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[27221] 魔戒騎士リリカルなのは【習作 リリカルなのは×牙狼】
Name: コノハナ◆7f1086f7 ID:69af7201
Date: 2011/04/15 23:02
*この作品はリリカルなのはと牙狼のクロスです。

*この作品の主役はユーノ君です。

*作者は初心者ですので駄文になると思います。

*投稿は不定期になると思います。

誤って削除してしまいました。申し訳ありません。m(__)m



[27221] プロローグ
Name: コノハナ◆7f1086f7 ID:69af7201
Date: 2011/04/15 23:03
プロローグ


光あるところに、漆黒の闇ありき

古の時代より、人類は闇を恐れた

しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって

人類は希望の光を得る

長き戦いの末、魔獣は封印された

だが、騎士たちが剣を置くことはなかった

守りし者として、彼らは戦い続ける

そんな彼らを、人類はこう呼んだ


魔戒騎士と・・・


そして今、その剣を受け継ぐ少年と

一人の少女が、出会うのだった。


********************


「物語とは突如として始まるものだ。
この広い世界で小さな二人の少年と少女が出会っただけでも。
そしてどんな物語を紡ぐかは誰にもわからない。
だからこそ見届けろ、新しい魔戒騎士の物語を。

次回・不思議な出会い

俺が誰だって? それは次回までの秘密だ。」



[27221] 第一話 不思議な出会い
Name: コノハナ◆7f1086f7 ID:69af7201
Date: 2011/04/15 23:04
第一話 不思議な出会い


朝の清々しい空気が溢れるある日、とあるバス停に一人の少女がいた。
少女の名は高町なのは。
この海鳴市では主婦や女子中高生に人気な喫茶翠屋を営む高町家の次女である。
なのははいつものように自身が通う私立聖祥大付属小学校のバスが来るのを待っていた。
いつもなら親友であるアリサ・バニングスと月村すずかとどんな話をするかなどを考えているなのはであるが今日は別のことを考えていた。
彼女が思案していた事、それは・・・

「不思議な夢だったなぁ…」

ふと、口から出た言葉はなのはが思案していた事であった。
それは今朝見た夢。
妙にリアルだったそれは白いコートを羽織る自分と同じぐらいの少年が剣をふるい、灰色の塊に妖しく光る赫い目をした怪物と戦う夢。
ただの夢と切って捨てるにはリアルであり場所も親友の二人と帰り道によく通る公園でもあったため朝からずっと頭に引っ掛かっていた。
しかしそこでなのはの思考を遮るかのようにバスが到着する。
なのはは一旦考えるのをやめるとバスに乗り込み一番後にいた二人の親友のもとに歩いていくのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なのはがそんな事を考えていた頃、白いコートの少年・ユーノ・スクライアは昨晩戦った場所から少し離れた木の根元で目を覚ました。

「朝か・・・」

「ああ、よく眠れたか?」

ユーノの言葉に答えたのは彼の左手中指にはめられた人の頭蓋に近い形をした指輪・魔導輪ザルバ。
ユーノはザルバの言葉に頷きで返した。
本音を言えばもう少し休んでしたいし食事だってしたい。
しかし今は一刻を争う状況だ。
被害が出る前に事態を収拾したい。
そのことを分かっているからかザルバもなにも言わず今後の事について話あった。

「とにかく、ますはあのジュエルシードの暴走体を何とかしないとな。他のジュエルシードが発動する前にかたずけないとこの世界のやつらに被害がでるぞ。」

「わかってる。」

ザルバの言葉にもう一度頷き、立ち上がると昨晩相手とした暴走体が逃げて行った方角に走りだしていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「何なんだろうこれ?ガラス玉じゃないみたいだけど」

その日の夜、なのはは自分の部屋で夕方通った公園で拾った赤い玉を手のひらに乗せてそれをながめたいた。
その公園も今日の夢で見たようにボートや艀が壊れていたり地面がえぐれていたりしていた。
そしてこの赤い玉もその近くで拾ったのだった。

「やっぱり、あの夢は何かあるよね。でもなんで私そんな夢を見たんだろう?」

本能的になにかを感じたなのはであったがそこから先がわからなかった。
とにかく気分を変えるためにお風呂に入ろうと赤い玉をポケットにしまうと下に降りて行った。

「っ!? 何、今声が聞こえた?」

下に降りたと同時にどこからか夢で見た怪物と同じ声が聞こえてきた。
いてもたってもいられなくなったなのはは家族に見つからないように家を出てその声がする方に走って行った。
もうすぐ運命の出会いがあるとも知らずに。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

十数分後、なのはは近くの動物病院に来ていた。
ここはすずか達と何度か訪れたことがある病院だったがなのはは乱れた呼吸を整えながら声の主を探すために辺りを見渡す。

「何処にもいない?」

しかしいくら見渡してもそんな怪物は見当たらない。
やっぱり夢だったのかと思い家に帰ろうと振り向く。
その瞬間いきなり背後からドスン!と大きなものが落ちる音がする。
なのはが後を向くと息をのんだ。
そこには夢で見たあの怪物がこちらに向かってその妖しく光る眼と夢では見えなかった口を歪めてなのはのことを睨んでいた。
なのははここにきて自分に戦う力がないことに気づく。

