固有結界に勝ちたければこの三倍をがっ
「も、桃子。どうして皿を俺に向けて投げるのかなぁ?」
「あらあら、私も解らないの士郎さん。ただ何か士郎さんが変なことを考えているように感じたかしら?つい」
鋭い
不破家にもこれほど鋭い人間はいなかったかもしれない
流石俺の桃子
そういえばとふと美由希で思い出す
今日はアリサちゃんとすずかsちゃん以外のなんとなのは初の男友達を連れてくるらしい(強制)
本当はアリサちゃん達と仲良くなった時と同じくらいから知り合っていたはずなのだが如何せん、何だか付き合いが悪いらしい
例えば、名前で呼んでと頼んでも名前で呼んでくれないとか
例えば、一緒にお昼を食べようと誘おうとしたら逃げるとか
例えば、一緒に帰ろうと誘おうとしたら逃げるとか
例えば、なのはをいやらしい子扱いするとか
例えば、なのはを罠にかけて男子トイレに侵入させたとか
…………あれー?
何だか殺意が湧いてきたぞー
ははっはっはっはははははははははははは!
まずは軽い『挨拶』からしおうかなー
お父さん頑張るぞー
「父さん。考えていることは大体わかるが殺気は抑えてくれ」
「ははは、今日は士郎さん」
「ん?やぁ、忍ちゃんに恭也」
噂をすれば影とやらか
二人とも高校から帰ってきたか
美由希はなのは達への迎え兼なのはの男友達を捕まえる為に聖祥学校へ
どうやらその子逃げるとなれば手段を選ばず、二階から飛び降りたりするらしい
一度それをした時誤って空手黒帯の体育教師の上に着地してしまい壮絶な殴り合いが起きたらしい。やんちゃで元気な子供だ
「今日は二人とも早かったなぁ。どうしたんだい?」
「いや、忍が………」
「だってぇ、なのはちゃんもそうかもしれないけど、うちのすずかにとっても初の男友達だよ~。気になるじゃない恭也。それにいつもすずかからご飯の時やら色んなときに聞かされるのよ~。風雷君、風雷君て。」
一瞬誰かと思ったがすぐに思い出す
そう確かその男の子の名前が風雷慧という名前だった
珍しい姓だなぁと思っていたのだ
だが、そんなことよりも
「ほう、それは驚きだね。すずかちゃん、そんなに彼の事を話しているのかい?」
意外だった
すずかちゃんはもう何回か会ったが、そんなに他人をそれも男の子について話題にするというようなタイプではないと思っていた
そこらへんは最初らへんの忍ちゃんに似ている
この娘も周りの何故だか知らないが壁を作っていた
きっと理由ありだろうと思う
だが、今は少なくとも恭也に対しては心を開いている
壁を作っていた理由を忍ちゃんから聞いてそれでも一緒にいると誓ったからだろう
今はそれだけでいい
いずれ俺達にも話してほしい
それが親というものだろう
話が逸れてしまった
しかし忍ちゃんの話を聞いているとなのはが言わなかった風雷君について知ることが出来た
曰く
喜怒哀楽がない子だとか
非人間的魅力があるとか
いたずら好きとか
一度も笑わない子だとか
喧嘩慣れしているとか
等々何だかそこまで褒められたような事ではなかった
というか、その

人間だろうか

そんな思考をしていた自分に愕然とする
頭を振ってその思考を消そうとするが消えない
大体一度も笑わない人間などいるはずがないだろう
感情は隠すことはできても消すことはできないが俺の持論である
そんなことが出来るとしたら植物人間か死人くらいだろう
生きているのならその束縛からは逃れられない
そう思う
「はは、やっぱり士郎さんもそう思いますか」
見ると忍ちゃんも苦笑している
困ったという感じで
「でもですね。すずかは同じことを言うんですよ。「きっと彼はどんなことも受け入れられる。能動じゃなくて多分受動的だと思うけどって」。すずかがここまでずけずけ人の事を評価するの初めて聞きましたよ」
苦笑しながらも何だか嬉しそうだ
きっと嬉しいんだろう
妹が他人の事を話題にあげてくれるのが
それを聞いて自分もハッと気づく
そう、例え本当にそんな子だとしてもなのはの友達でいてくれているんだ
なら、悪い子ではないだろう
我ながらみっともない
まさか自分よりも遥かに年下の女の子に教わるとは。俺も修行が足りないな
その後暫く三人で途中で桃子も入り談笑していると

