4日の沖縄訪問で、ついに「県内移設」を打ち出した鳩山由紀夫首相。県外、国外移設という持論と、猫の目のように変わる発言が、日米同盟と沖縄を振り回した8カ月間だった。(加納宏幸)
(県外論)「最低でも県外」の方向で積極的に行動したい。米政権と徹底的に議論して信頼関係を築けば何事も不可能ではない
野党時代に民主党代表として発した一言が、首相を縛り、現在に至る米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題の迷走の始まりだった。
だが、首相がその気になれば、現実路線に戻るチャンスはいくらでもあった。
昨年11月13日に首相官邸で行われたオバマ米大統領との日米首脳会談。日米合意に基づき米軍キャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市辺野古)にV字形滑走路を建設する現行案の「早期履行」を求めた大統領に、首相は約束した。
(県内論)私を信じてほしい(Please trust me)
大統領は「もちろん信じます」と早期決着に期待感を表明した。だが、首相は14日、シンガポールでの記者団との懇談で正反対の発言をする。
(オバマは半信半疑だったろう)
(県外論)大統領とすれば日米合意を前提と思っていたいだろうが、それが前提なら作業グループを作る必要がない
この首相の一言に大統領は不信感を持ち、首脳間の「信頼関係」は失われた。
もっとも、作業グループでは「現行案の検証」という枠内で日米協議が進み、首相も一時は現行案一部修正での年内決着に傾いた。
(県内論)当然ながら辺野古は生きている
かねて現行案を排除しない考えを示していた首相は12月4日、記者団に強調した。だが、社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相が県外、国外移設を求めて連立離脱をちらつかせると、首相の判断はまた揺らぐ。結論先送りを決めた同月15日には前言を忘れたかのような言葉を放った。
(県外論)辺野古ではない地域というものを模索する
もっとも、首相が一日のうちに持論を百八十度変えることは珍しくなく、同じ日の夜にも、首相官邸で会談したルース駐日米大使に、現行案に沿った決着を図る考えを伝えたことが後に明らかになった。
今年に入ると、首相にさらに頭痛のタネが持ち上がった。沖縄の民意だ。決着先送りが引き起こしたものだが、今年1月24日の名護市長選で、現行案への反対を訴える稲嶺進氏が当選。沖縄県内で「県外、国外移設」論が強まった。
今年に入り「ゼロベースで検討する」と白紙からの検討を強調し続けてきた首相は3月26日の記者会見で、再び県外移設を目指す考えを明確にした。
(県外論)極力、鳩山としては県外に移設させる道筋を考えたい
首相はそのころ、鹿児島県・徳之島に極力多くのヘリコプター部隊を移転させることで、沖縄の基地負担を軽減する「腹案」に自信を持っていた。
ところが、米政府は海兵隊の運用上、陸上部隊とヘリ部隊は65カイリ(約120キロ)以内に配置しておく必要性があると強調。陸上部隊がいる沖縄本島から約200キロ離れた徳之島にヘリ部隊を移転させるのは難しいという意思が伝わった。
米側の不信感は、4月12日、核安全保障サミットの夕食会冒頭での日米非公式首脳会談がわずか10分だったという形で表れた。5月末決着を強調してきた首相は4月23日の参院本会議で断言した。
すべての政策に職を賭す覚悟で臨んでいる。普天間の移設先の問題も当然含まれている
追い込まれた首相は4日の仲井真弘多沖縄県知事との会談でようやく「最低でも県外」の旗を降ろす。
(県内論)海外という話もなかったわけではないが、日米同盟や抑止力の観点からすべてを県外にというのは難しい
首相の言葉の軽さが普天間問題の迷走を招いたのは明らかだ。首相は同日の高嶺善伸県会議長との会談で自らに言い聞かせるように語った。
言葉の重みはしっかりとかみしめなければならない
【首相訪沖】「周回遅れ」ようやく気づいた「現実」 (1/2ページ)
2010.5.4 20:39 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100504/plc1005042044027-n1.htm
名護市の稲嶺進市長との会談後、記者の質問に答える鳩山由紀夫首相=4日午後6時3分、沖縄県名護市(大塚聡彦撮影)
ようやく、わが国の首相も“現実”に気づいたということなのか。
「現実に日米の同盟関係を考えたときに、また、近隣諸国との関係を考えたときに、それ(国外移設)は抑止力という観点から難しいという思いになりました。現実には不可能だ」
「(県外移設も)なかなか現実問題として難しい」
鳩山由紀夫首相は沖縄県の仲井真弘多知事との会談で、「現実」という言葉を何度も口にして、県内移設への理解を求めた。
米軍普天間飛行場の移設問題を語るとき、首相はこれまで「沖縄県民の思い」という抽象的な言葉を多用していた。その「思い」をあまりにも重視しすぎた結果、「現実」に目を背けてきた面は否めないだろう。
首相が「非現実的」と認めた県外・国外移設案。それを最初にぶち上げたのも、首相自身だ。
昨年7月、民主党代表として沖縄県沖縄市で衆院選の応援演説に立った首相は、普天間飛行場の移設先を「最低でも県外」と断言。この大風呂敷には、党内からも実現性を懸念する声が上がった。「党の考え方ではなく、私自身の(民主党)代表としての発言だ」。首相が4日、語った通り、同党の衆院選マニフェスト(政権公約)にも明記が見送られている。
首相は高嶺善伸・県会議長との会談でも「『最低でも県外』と言ったのは事実。ただ、なかなか容易ではないことも、政権を取って日々感じているところだ」と語った。
そもそも、なぜ「県外」なのか。首相は4日夕、記者団に「学べば学ぶほど、(海兵隊が)連携し抑止力を維持していることが分かった。(考えが)浅かったと言われればその通りかもしれない」と述べた。とすると、「最低でも県外」と発言した当時は、その基本認識すらなかったことになる。あまりにも遅すぎる自省の念だ。
もはや自業自得の迷走としか言いようがないが、この間、鳩山政権は多くのものを失った。
政権発足時に7割近くあった内閣支持率が20%台に急落したのは、それこそ自業自得だ。より深刻なのは、各方面から政権そのものに「不信」の2文字を突きつけられていることだ。
「ちゃんと公約を守ってくれよ」「大変、遺憾だ」
県会議長との会談で、沖縄に加え一部を鹿児島・徳之島に移設するプランを示した首相に、同席した県議たちの怒声が飛んだ。首相は何も答えず、頭を下げて立ち去るしかなかった。
普天間問題のもう一方の当事者である米国からも、明確な「ノー」を突きつけられた。4月の核安全保障サミットでは、オバマ大統領との正式な首脳会談すら開けず、米紙には「最大の敗者」と酷評された。
いくつもの信を失うことで、ようやく現実を直視し始めた鳩山首相。だが、首相が言い出した「5月末の決着」まで、残り1カ月を切った。普天間問題の解決に「職を賭す」と宣言した首相に残された時間は少ない。(船津寛)
小沢の不動産を強制的に日本政府が没収してそこをアメリカに提供しないと後々まで日本は信用を取り戻せないでしょうね