「ああっ・・・い、いやぁ・・・」

すぐに逃げないといけない状況であるが恐怖で足が動かない。
遂にはその場に座り込んでしまう。
そしてそれを待っていたかのように怪物が襲い掛かる。

「キャァァァァァァ!?」

なのはは固く瞼を閉じ顔の前で腕を組む。
そして自分の体に来るだろう衝撃に備える。
しかし、いくら待っても衝撃は訪れない。
不思議に思いゆっくりと瞼を開くと・・・・

(あっ…)

その瞬間なのはの視界は白一色に染まる。
それが自分と同じぐらいの少年の背中である事に気付くと同時に不思議と今までの恐怖がやわらいでいくことを感じた。

これが小さな魔戒騎士と白き魔導師のその物語の始まりの出会いであった。


********************


「超常の力って言ったらお前たちは何を思い浮かべる?
たとえば気やマナ、あと波動っていうふうに色々とあると思う。
だが一番最初に浮かぶのは多分これだろう。

次回・魔法の力

しかし最近の魔法ってのは色々とハイテクなんだな。」



[27221] 第二話 魔法の力
Name: コノハナ◆7f1086f7 ID:69af7201
Date: 2011/04/22 20:58
第二話 魔法の力


なのはがジュエルシードの暴走体と遭遇する数分前。
なのは同様に気配を感じたユーノは動物病院近くの電柱の上にいた。

「しかし、お前も馬鹿だなあ。大切なレイジングハートをなくすなんて。あれがないとジュエルシードを保管できないぞ。」

「もう、良いだろうそのことは。」

今朝から捜索を再開したユーノとザルバだったがほどなくしてレイジングハートをなくしていることに気が付き、すぐさま昨日の公園に探しに行った。
だがその時にはすでに警察や公園の管理者などが現場を調べていたため仕方なくレイジングハートの捜索を保留にして暴走体の捜索を行っていたのだった。

「いや、よくないぞ。あれ一つで一体いくらすると思ってんだ。」

「うっ・・・」

暴走体の捜索中、ザルバが事あるごとにそのことを言ってくる。
これがただのストレージデバイスならここまで言われる事はなかっただろう。
しかし、レイジングハートはデバイスの中でも高価なインテリジェントデバイス。
さらに大量の魔力を運用できる高性能機であるためその価値は大人でもそうそう出せる金額ではなかった。
ユーノとしてもできることならレイジングハートを探したいが暴走体をほっておくこともできない。
そのためここまで耳が痛くなるのを我慢して捜索を続けていたのだ。

「とにかく、レイジングハートのことは暴走体を封印してから何とかする。まずは暴走体を何とかするのが最優先だ。」

「そうだが、封印できるのか今のお前に。」

「・・・・・・」

とにかく話題を変えようとするユーノだったがさきほどのからかうような口調から真剣な声音に変わったザルバの言葉にユーノは黙り込んでしまった。
ユーノがもつ魔戒騎士以外の力で今回のジュエルシードの封印には不可欠な魔法は今ほとんど使用する事が出来ないでいた。
元々この世界に来るまでにも無茶をした上にこの世界は魔力結合が難しい大気のためか回復も思うように出来ずにいたのだ。
だからといって諦める訳にはいかない。
ジュエルシードを発掘したのは自分であり、この責任は自分にあると考えるユーノ。
何より自分は人々を守る魔戒騎士なのだから逃げる訳にはいかない。
そう思いながら左手に握る赤い鞘に納められた剣・魔戒剣を強く握り締める。

「・・・・・・」

それを感じながらザルバは口ごもる。
ユーノと出会って九年。
互いのことはよくわかっているつもりだ。
優しく、責任感がつよくそして同年代の子供に比べてはるかに聡明で時には大人達でさえ目を見張る事がある。
だからこそ発掘責任者に選ばれたのだろうが、それがユーノの孤独を生んでいることをザルバは感じていた。
たとえどれだけ才能がありそれを伸ばす努力を惜しまず今使える力を十二分に発揮することができてもまだ9歳の子供だ。

(望むならこいつの心を照らす存在が現れることを俺は願うね。)

そんなふうにユーノの事を考えていたザルバだったがようやく探し求めた存在の気配を見つけた。

「っ、見つけた!」

「ああ、あと厄介なことに人間が近くにいるな。急げ、ユーノ!」

「わかった。」

ザルバの言葉に答えるよりも早く電柱から飛び降りると颯爽と静かな住宅街の道を駆け抜けていくユーノ。
程なくしてなのはがいる動物病院につくユーノの目に映るのは今まさになのはに襲い掛かる暴走体であった。
ユーノは両足に力を込めると地面が陥没するほどの力で踏み込みなのはと暴走体の間に立ち塞がると暴走体めがけて右足のローキックを打ち込み暴走体を蹴り飛ばすのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なのはは突如として現れた少年から目が離せないでいた。
颯爽と自分の危機を救ったこの少年になのははこの一連の事態が自分の見ている夢ではないのかと感じていた。