「……ほ…いいか……かんね……!」
「諦め……がいいな……!」
「………風雷君………いこ………?」
「あ………わかって……もう遺言………した」
「…………まに、そんな…………のかなぁ?」
そしたらようやく子供グループの到着のようだ
意外と長いことかかった
きっと例の彼が嫌がって抵抗したのかもしれない
若いなぁと思う
「さぁ、迎えに行こうか」
「ええ」
「ああ」
「はい」
三人とも息をそろえて返事するのに苦笑して四人で立ち上がり玄関の方に行く
もう玄関の方に立っているのを気配で感じ取っている
どうやら美由希がドアを開けようとしているようだ
「今開けるぞー」
とこちらから声をかけあっちの動きが少し止まる
だが直ぐに返事が返ってきた
「うん、わかったお父さん。あ、あと、驚かないでね」
いきなり意味が解らないことを言う娘だ
一体何に驚くというのだろうか
四人で首を傾げる
もしかして風雷君が来ることはサプライズということにしているのだろうか
娘ながらボケているなぁと思う
みんなその話はなのはから聞いたのになぜ忘れるのだろうか
苦笑しながらとりあえず話に乗ってあげることにした
「はいはい、わかったから開けるぞー」
そして遠慮なくドアを開ける
瞬間
美由希の言っていた意味を理解した
彼の姿を見た瞬間

