2011年3月13日19時34分
東日本大震災の被害が明らかになるにつれ、国内有数の漁獲量を誇る三陸沿岸の漁業への影響に懸念が広がっている。宮城県気仙沼市、岩手県大船渡市などの主要漁港は津波で壊滅的被害を受けている。産地が受けた打撃が今後、水産物の品薄や値上がりとなって食卓に響く可能性もありそうだ。
黒潮(日本海流)と親潮(千島海流)がぶつかり合う三陸沖は、カツオやサバが群れをなす「世界三大漁場」の一つ。東北地方太平洋岸(茨城県含む)に水揚げされる水産物のシェアは全国の約2割に達する。
農林水産省の田名部匡代政務官は12日午後、三陸沿岸の漁港や漁村の被害を上空から視察した。水産庁のチャーター機で羽田空港を飛び立ち、宮城県の石巻、気仙沼、岩手県の大船渡、釜石、宮古などの漁港を順次、上空500メートル程度から見て回った。
同行した水産庁管理課の職員は「どの漁港の被害もひどい。津波による堆積(たいせき)物に埋め尽くされ、とても漁業活動をできる状況にない。今後の影響は想像もつかない」。気仙沼港の湾内にあったカキや昆布の養殖施設が全滅していることも確認したという。
市街地の大半が流された気仙沼はカツオやマグロの主要水揚げ港で、フカヒレをとるサメ類でも国内屈指の水揚げを誇る。石巻はイワシ、青森県の八戸はサバなどの水揚げが多い。三陸一帯はワカメの大産地でもあり、影響が懸念される。
水産庁や全国漁業協同組合連合会(全漁連)は、産地の漁獲能力がどれほど打撃を受けているのか、実態把握に乗り出している。宮城県漁協(石巻市)との連絡もつかないなど作業は難航しているが、気仙沼港にあった漁船のA重油を貯蔵するタンクが流されるなどの被害が徐々に明らかになってきた。「産地の加工施設や、水産物の貯蔵施設の被害の報告もこの先増えてくるだろう」(全漁連)との見方が広がっている。