「君、怪我はない?」

しかしその考えは少年の言葉で遮られる。
振り向き自分を見つめる少年をあらためて見るなのは。
歳は自分と同じぐらい、髪は金髪で翠の瞳は彼の優しさを表しているかのようである。
革製の服に一番目を引く白いコートをはためかせ左手には赤い鞘が握られていた。

「あっ、大丈夫です・・・。」

「そう、良かった。」

自分が無事である事を告げるとその少年も微笑を浮かべる。
その笑みになのはは頬が熱くなるのを感じた。
互いに見つめあい穏やかな空気が二人の間に流れるが事態は決して好転したわけではない。

「ユーノ、のんびりしている暇はないぞ。結界を張ってこれ以上の被害を出させるな。」

その声になのはは驚く。
いきなり彼の左手にはめられた指輪が喋ったのだから。
しかしユーノはなのはの驚きを気にかけることなく左手に持った剣を地面に突き刺し両手で印を結ぶとなりやら呪文のようなもの呟く。
すると辺りの雰囲気が一変し、今まで聞こえていた家からの音や虫達の鳴き声が消え静まり返る。
なのはが困惑するなかユーノに蹴り飛ばされた暴走体が再びユーノ達に襲い掛かる。

「っ、ラウンドシールド!」

それに気づいたユーノが右手を突きだすと二重の正方形を中心にした真円形の翡翠色に輝く魔法陣が生まれ暴走体と激突すると僅かな均衡の後にもう一度暴走体は魔法陣に弾き飛ばされる。

「いったんここから離れたほうがいいな。ユーノまだ魔法は使えるか?」

「あと少しだけね・・・。いくよ、チェーンバインド!」

わずかに息を乱すユーノであったがザルバの言葉にさきほどと同じように右手を暴走体に向けるとさっきと同じ魔法陣が暴走体の下に発生しそこから同じく翡翠色に輝く鎖が数本生まれ暴走体に絡みついていく。

「ちょっと、ごめんね。」

「えっ、ふぇぇぇ!?」

もう一度なのはに振り返ったユーノは膝を折り先に謝るとなのはの背中と膝の裏に腕を差し込むとそのまま立ち上がる。
俗にいうお姫様だっこであるがいきなりそんなことをされたなのはは今までの事態の事を含めてか顔を真っ赤にする。

「安全な場所まで離れるから、しっかり摑まってて。」

ユーノの言葉にただ頷くだけのなのははユーノの言ったととおりにユーノのコートをしっかり握る。
それを確認するとユーノは足早にその場所を離れるのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

先ほどの動物病院から十数メートル離れた電柱の陰にユーノ達は身をひそめ暴走体について思案していた。

「さて、どうやって奴を封印するかな?」

「もちろん、僕が封印するに決まっているだろ。」

「馬鹿かユーノ。今のお前にそれだけの魔力があるのか?」

本来であればユーノが担当するものだがさきほどの魔法で封印するのに必要な魔力がユーノにはなかった。
それでも自分が行おうとするユーノにザルバが一喝する。
そんな二人の会話を身を縮めて聞いているなのは。

「でも、それ以外に方法がないだろう!」

《私に一つ、案があります。》

わずかに声を荒げるユーノの言葉に答えたのはここにいる三人以外の声。
大人の女性でありながらどこか機械的なその声はなのはのポケットから響いていた。
その声に驚くなのはだがユーノとザルバはその声に覚えがあった。

「レイジングハートか!何処にいるんだ!」

《この子のポケットの中です。私を落として何をしているかと思えばくだらないケンカなら余所でしてください。》

少し棘がある言い方だがユーノにとっては大切な仲間である。
なのはがポケットから出した淡く光る赤い玉-レイジングハート-に先ほど答えた内容に対してザルバが問いかけた。

「それでさっき言った方法って一体何なんだ?」

《このお嬢さんに協力してもらうのです。このお嬢さんの魔力はユーノ以上ですから問題はないでしょう。》

確かになのはからは魔力を感じる。
ザルバはそれしか方法がないかと考えるが・・・。

「ダメだ!そんな危険なことをこの子にさせられないよ!」

ユーノがその方法に反対の意見を出した。
これは自分の責任であり一般人を巻き込みたくないという考えからでる。
それがわかるザルバであったが今の現状でそれ以外に有効な方法が思いつかない。
ユーノとザルバが言い合っていると。

「あの!」

なのはが大きな声を出した。
その声でなのはに振り向くユーノになのはが何かを決意した目で見つめた。

「あの、私に出来ることならお手伝いさせて下さい!」

「ダメだ、こんな危ないことはさせられないよ。」

「でも、このまま放っておいたら大変なことになるんでしょ。私、あなたのお手伝いがしたいの。」

なのは自身どうしてそんなことを言ったのか分からないが自分の気持ちをそのまま言ったつもりだった。

「ユーノ。これ以上言ってもこの嬢ちゃんは折れないぞ、きっと。」

なのはの言葉にまだなにか言いたそうだったユーノだったがザルバの言葉となのはの真剣な表情をみてしばらく思案すると首を縦にふった。

「わかった。君の力を貸して欲しい。」

「うん!」

ユーノの言葉になのは嬉しそうに頷くのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「まずはレイジングハートに君の事を登録する必要がある。僕の言うとおりに言って。」

