2011年04月20日 (水)

出崎統さん通夜:富野 由悠季さん、ちばてつやさん、りんたろうさんインタビュー紹介

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「あしたのジョー」など多くの人気アニメーションの監督をつとめ、今月17日に67歳で亡くなった

出﨑統さんの通夜が今月20日、東京・府中市で営まれ、多くの関係者が参列しました。

出﨑さんは、独創的な演出手法で「あしたのジョー」や「エースをねらえ!」など多くの人気作品を手がけ、日本を代表するアニメーション監督の1人として活躍しました。

参列した富野 由悠季さん、ちばてつやさん、りんたろうさんへのインタビュー内容を紹介します。

 

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アニメーション監督・富野由悠季さん

「機動戦士ガンダム」の総監督。日本を代表するアニメーション監督の1人。出崎統さんとともにアニメーション「あしたのジョー」の演出をつとめる。

 

Q最後に出崎さんにお会いしたのはいつですか

――2年前から3年前か・・・広島のアニメフェスティバルで会ったのが最後です。そのときに少し調子が悪いのは承知していましたので、むしろよく頑張ってきたなと思いました。

 

Q富野さんにとって出崎さんはどういう存在でしたか

――僕は「虫プロダクション」(※現・手塚プロダクション)を辞めて2,3年してから「あしたのジョー」に仕事がなくて強引に関わらせてもらったんです。その時に、演出している出崎統の仕事をみて、日本のテレビアニメ界に「天才がいる」ということに初めて気がつきました。自分は26,7歳の時だったんですけど、本当に大先輩だと思えたし、初めて頭を下げることができました。そのくらい「あしたのジョー」での仕事が僕にとって衝撃的でした。ですからそれ以降、彼のいろんなことを盗みたいと思って勝手に"統ちゃん"って言っちゃっていました。でも結局、天才のものは盗めないんです。それが僕にとって、その後の40年近くたっても、やっぱり(出崎さんが)敵になっていたんです。ずっとライバル視しかありませんでした。かないませんでしたね

 

Qアニメーターとして、どんなことを出崎さんから学びましたか

――そういう人って優しくありませんから何にも教えてくれませんので、こちらがむしゃぶりついて教えてもらうというか、盗みにいくだけです。盗みにいくっていうのは、実は先にあらわれているんです。それは読み解けなければそれきりなわけなんですが、そういう意味では、統ちゃんの目線をいつも感じていたのは、「おまえはダメなんだよね」っていう体感でした。僕にとっては同業者にそういう人がいるっていうことが、やはりありがたかったですね。彼の仕事の全作品をどういう風に突破しやろうか、という気持ちが僕のなかにあって、僕にとっては手塚先生の次が統ちゃん的な才能でした。世代が違うということでの才能のあり方を比較して見せてくれましたし、同じ時代に走ってきた「仲間」とはいえない「大先輩」なんです。キャリア的にいうと明らかに大先輩ですからライバル視より、敵視していたっていうのが本当のところですね。ですから、その関係性がとても好きです。

Q出崎さんの才能について

――出崎さんは映像を処理するというのをリミテッドアニメで端的に示したんです。これ以上に、リミテッドアニメ、つまり動かない絵を使って、どういう風に映画を見せていくか、という一番論理的な手法を発明したのは統ちゃんじゃないのかなと思います。やはりまわりにいる人にはまねはできません。そのくらい、固い動かない絵をもって映像として見せていくことができるという意味では、惜しいし、作品的に早くメジャー的なところで出てくる機会が与えられなかったのは悔やまれるところですね。彼がいなかったらジャパニメーションがもう少し貧しいものになっていたでしょう。そういう意味で出崎統が持っている映像感覚は、極めてメジャー的だったんです。それを結局、テレビの枠でしか見せられなかったのが残念。そういう意味でスタジオワークとして恵まれていなかったんじゃないかな、という気はします。あれほどの才能をもってこうなんだという意味では、やはり若い人にとっては参考にしたい代表的な監督だったという風に言えます。

 

Qいま、出崎さんにかけたい言葉はありますか

――10年早く出過ぎた才能だった。それがもったいなかった。だけどそうでなければ

革新者であり得ないわけだから、やっぱり頃合いではあったんじゃないかな、という気もしています。まだ分かりませんね。

 

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漫画家・ちばてつやさん

作者・高森朝雄さんとともに漫画「あしたのジョー」の画を手がけた人気漫画家。

 

