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店長への恩忘れぬ 震災翌日から食料品など無償提供

営業を再開した店頭で客を迎える長岡さん(右)=30日午前9時ごろ、七ケ浜町の西友汐見台店

 東日本大震災で被災した大手スーパー、西友の汐見台店(宮城県七ケ浜町)が30日、営業を再開した。津波で浸水したが、震災翌日の3月12日から5日間、店を開けて市民に無償で食料品などを提供した。再開するまでの間、店には感謝のメッセージが寄せられた。

 3月11日の震災当日、店長の長岡謙二さん(47)は休みで仙台市の自宅にいた。震災発生後、店の様子を確認しようと、自転車で店に向かった。水没した道路が多く、利府町を経由する遠回りをして、たどり着いたのは深夜だった。
 店内は津波で10センチの泥が堆積し、天井の一部も落ちていた。長岡さんは店に泊まり込んだ。12日朝、明るくなると住民が食料や幼児用オムツを求めて集まってきた。
 長岡さんは「いちいち買い上げ額を計算しては、商品提供に時間がかかる」と本部に相談せず、独断で無償提供を決めた。大阪府出身で、阪神大震災の際、被災直後に住民が食料調達に苦労したことを知っていたからだ。
 食品から生活用品までを提供し、在庫が尽きる16日まで営業した。店と並行し、近くの避難所にも食料品を無償配布した。
 3月18日には本部に掛け合って調達した2リットルのペットボトル入りの水1800本とカップ麺などを店頭で配布。その際、おにぎりが一部余り、「当初の危機は去った」と判断、本格再開のため一時閉店することを決めた。
 一時閉店を告げた張り紙はその後、住民の感謝のメッセージで埋まった。「ご恩は一生忘れない」「すばらしい対応だった。1日でも早く営業再開を」。その声に支えられて、長岡さんとスタッフ37人は再開を急いだ。
 営業再開した30日、店には震災前と同じように十分な商品がそろった。長岡さんはスタッフの朝礼で「お客さまの期待を裏切らないようなサービスを続けよう」と誓い、笑顔で買い物客を出迎えた。
 長岡さんが食料品などを無償提供をした判断は、災害時の対応として社内でも高く評価されているという。(阿部信男)


2011年05月01日日曜日


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