「はい。」

さっそく、なのはが魔法を使えるようにデバイス登録を行うユーノとなのは。
なのはがレイジングハートを手に持って互いに向かい合う。

「風は空に、星は天に。」
「風は空に・・・星は天に・・・」

レイジングハートを起動するためのパスワードをユーノに続いてなのはが口にしていく。

「不屈の心は、この胸に」
「不屈の・・・心は・・・この胸に・・・」

それにともないなのはの足元にユーノと同じ、しかし淡い桜色の魔法陣が形成されていく。

「この手に魔法を」
「この手に・・・魔法を・・・」

なのははゆっくりとレイジングハートをもった左手を前に構える。

「「レイジングハート、セェェェット アップ!!」」

最後の言葉を二人が同時に叫ぶと眩い桜色の光が辺りを照らす。

《Stand by ready set up》

その瞬間、なのはの体内に眠っていた膨大な魔力が雲を突き向けて天に桜色の光の柱をつくっていく。

「す、すごい、なんて魔力なんだ・・・。」

その魔力に圧倒されるユーノだったがすぐに気を引き締める。

《はじめまして、新しい使用者さん。さっそくですがあなたの魔力素質を確認しました。デバイス・防護服共に最適な形状を自動選択しますがよろしいでしょうか?》

「あ、はい。よろしくお願いします。」

《All right》

次の瞬間、なのはの着ていた服が消えると全身が白を基調としたロングスカートの服に胸には金色のプロテクターがある防護服-バリアジャケット-を身にまとった姿になった。
同じくレイジングハートも先端に三日月ようなパーツの中に赤い玉がつきそのパーツの根元には白く細長い三角形の突起物がついた杖に変わる。

「こ、これでいいのかな?」

「ああ。それじゃ作戦を伝える。まずユーノが暴走体に接近して隙をつくる。そこをお前が封印するんだが、こいつは射撃魔法が使えるか?」

《ええ、それどころか彼女の魔力なら砲撃魔法も使用可能です。》

「よし。それは好都合だ。」

ザルバとレイジングハートがなにやら作戦を話しているがなのはには何を言っているのか全く解らずユーノに目線をやる。
それに気づいたユーノがあらためて作戦を伝える。

「君はただあの暴走体を打ち抜くことだけを考えれば良いんだ。攻撃するタイミングは僕が合図するから。」

「でもどうやって攻撃したらいいの?」

《それなら問題ありません。Mode change Canon mode 》

なのはの疑問にこたえるかのようにレイジングハートはその姿を変える。
先端が鳥のくちばしのようになりその根元から三方向に桜色の羽が生え、さらにトリガーが飛び出してきた。

《あとは魔力をこめて引き金を引くだけです。》

その姿に一瞬唖然とするなのはだが気を引き締めユーノに目を向ける。
その目を見たユーノもその決意を感じ力強く頷く。
そのとき、暴走体の咆哮が辺りに響く。

「それじゃ行くよ。」

「うん!」

そう言うとユーノは暴走体に向かって走り出していった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

再び暴走体に対峙したユーノは体を半身にし魔戒剣を鞘から抜き放ち前に構えた左手にあてるとゆっくりと剣を引く。
わずかに響く金属音が辺りの緊張を高めていく。
動かないユーノと暴走体であったが痺れをきらしたかのように暴走体が飛びかかる。
それをバックステップでかわすユーノは魔戒剣を上段から振り下ろす。
その剣先が暴走体をかすめるが決定打にはならない。
再び互いににらみ合うがその時ユーノの脳になのはの声が響く。
レイジングハートから教わった念話である。

『準備できたよ。』

『わかった。今から奴を切り上げるからそこを狙うんだ。』

『うん。』

なのはの念話に答えたユーノは魔戒剣を逆手に持ち構える。
再び襲い掛かる暴走体に今度はユーノも暴走体に向かって走り出す。
両者が激突する寸前、ユーノは強く踏み込みそのまま魔戒剣を切り上げる。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

僅かに重さを感じるがそれを無視してユーノは振り抜く。

『今だ!』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『今だ!』

ユーノの念話になのははレイジングハートを空に向けて構え直す。
すでにレイジングハートには十分の魔力が蓄えられている。

《直射砲形態で発射します。ロックオンの瞬間にトリガーを》

「でも私に出来るかな?」

《大丈夫、あなたはただ願えばいいだけです。あれを打ち抜きたいと。》

なのはの弱気な発言にレイジングハートが優しく声をかける。
機械であるはずなのにその声には人間のような温かみがありなのはの不安をとかしていった。

《来ました!》

レイジングハートの言葉になのはは空を見る。
するとさきほどの暴走体が空高く吹き飛ばされている。
なのははそれに向けてレイジングハートを構えるとカーソルがあらわれ暴走体に標準がつけられる。
そしてロックの瞬間、なのははレイジングハートの言った通りに強くつよく願いトリガーを引く。
瞬間、桜色の光条が暴走体に直撃しその体を吹き飛ばしていった・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

