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あまりにヒドすぎる菅政権「福島原発」情報統制の実態

週プレNEWS 4月27日(水)21時58分配信

■今や日本政府の信頼度は地に墜ちた

 福島第一原発による大気中の「放射性物質拡散予測」を3月末まで一般に公表しなかった日本政府が、またもや世界を唖然とさせる行動に出た。

 今まで「レベル5」と発表してきた「原発事故国際評価数値」を、4月12日に最悪の「レベル7」まで引き上げたのだ。これで福島第一原発の深刻さは、旧ソ連で25年前に起きたチェルノブイリ原発事故と肩を並べることになった。

 このレベル7は、放射性物質の放出量が数万テラベクレル以上になったことを意味している。《それほどの放射性物質が出続けた事実を公的に認めるまでに1ヵ月も要したのは異常》だと『ニューヨーク・タイムズ』紙が批判したように、今や日本政府への国際評価は地に墜ちてしまった。

 そもそも、レベル7の根拠となる放射性物質の放出量についても、経済産業省/原子力安全・保安院は「37万テラベクレル」と言い、内閣府/原子力安全委員会は「63万テラベクレル」と言っている。倍近い差があるふたつの公式数字が同時発表されたむちゃくちゃな状態なのだから、それも仕方ないだろう。

 チェルノブイリ事故の放射性物質放出量は520万テラベクレルとされているので、日本政府は原子力安全委員会の数字を根拠にチェルノブイリ事故の1割と発表したらしい。ところが東京電力は、政府見解とは矛盾する次の見解を同じ12日の記者会見で明らかにした。

「放射性物質の放出量からみて、チェルノブイリ事故に匹敵、または超えるかもしれない事故になったことを重く受け止めている」

 果たして、どちらの言い分が真実なのか? 事故発生以来、その最も重要な放射能数値計算を重ねてきた小川進博士(工学・気象学・農学)は、こう推測する。

「原子炉内に残るウラン燃料棒の数についても諸説があり、今のところ信憑性が高いのは、1〜4号炉のウラン総量は781tで、そのうち約90tが損傷した計算になるというものです。さらに主な放射性物質18種類のうち、ヨウ素131、132、134、セシウム134、136、137の6種類は3分の1の量、つまり30tが1ヵ月以上の間に大気中と海中と施設地下の土壌へ漏れ出たと考えていいでしょう。

 それに対してチェルノブイリの放射性物質放出は10tだったので、福島第一原発は1割どころか3倍規模に達し、炉心冷却作業が進行しても完全隔離しない限り放出総量は増大します」


■情報統制は復興の邪魔でしかない

 実は、3月14日に福島第一原発3号機が大爆発した直後、すでにフランスの放射能に関する独立調査情報委員会「CRIIRAD(クリラッド)」がチェルノブイリを上回る大惨事に発展する可能性を指摘していた。その調査チームが急遽来日したニュースは大きく報道されたが、あとはぷっつりと消息が途絶えてしまった。なぜなのか?

「CRIIRADの調査は信頼度が高く世界中の研究者が注目しましたが、3月15日の福島県内での放射性物質飛散量が最高で基準値の1千万倍に達し、都内でも16日夕刻にかけて基準値の100万倍を記録したという詳しい測定値を国際配信したとたん、その活動を日本の大手マスコミは無視し、公的研究機関もデータ提供をやめたんです。

 ほとんどの日本国民は知らないことですが、この時点で日本政府と報道機関が足並みをそろえた極端な情報操作が始まり、世界中から猛烈な反発を受けるようになったのです」(小川進博士)

 確かに、日本政府に対して放射能影響予測データの公開を迫ったIAEA(国際原子力機関)の緊急声明は強い非難口調だった。しかも、その日本政府のあからさまな秘密主義路線は、外国だけでなく国内の研究機関にも向けられたようだ。九州の国立大学理学部に在職するM教授は、こう憤慨する。

「われわれは東京大学の学術サイトに頻繁にアクセスして研究を進めていますが、3月末から原子力関連だけでなく地学や気象学など、いくつもの分野でパスワードを持っていてもアクセスができなくなった。同じ国立大同士でもこのありさまですから、私立大学はもっと困っているようで、学問の独立と自由が保障されない暗黒時代が来たと嘆いています」

 また、一般国民の間では反原発集会やデモ参加者の数は増えるばかりだが、実は大手新聞とテレビ局はこの件をあまり報道していない。

 福島原発事故関連の論文をいくつも日本向けサイトに発表し、注目を集めているアメリカ西海岸在住の物理学者・日沼洋陽氏は言う。

「今の日本の現状は、むしろ外国にいたほうが冷静に分析できます。反原発デモについては反日勢力が暗躍している疑いもあり、報道管制が敷かれても仕方ない面があるかもしれませんが、福島原発事故の本質部分である環境汚染や健康被害の実態に関する隠蔽は、そろそろ目に余る段階にきています」

 確定情報しか発表できない政府の立場もわかるが、重大事実を小出しにし続けていると、原発事故の傷口を広げるだけで震災の復興を妨げかねない。

 4月13日には福島県内で、プルトニウムと同じく、極めて毒性の強い放射性ストロンチウムが検出されたと発表があったが、その分析調査は3月16日から始まり、とっくに結果がわかっていた疑いがある。

 さらに、海洋研究開発機構も海洋放射能汚染のシミュレーション画像を4月13日に初公開したが、これも民主党に仕分けされかかったスーパーコンピューターを使って、早い時期から準備されていた可能性が高い。

 はっきり言おう。原発事故のレベル7への格上げに合わせて、いくつもの見え透いた新情報発表が行なわれたことは、どれほどお人よしの日本国民でも気づいているのだ。そろそろ思い切って「最悪のシナリオ」をさらけ出さないと、真の復興へ向かうスタート地点は、いつまでたっても見えてこない……。

(写真/井上賀津也)

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最終更新:4月27日(水)21時58分

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