理解させられた




無理矢理拉致られて高町の家にお邪魔して数分
今、俺たちは

大乱〇で白熱していた

「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおら!!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」
「せいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「なのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
「……………………ダメ、私、ついていけない……………」
上から俺、バニングス、月村姉、高町、月村妹の順番のコメントだ
ちなみに今の俺たちのバトルの様子は
「くっ、何でそこまで見事にカウンターを決められるの!?動体視力良すぎだよ風雷君!」
「月村姉も何でそこまでファ○コンパンチを上手いこと決めれる!こっちからしたら痛恨の一撃だ」
「ちょ、なのは!さっきから卑怯よ!ステージ端で飛ばされてようやく戻ってきたのにその度に吸い込んでまた吐き出して場外に飛ばすなんて!女なら真正面から堂々と戦いなさい!人気にでるわよ!」
「止めてよ!そんなリアルな事を言うの!だ、大体アリサちゃんだって、場外に少しでも出たら空中下攻撃をかまして直ぐKOするじゃない!人が弱っている隙にえげつないことしてるよ!」
「…………あれ?私、影薄い?」
とこんな感じで盛り上がっていた
本当ならこの○ームキューブは四人対戦なんだが月村姉が改造して6人までいけるようにしたらしい。大丈夫なのだろうか?具体的に言えば法律関係」
結局勝者は月村姉だった。いや何であんなに上手いことファル○ンパンチを決められるんだろうね
そうやって上手いこと区切りがついた所に狙ったようなタイミングで高町母がお茶などを持ってきてくれた
多分高町はこの人から大量の遺伝子を貰ったのだろう。髪の色や顔がそっくりだ
「ありがとうございます。高町母」
「うふふ、別にいいのよ。何せなのはの初めての男友達だもの。でも、とりあえず高町母じゃなくて桃子さんと呼んでほしいんだけど」
「ははは、いやいや、そんな私などにそんなことは出来ません」
高町の性格は親譲りか
病名高町症候群と認定
これにかかると相手のことを名前で言わないと気が済まなくなる。重度になると相手に強制する。救いがたい病気だ
気を付けなければと肝に銘じる
そうやって油断したのがいけないのか。何を思ったのか知らないが急に高町母が急に頬を掴んできた。考え事をしていたので反応できなかった
「にゃにひょしゅりゅんでゃすか」
掴まれたまま喋ったので変な言葉になってしまう
見れば他のみんなもいきなりの行動に驚いたり首を傾げたりしている
しばらく頬で遊んでいた桃子さんからようやく返事が返ってくる
「いやね、その、笑わないなと桃子さん思ってしまって」
「……………………………」
ああ、なるほど
見れば気にしている大人連中や高町達も耳を傾けている
そういえば言ってなかったか
別に隠すようなことじゃないから言ってもいいけど。何だか不幸自慢みたいになってしまうからあんまり言いたくないのだ
「いえ、別に。特別なことがあってこうなったんじゃないですよ。ただ、デパートの火災に巻き込まれたらこうなっただけです」
「…………………十分大事だと思うけど」
「もう一度言います。別に。そんなの国で見たらよくあることですし。世界の視点で見たら大量にある事故の内の一つです。特別なことじゃないですよ」
そうどこにでもあるような事だ
あんな地獄、世界のどこにでもある
俺はただその内の一つに触れただけ
黙った高町母の代わりに高町父が代わりに話す
「まるで…………他人事のように話すね、君は」
そうだったかなと首を傾げてみる
別にどうでもいいことだろう
「…………一つ聞きたいんだが」
今度は高町兄か
「何でしょう?」
「…………君のご両親は」
今度はそっちねと思い素直に答える
「ええ、目の前でその火災で死にましたよ」
その一言で空気が凍る
はて、何か変な事を言っただろうか
解らず悩んでいると
「………変だよ」
と高町がボソッと呟く
言葉は続く
「おかしいよ。どうしてそんな風に自分の大切な人が死んだのにそんな無感動で入れるの?どうしてそんな酷い目にあったのにそんな無感動でいれるの?どうして、どうしてなの!」
最初は探るようだったが最後のほうは言葉を矢の用に飛ばすぐらい感情が込められていた
何か高町を揺るがすような事を言ったのかもしれない
だが
「じゃあ、何だ。悲劇的に言えばいいのか」
「っつ」
「悲劇的に言ってみんなからのお涙頂戴。素晴らしく泣ける話だね。高町が言いたいことはそういうことかな?」
「わ、私が言いたいのはそういうことじゃ…………」
「同じさ。しかしこれだけは言わせて貰おう
同情なんかいらない
憐みなんかいらない
そんなものはうっとおしいだけだ。反吐が出る。
同情していいのは人を助ける時だけだ
それ以外のはただの憐みという名の見下しだ」
「ふ、風雷君。言い過ぎだよ…………」
「そうか。とは言っても俺の持論を話しただけだ。別に理解しなくてもいい」
そう言ってあっさり話題を断ち切る
雰囲気はさっきまでの賑やかさから考えられないぐらい最悪になってしまった
確かに言い過ぎた
何か言ったほうがいいのかもしれないが生憎そこまで口は達者な方ではない
どうしたものかと思っていると
パン!と手を叩く音が聞こえる
見れば高町姉が手を合わせている
これはまさか………!
「高町姉、まさか………人体錬成を……!」
「駄目よ美由希ちゃん!持ってかれるわよ!」
「ふむ、でもこのシーンは恭也が立場的にしなければいけないのではないか?」
「そして美由希は鎧になるか……」
「な、何でそうなるのー!」
俺、月村姉、高町父、高町兄のコラボレーション突っ込み
うーん。座布団一枚だ
では要件は一体なんだろうか?
「えーと、今日はお泊り会でしょう?だから、そろそろ用意とかをした方がいいんじゃないのかなーと思って」
「ほう、美由紀希の言うとおりだな。部屋の用意とかしないといけないからな」
ほうほう、今日はお泊り会だったのか
では、邪魔にならないうちに
「とこに行こうとしているの、風雷」
「………ちっ、トイレさ」
「………今露骨に舌打ちをしたよね。というかトイレに何故荷物が必要なのかしら。私聞きたいなぁ」
何故かってそんなの決まってる
「実はこの中には俺専用のトイレットペーパーが…」
「何でカバンの中にそんなのをいれているのよ!」
馬鹿な、いざという時に便利だぞ
「ふぅ、でも古典的な失敗をしてるようだから言うけどーートイレそっちじゃないわよ。そっちは出入り口だけ」
なん、だと
「バニングス、一体誰がそんなことを決めた」
「いや、誰が決めたとかじゃなくて」
「馬鹿者!答えがただ一つだけと決めつけるんじゃない!」
「え?何。私叱られてるの?」
「いいかバニングス。答えが一つなんて誰が決めた。誰も決めてないだろう。なのに答えがただ一つしかないと決めつけるその思考はただの諦めだ」
「!?」
「だが、俺は諦めない。地べたを這いずり回ろうが、泥水を啜ることになっても俺は諦めないぞ」
「風雷……」
「さぁ、行くぞ!!」
「待てやこら」
「ちい」
騙されなかったか
高町辺りなら誤魔化せていたはずなんだがな」。ふん、なら理論で片付けさせてもらう
「大体な、いきなりすぎて何も用意などしておらんよ。例えば服とか」
「確か恭也の子供の頃の服がまだあったわね」
「ああ、まだ押し入れにあったはずだ。サイズは見たところそこまで変わらないみたいだ」
高町兄、高町母、余計な真似を
「た、例えばよくあるお泊りセットとか」
「父さん、確か余りの歯ブラシとかあったよね」
「ああ、確かここに……あったあった」
ブルータスよ、お前もか
「ほ、ほら、飛び入り参加だから部屋が空いてな……」
「じゃあ、慧君の布団は恭也の方にしいとくわね」
「ああ、構わない」
に、逃げ道が
「ほ、ほら、高町家に金銭的な負担が」
「あらあら、子供が三人増えたぐらいなら大丈夫よ」
お、己!
「う、家の冷蔵庫に今日中にやらなければいけないものが」
「後でこっちで弁償してあげるわ」
止めて!俺のライフポイントはとっくにゼロだぞ
「じ、実は枕が変わると眠れないんだ!!」
「ダウト!あんた机の上で毎時間グースカグースカ寝てんじゃない!!」
ちぃ!退路は断たれたか
ならば手段はただ一つ
「こうなったら無理やりいかせてもらう!!」
「ほう、小太刀二刀御神不破流を前によくぞ吠えた少年!」
数分後あえなく負けてしまった
みんなからは筋がいいと言われたがそれは嫌がらせでしょうか