砲撃の衝撃に尻持ちをついたなのはにユーノが近づき手を差し伸ばす。
その手につかまり立ち上がると頭上から菱形の空色に光る宝石が降りてきた。

「なのは、レイジングハートでジュエルシードに触れて。」

「こ、こう?」

ゆっくりとジュエルシードにレイジングハートを向けるとジュエルシードがレイジングハートの中に入っていく。

《internalize No,21》

ようやくジュエルシードを封印することが出来たユーノとなのは。
互いにほめるように見つめあうが突然、なのはの足から力が抜けていく。

「あっ・・・・。」

「おっと、大丈夫?」

なのはが倒れかけるがそのまえにユーノがなのはを受け止める。
ユーノが問いかけるがなのはは答えるかわり安らかな寝息をもらしていた。

「こんな騒動に巻き込まれた上に初めて魔法を使ったんだ、疲れたんだろう。どこか休める場所を探すぞユーノ。」

「うん、わかった。」

ザルバの言葉に答えるとユーノは結界を解き、再びなのはをお姫様だっこすると歩き出す。
レイジングハートもバリアジャケットを解き、自身も待機状態に戻るとなのは胸の上に乗る。
そうして歩を進めるユーノたちを夜空に輝く星達がただ見つめているのだった。

戦いの後のわずかな平穏。今はただ白き魔道師は眠る。小さな魔戒騎士の腕の中で・・・


********************


「人間は生きていく上で必ず集団をつくる。
それは一人では出来ないことを誰かに求めるからだ。
そしてその中で一番小さく、身近な集団はお前達がよく知るものだ。

次回・新しい家族

これはユーノにとって願ってもないことだな。」



[27221] 第三話 新しい家族
Name: コノハナ◆7f1086f7 ID:69af7201
Date: 2011/04/30 21:38
第三話 新しい家族


「うっ・・・うん・・・・。」

春先のまだ冷たい夜風に頬をなでられ浅い眠りから目覚めたなのははゆっくりと起き上がる。
寝ぼけ眼で辺りを見回すとそこは自分が知る池のほとりであり今自分が横になっていたのはその近くにあるベンチであった。

「あれ?私どうしたんだろう?それにこのコート・・・」

少しずつ覚醒していく頭が現状を確認していく中で自分にかけられていた白いコートを手にとるなのは。
それはあの少年が着ていたものである。
そんなことを思っていたなのはの耳に地面を踏み締める音が届く。

「あっ・・・・。」

そちらの方へ目線をやるとなのはは感嘆の息を零した。
そこには先ほどの少年が直刀の剣を振るっていた。
その洗練された動きを照らす月明かりと相まってまるで舞を踊っているような印象を受ける。

「君、大丈夫?」

どれだけ見ていただろうか、剣を鞘に納めた少年が声をかけるまでその美しさに呆けていたなのはその声に慌てた。

「は、はい!大丈夫です!」

「そう、よかった。」

なのはの慌てた声を聞き少し苦笑しながら返事をするユーノの声になのはは羞恥で頬が熱くなるのを感じた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「それじゃ、あらためて自己紹介。僕はユーノ・スクライア。それとこれは魔導輪のザルザだ。」

「よろしくな、嬢ちゃん。」

「あっ、私は高町なのはです!」

なのはの頬の火照りがおさまるのを待ってからユーノは今まで出来なかった自己紹介をおこなった。
それに続くようにザルバをなのはに見せるとザルバ自身もなのはに声をかけなのはも自分の名前を少々大きくではあるが答えた。

「なのはか・・・良い名前だな。」

「そうだね。それと今回は本当にありがとう。君のおかげで無事にジュエルシードを封印することが出来たよ。」

自身の名前をザルバに褒められまたユーノからも感謝の言葉を言われ照れるなのはであったがそこで今回の事をユーノに訪ねた。

「そんなことないよ。お手伝いしたいと思っただけだから。それはそうとさっきの怪物、あれってなんだったの?」

なのはの質問にユーノは少し思案するとゆっくりと今回の出来ごとの成り行きを語り始めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「まず初めに僕はこの世界の人間じゃない。こことは違う次元世界・・つまり異世界から来たんだ。」

ユーノの言葉に驚くなのはだが不思議とそのことに納得することが出来た。
おそらく今回経験した不可思議な体験がそうさせたのだろう。
なのはが驚くのを横目で見ながらユーノは続けた。

「ジュエルシードは僕達の世界では古代に作られたもので願いを叶える魔法の石なんだ。でもとても不安定で今回みたいに暴走することもある。」

「でもなんでそんな危険なものが私のご近所にあるの?」

そうなのはが首をかしげるとユーノの顔に陰りがさす。

「僕の所為なんだ・・・」

「えっ・・・」

「僕は今回、ジュエルシードを発掘したスクライア一族の一人で発掘責任者なんだけどジュエルシードを調査団に頼んで運んでもらったんだ。けど事故か何らかの人為的災害で時空間船が・・・。そして21個のジュエルシードがこの世界に散らばってしまったんだ・・・。」

