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NICT委託研究「視覚障害者向けマルチメディアブラウジング技術の研究開発」始まる |
NHKでは、お年寄りや障害を持った方でも健常者と同等なサービスを享受できる「人にやさしい」放送サービスの研究を行っています。「人にやさしい」放送サービスには、字幕放送や解説放送のようにもともと障害者を対象としたものもありますが、技研では健常者を対象に作られた放送コンテンツを障害者の方にも楽しんでいただくための研究開発に取り組んでいます。 その一環として、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)の委託研究「視覚障害者向けマルチメディアブラウジング技術の研究開発」を2005年11月から開始しました。これはIBM、東京大学と共同で行うプロジェクトで、視覚に障害のある方が、放送だけでなくインターネットも楽しめるような、放送と通信を融合する情報環境の構築を目指しています。 <技研での取り組み内容は?> 新しい放送サービスであるデータ放送を障害者の方に楽しんでいただくために、これまで合成音声による読み上げや点字による情報提示装置を開発してきました。このような装置でデータ放送の画面を表現するには、放送波を受信して得られるデータ放送コンテンツに加えて、例えば天気予報の「晴れマーク」は晴天を意味するなど、そのコンテンツが何を意味するかという放送局が持つ情報なども利用して提示装置用の情報記述言語に変換する必要があります。このプロジェクトでは、放送に加えて通信からの情報も提示可能とするための、放送と通信を融合した新たな共通記述言語「視覚障害者XML*」を開発します。 また、全盲や弱視、盲ろうの方の誰もが多様なコンテンツを楽しめるように、音声や点字とともに、拡大表示など弱視の方が見やすい画面で表示する手法や、図形などの視覚的な情報を触覚により提示する方法など、障害の程度に応じた最良の提示手法を目指して開発を進めます。 このような研究開発により、パソコン型の受信機に、障害に対応した各種の提示装置を接続して容易に放送とインターネットの両方を楽しめるような環境を実現したいと考えています。
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(知能情報処理 主任研究員 金次 保明・人間情報科学 主任研究員 坂井 忠裕) |
技研だより | NHK放送技術研究所 |