ぎぃぃぃぃぃ、ばたん
十年くらい慣れ親しんだドアが開く音で俺は目を覚ました
目を開けるとそこには慣れ親しんだ俺の部屋の天井
今日はなのは達の友達のお泊り会で部屋の中にはその友達の一人の少なくとも俺の知り合いの中で一番複雑怪奇な子供と一緒に寝ていたはずだ
目を彼が寝ていた方に向けるとそこは空っぽ
やはり、彼が出て行った音らしい
それにしてもドアが開くまで気づかないとは
彼は驚くほど気配を断つのが上手い
それに何故だか大体が我流だが体術の心得があるらしい
でなきゃいくら父さんが手を抜いたからといって数分ももたないだろう
誰に教わったのかと聞いてみると
「超野蛮な山猿から教わりました。何と無礼なことに人間であるとか言っていますが」
とか言っていた
何でも散歩していたら急にその顔気に食わん!ほわちゃーとか叫んできてバトルになってそれ以降出会ったら訓練という名の殴り合いを
しているらしい(それを警察に見られて危うく捕まりそうになったが山猿をフレアにして逃げたとか言っている)
お互い名前も知らないとか。それなのによく出会うらしい
それにしても何処に行くのだろうか
眠れないのだろうか
心配になって起き上がった
気配を探ってみると彼が行こうとしている方向は

「屋上か………」
直ぐに向かった。
念のため足音を消して


屋上
そこに彼は座っていた
今日は快晴だったからか、いつもよりも美しい星空が広がっている
まるで人々の命のきらめきだ
それを彼は見上げて座っている
「起こしてしまいましたか」
いきなり声をかけられた
気配と足音は消していたはずなのに
「凄いな、もう気づくなんて」
「流石に真後ろに立たれたら気づきます」
そう言いながら彼はこちらにその背中を向けたままである
この夜空を見ている方が大切だと背中が語っているように見える
彼の隣に座り、俺も星空を見る
「どうしたいんだい、眠れないのかい」
「惜しいですね。正確には眠りたくないが真実です」
その答えに思わず眉を歪める
何故眠りたくないのだろうか
不眠症かと思ったが彼の顔は表情こそないが不健康には見えない
隈一つもない
では何が彼をそうさせるのか
答えは直ぐに聞けた
「昔の、昔の話をするとよく夢にでるんですよ」
何の夢とは聞かない
そんなものは聞く前から答えは解っていなくては人間としてお終いだ
言葉は続く
「それもね、厄介なことにですね。両親が死んだ瞬間を見せられるのですよ」
困ったもんだと言いたげな仕草をする
俺は何も言わない
「それ以降の光景ならいいんですけど、何故だか知らないが過去を話すといつもこうなる」
彼は表情を無表情のままにしたまま話す
今更だが理解した
彼はこの星の海を見ていない
焦点が合っていない
彼が見ているのは今ではなく過去だ
そう、彼の瞳には過去に経験した地獄を見ている
見ている
いや、見続けている
現在進行形で彼は過去を見ているのだ
彼にとっては今も地獄の中にいるようなもんだ

ああ、俺は何て勘違いをしたのだろう

俺は彼には感情なんてものはない少年と思っていた
周りのみんなもそう思っているかもしれない
酷い勘違いだ
彼は亡くなった両親に対して罪悪感を覚えている
自分だけ生き残ってごめんなさいと
いや、もしかしたら両親だけではないのかもしれない
その場にいて死んだ人達にもそう思っているのかもしれない
彼は何でもなさそうに話すが逆だ
彼は何でもあるようなことを何でもなさそうに話すのだ
勿論これは勝手な決めつけかもしれない
実は本当に何にも思っていないのかもしれない
しかし彼は見たくもない光景なのにその嫌なことを俺たちに話してくれた
それだけは

勘違いではない

そう思い彼の頭を撫でた
すると彼は不機嫌そうな声で
「子ども扱いしないでください」
等言ってくる
思わず笑う
小学一年生なのだから子供なのに
弟がいたらこんな風なのかもしれないと思う
俺はそのまま頭を撫でる
彼は不機嫌そうに喋る
「いい加減止めてください恭也さん」
その時初めて名前で呼んでくれた
他者のことを名で呼ばぬ彼が俺の名を
何故と問うと
「………愚痴を聞いてくれたのは貴方が初めてだからです」
つまり認めてくれたのか
成程、彼は誰かにこの話を聞いて欲しかったのかもしれない
それがたまたま俺だった
それがたまらなく嬉しい
剣士である俺が
剣以外でも誰かに認めてもらった
ただそれだけが嬉しかった
俺たちはそのまま朝まで星を見ていた
お互いを何も言わずただ星を



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