「そうなんだ・・・。あれ、でもユーノくんの話を聞く限りだとユーノくんは何にも悪くないんじゃない?」

そう、確かにジュエルシードを発掘したのユーノであるが散らばってしまった原因は全くの別。
そう思うなのはであるがユーノの顔から影が消えることはなかった。

「でもあれを見つけたの僕だから。全部回収してあるべき場所に返さないと。それに僕は・・・・。」

「・・・・」

そこで言葉をきるユーノの心中をザルバが察する。

(魔戒騎士として人々を守る。その気持ちは分かるがユーノの場合それが一種の強迫観念になりかけてる。このままじゃ・・・)

ユーノとザルバが互いに思考の海に沈んでいるときなのはがユーノに優しく語りかける。

「なんとなく分かるよユーノくんの気持ち。真面目なんだね、ユーノくんは。」

「えっ。」

その言葉になのはに振り向くユーノをむかえたのはなのはの優しい微笑えみだった。
しばらくの間互いに見つめあうユーノとなのは。
それを眺めるザルバは心の中でこのなのはとの出会いがユーノにとって大きな意味をもつだろうと感じていた。
しかしいつまでも見つめあっていては話が進まない。
そう考えたザルバは仕方なく咳払いをして二人を呼び戻す。

「あ、あと聞きたいことはあるかななのはさんっ!?」

「えっ!えーっと、そ、それじゃユーノくんはこれからどうするの?それと私のことはなのはでいいよ。」

ザルバの咳払いで現実に戻った二人は互いに頬を赤らめ顔をそむけるとなのはが今後の事を聞いてきた。
なのはの言葉で呼び方を改めたユーノは真剣な顔でなのはを見る。

「僕の力が戻るまでの間、一週間・・・いや五日もあれば僕の力も回復する。そうしたらまた一人でジュエルシードを探しに行く。」

その言葉に驚くなのはだがすぐに優しい眼差しいをユーノに向けると自分の気持ちを打ち明けた。

「だーめ。私もお手伝いするから。」

「だーめって、なのは、ジュエルシードの封印は危険だ。今回みたいな目にだって合うかもしれないだよ。」

「でも私、お話を聞いちゃったしそれに私に力があるならユーノくんのお手伝いしたいもん。」

「でも・・・。」

「諦めろ、ユーノ」

確かになのはの力があれば回収作業もスムーズにいくだろうが女の子であるなのはを危険な目に合わせたくないユーノは渋る。
しかしそれをさえぎったのはザルバだった。

「なのはの決意は本物だ。いまさら何を言っても聞きやしないぞ。」

「・・・・」

ザルバの言葉を聞いたユーノは押し黙ると瞼を閉じしばらく考える。
その様子を心配そうに見つめるなのはであったがユーノが目を開くとなのはを見つめる。

「それじゃなのは、お願いして良いかな?君の事は僕が必ず守るから。」

「う、うん!!」

ユーノの言葉になのはは満面の笑みを浮かべ頷く。
そんな二人の様子をザルバも嬉しそうに見つめる。

「じゃ、行こっか。」

するとなのははいきよいよく立ち上がるとユーノに手を差し出す。

「行くってどこに?」

いきなりのことで今度はユーノが困惑する。
しかしなのははそんなユーノの困惑を無視するように先ほどと同じような満面の笑みを浮かべ今から向かう場所をユーノに言った。

「私の家!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜の静かな住宅街をなのはのあとをついていくユーノであるがその顔は心配な色が色濃く表れていた。

「大丈夫かな?ザルバ。」

「さあ、俺には分からんがなのはがあんないに自信満々なんだから大丈夫なんだろう。」

「そうかな?」

なのはに聞こえないように話をするユーノとザルバ。
実を言えばなのはの申し出はユーノにとって非常に嬉しかった。
封印の協力はもちろんのことだがユーノはこの世界の通貨を持っていない。
つまり食べ物などを買うことは出来ないしどこかに泊まることも出来ない。
もちろんスクライア一族で生活していたため野宿をすることはできるがもしそんなところをこの世界の警察に見つかれば捜索どころの騒ぎではない。
本音をいえばすでにユーノの体力も限界でありすぐにでも眠ってしまいたい衝動に駆られるのを必死に抑えているのだ。
しかし・・・・

「でね、お父さんはサッカークラブのオーナーで・・・・」

道すがらから聞く家族の話からなのはが家族にとても愛されていることが見て取れる。
だからこそなのはが危険な事に協力しようとすることをそしてそれの原因である自分の事を受け入れてくれるか心配なのだったのだ。
それに・・・

(父親か・・・)