Q出崎さんが手がけたアニメ「あしたのジョー」をどう受けとめましたか

――高森さんとボクで手がけた漫画とはまた違う、新しい世界で新しいジョーを作ってくれた、という気がしましたね。ボクはすごくお話を描くテンポがのろいんですよ。ゆっくりゆっくり、1ラウンドの話を3週くらいに分けて書いたりするんで、テンポの速いアニメーションをほぼ同時進行で作っていた出崎さんは相当困ったと思うんですね。だけど、だからこそ、原作にないキャラクターや魅力的なエピソードを作ってくれているので、ただ原作の焼き直しではなく、出崎さん独特の創作がずいぶん入っていると思います。

 

Q出崎さんならではの「あしたのジョー」を生み出してくれたと思いますか

――テレビや映画の世界などで折りにふれジョーの魅力をたっぷり伝えてくれました。あの人、きっとジョーを心底愛してくれたと思うんですね。ジョーとか力石とか、段平、西たちをね。本当に惚れ込んで作ってくれたことがアニメ作品からにじみ出ているんで、きっとそのお陰で新たなファンの層がずいぶん広がったと思うんです。40年以上経った今でもファンの人たちがジョーのことを話題にしてくれるのは、出崎さんのアニメの世界からパワーをたくさん頂いたからこそだと思いますよ。本当に感謝しています。

 

Qちばさんが表現する「あしたのジョー」の世界をそのまま投影していると感じますか

――原作の雰囲気をしっかりつかんでおきながら、あの人は自由に、「出崎節」とでも言うのでしょうか、あの人でないと表現できないアニメーションの世界を創り上げてくれたと思います。まぶしい光を使ったり陰を使ったり。それから止めた絵。アニメーションは時間的にも物質的にも制約が多いのでそんなに多くのフィルム、原画は使えなかったはずです。その制約を、逆に演出に転換し画像を止めてアップにしたりロングにしたりしながら雰囲気を出すというような、あの人ならではの技術を駆使して、アニメでないと表現できないものを作られたと思います。

 

Q出崎さんにかけたい言葉はありますか

――出崎さんが作ったアニメのファンはたくさんいるんですよね。ジョーの絵についても、私が描いたものよりも出崎さんのほうが好きっていう人もたくさんいる。そういう意味では一時、やきもちさえ焼きましたけど。なにしろ出崎監督は心血を注いでジョーに関わってくれたし、いい作品をたくさん作ってくれました。どこかで改めて「ありがとう」って伝えたかったんですけど、それが叶わなく残念でした。そう、私は出崎さんと何度か対談をしたことがあるんですけど、もっとジョー以外の作品の事でも、漫画のことやアニメのこと、そしてこれからのアニメと漫画の未来のことを、膝を交えて語り合ってみたかった。それが・・・唯一、悔やまれますね。

 

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アニメーション監督・りんたろうさん

表作「銀河鉄道999」「メトロポリス」の監督。日本を代表するアニメーション監督の1人。

1960年代、出崎統さんとともに「旧・虫プロダクション」(現・手塚プロダクション)で当時、一世を風靡した「鉄腕アトム」の制作に関わる。

 

Q最後に出崎さんにお会いしたのはいつですか

――1か月前くらいですかね。わりと近くに住んでいるので、よく喫茶店でコーヒー飲もうって。体は辛そうだったんだけど、それが最後でしたね。でも僕と会っているせいか、元気がいいっていうか・・・仕事の話をすると燃えてくるところがあるんですよね。でも辛そうだなっていうはありましたね。

 

Qりんたろうさんにとって出崎さんはどういう存在でしたか

――どちらかというと刺激しあっていたというか、いい意味ではライバル。ふだんは遊んでばっかりいるんですけど、彼は非常に感性がいい。テレビアニメの手法だとか、そういうことについて2人でいつもワイワイ言っていました。

 

Q出崎さんが日本のアニメ界に残したものは何だと思いますか

――品も色々あるけど、代表的なあしたのジョー」。彼のすごいところは手法的なもの、とにかく誰にも真似できないような映画の作り方っていうのは最初から持っている。それは素晴らしいなと思いました。

 

Q出崎さんにどんな言葉をかけたいですか

――まだ一緒にやろうよと言っていましたから、本当に残念ですね。

「死ぬのは順番に死のうよ。ちょっと早すぎるんじゃない」と。あんまり死んだっていう気はしないんですけど。まだそのへんにいる気がしますけどね。

 

Q出崎さんが残したものをどんな形で受け継いでいきたいですか

――彼とはずっと背中合わせで仕事してきているので、彼の手法というのはよく知っています。真似するのではなくて、どこかで自分で背負って若い人に伝えていきたいなと思います。

 

投稿者:かぶん | 投稿時間:21:25  | カテゴリ:取材エピソード
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