今なのはが話す父親のことを聞きながらユーノは自分の父親のことを思い出していた。
実はユーノは生まれた頃からスクライア一族で暮らしていた訳ではない。
ユーノの生まれ故郷はホラーによって滅ぼされ自身もホラーに食われそうになったところを後の父になるガロを継ぐ黄金騎士に助けられたのだ。
その父もユーノが4歳の時にユーノを守りホラーと相打ち、死んだ。
その後父と親交があったスクライア一族の族長がユーノを引き取りスクライア一族の一員となったのだ。
ユーノが自分の父のことを思い出していたら突然なのはが立ち止まる。
危うくぶつかりそうになるが持ち前の運動神経でそれを回避するユーノ。

「到着!ここが私の家です!」

「ここが・・・。」

なのはが紹介した家の大きさにユーノは若干驚いていた。
家自体は普通の一軒家より多少大きいだけだがその敷地は他の家より優に3倍はある。
それもそのはず、なのはの家には道場があるのがその理由だ。
それはともかくなのはは門の前でユーノに振り返る。

「じゃユーノくん。私がお父さん達に行ってくるからここで待っててね。」

「うん。あっ、なのはちょっと待って。」

「えっ、なにユーノ「何やってるんだなのは。」くん・・・・」

なのはが門を押し中に入ろうとするときその向こうに気配を感じたユーノがなのはを止めるがそれより先に中に入ってしまったなのはに向かって男性の声が響く。
その声にゆっくりと振り向くなのはの目に映るのは男女の姿。

「お兄ちゃん・・・お姉ちゃん・・・」

その二人こそなのはの兄と姉である高町恭也と高町美由紀であった。

「こんな時間に何処に行っていたんだ。それと後にいる子は?」

「まあまあ恭ちゃん。無事帰ってきたんだし良いじゃない。」

少しきつい眼差しをなのはに向ける恭也とそれをおさめようとする美由紀。
その二人に対してどう話していいのか分からないなのははあたふたしている様子を見守るユーノであったがこのままではダメだと思いなのはの前に出て恭也・美由紀に対して一礼する。

「ユーノ・スクライアと言います。このたびは妹さんを夜更けに連れ出し申し訳ありませんでした。」

その様子に恭也は毒気を抜かれ美由紀もそのしっかりした様子に感心しなのははというとそのユーノの姿に呆けていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日高町士郎は今まで生きてきた人生の中で5本の指には入るだろう出来ごとに直面していた。
高町家の末っ子であるなのはが家を抜け出し戻ってくれば見知らぬ少年を連れ帰ってきた。それだけでも驚きだがさらに少年の口から語られた話にはさらに驚愕した。

「魔法ね・・・」

妻である桃子の口から零れるのは先程ユーノから聞いた話に出てきた単語でありその桃子や自分の子供である恭也・美由紀も自分と同じように驚いているようだった。

「そうなの。それでお父さん、お母さんお願いユーノくんのお手伝いするのを許して欲しいの。」

自分の気持ちを打ち明けるなのはの言葉に士郎は押し黙る。
幼い頃自分の所為で甘えさせられなかったため自分の気持ちを押し留める節があるなのはが自分の気持ちを素直に打ち明けてくれるのは嬉しかった。
しかしユーノの話を聞く限りではそれは決して安全とは言い難いことである。
親としては危険なことをさせる訳にはいかない。
そう悩んで桃子に目を向けると向こうも自分と同じような事を考えているようだった。

「あのよろしいでしょうか?」

そんなふうに士郎達が思案しているなかユーノが静かにであるが声を上げる。
その声に士郎と桃子が目を向けるとおそらくここに来てから考えていた事を口に出した。

「いきなりこのような事をお願いすれば困惑するのも分かります。皆さんがなのはを事を愛しているのは道すがら聞いた話からも分かりますから。ですのでなのはの申し出はやはり遠慮させていただきます。」

その言葉になのはが振り向きなにか言うおうとするがユーノの鋭い目線に押され黙る。
再び士郎達に向いたユーノはもう一度口を開く。

「そのかわりという訳ではありませんが僕がジュエルシードを回収し終わるまででいいのでこの家に泊めてもらえないでしょうか?お願いします。」

そう言って頭を下げるユーノの姿に恭也達は何と言っていいのか分からず黙ってしまう。
そして恭也達と同じようにそれを見た士郎はその姿にどこか懐かしさを覚える。
そして思い出すのは重傷を負うまで多くの要人を守っていた頃の自分。
誰かを守ることに誇りをもちしかし本当に守らなければならないものを知らずその所為で家族に迷惑をかけ末っ子のなのはには寂しい思いをさせてしまったこと。
そう自分の過去を思い出していた士郎だったがユーノとなのは会話が耳に届きそちらに目をやる。

「ユーノくん。お願いだから私にお手伝いさせて。」

「やっぱり駄目だよなのは。士郎さん達の気持ちを考えたら手伝わせられないよ。」

二人の会話を聞きながらなのはの決意の固さとユーノの危ういながらも優しいその心に士郎は決意を決める。

「でも!「なのは」・・・お父さん。」

「お前の気持ちはよく分かった。本当ならやめさせるべきなんだろうがユーノくんの手伝い、しても良いよ。」

「父さんそれは・・・」

士郎の言葉に恭也が声を上げるが士郎の優しい顔を見てそれ以上何も言わなかった。

「ユーノくん」

ユーノに向き直る士郎はユーノに対してなのはに向けるのと同じ優しい眼差しを向ける。

「魔法に関しては私たちでは何も手伝うことは出来なしなのはのこともまかせっきりになると思うがそれ以外のことなら私達に出来る事はなんでもするつもりだ。なんでも言ってくれ。」

(あっ・・・)

士郎のその優しい眼差しにユーノは今は亡き父の姿を思い出していた。
父との思い出はそんなに多くない。
その別れもホラーの手による凄惨なものであったが今でも思い出すのは楽しかった日々。
魔戒騎士として人々を守るそんな父の姿に憧れその父に追い付きたくて必死に魔戒騎士の修業をおこなった。
そしてそんな自分を見守ってくれていたのは士郎と同じ優しく温かい眼差し。
だからこそユーノの思い出の箱が開いてしまったのだろう。

「ユーノくん!どうしたの急に泣き出して!?」

なのはの言葉でユーノは自分が泣いていることに気づく。
いきなり泣きだした事に士郎達も慌てるがユーノも涙を止めようとするがなかなか止まらない。

「すいません。士郎さんを見ていたら父を思い出して・・・」

「失礼だがご両親は・・・」

ユーノの台詞でなんとなくだが事情を察する士郎であるが念のため確認をとると予想どうりユーノは首を横に振る。
その様子に高町家の面々、特に女性陣は息をのむ。
そして士郎の中である決意が出来る。
それは・・・

「ユーノくん。」

士郎の言葉にユーノは未だに涙が流れる顔を士郎に向ける。

「ここにいる間はこの家を、私達を家族だと思ってくれて構わない。」

士郎の台詞にそこにいる全員が驚く。
特にユーノは突然の事で一番驚いていた。

「でも、いきなり・・・」

「確かに突然だが君を見ていると昔の自分を思いだして放っておけないんだ。」

「そうね。それに家族が増えるのは良いことだわ。」

士郎の言葉で夫の考えを理解した桃子もその意見に賛成する。
それに続くように恭也・美由紀も賛成の声を上げる。

「あの本当に良いですか?」

「良いんだよユーノくん!私もユーノくんと一緒に居れてすっごく嬉しいよ!!」

まだ、状況が理解できないユーノであるが嬉しそうに腕に抱きついてくるなのはの体温を感じながら士郎の言葉が本当であると実感する。
その言葉によって今まで父を失ってから開いていた穴が埋まっていくような感覚を感じながらユーノは士郎に向かいあう。

「では、その、よ、よろしくお願いします。」

ユーノが感謝の言葉を発するとそれに呼応するようにユーノのお腹から盛大な音が鳴りユーノの顔に羞恥の赤がさす。
その音を聞き笑い声上げるなのは達。

「それじゃご飯の準備をするからちょっと待っててね。」

「あっ私も手伝う!」

徐に立ち上がり御飯の準備をする桃子とそれを手伝おうとするなのはは一緒にキッチンに向かう。

「じゃ私は部屋の準備をしてくるね。」

「替えの服もいるな。俺のお古がまだあると思うから探してくるよ。」

それにならうように恭也・美由紀も席を立ちあがる。

「あ・・・・」

それぞれが行動を始めるとその姿に呆気にとられるユーノであるが肩を軽く叩かれそちらに目をやると笑みを浮かべる士郎がいた。

「今日は俺と一緒に風呂に入るか?」

「っ、は、はい!!」

その士郎の言葉にユーノは涙を流し少し腫らした目を嬉しそうにゆがめると大きな声で返事をする。
その声にその場にいた士郎・桃子・なのはが再び笑い声をあげる。

(こういうのを怪我の功名って言うのかな・・・)

その場の雰囲気を感じながら一言も喋らなかったザルバが心中を吐露する。
父を失いスクライア一族に預けられてからのユーノは一言でいうなら孤独だった。
決して一族から疎外されていた訳ではない。
しかしあの日父を失った悲しさを紛らわすように発掘の勉強を、そして父の墓前に誓った魔戒騎士になるための厳しい修業にと打ちこんでいった。
だからこそ同年代の友人がおらず心中がわかる大人達もどこかユーノと接することを遠慮していた。
しかしジュエルシードの回収で訪れたこの世界でユーノの悲しみを癒してく存在があらわれた。

(ようやくお前の心配事が一つ減ったな・・・)

もしも今ザルバに肉体があったらきっと夜空を眺めていた事だろう。
そのむこうにユーノの父であり先代ガロの戦友の顔を見つめながら。

(なあそうだろう・・・・・バラゴ・・・・・)

小さな魔戒騎士は新たなる居場所を得る。そしてそれが魔戒騎士にとってもっとも重要なことと知ることになるがそれはまだ少し先のお話・・・


********************


「闇を切り裂き光を導く者、それが魔戒騎士だ。
だがその秘密を知るものはそう多くない。
だからこそ特別に教えてやる魔戒騎士の秘密をな。

次回・番犬所

俺はここがあんまり好きじゃないんだがな。」


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