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風俗ミシュランガイド

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日景忠夫

―― それにしても日景さんお若いですけど、いま一体おいくつなんですか?

日景忠夫氏: もう今年(2004年)で67歳

―― お若いですね

日景: そうね、どちらかというとエネルギッシュというか、バケモノみたいに言われる(笑)

―― そんなことないですよ。日景さんは偉大ですから

日景: いやね、みんなもそうだと思いますけれど、わたし乗らないと動かない人だからね。それはエネルギッシュとは違うんだけどさ

―― ああ、もう乗らないと絶対行動しない人なんですね

日景: そうね。ただ、わたしの場合は人よりその差が激しいから

―― 仕事でもそんな感じで?

日景: いや、人間って乗れない仕事でも仕事って言うじゃないですか。そいうとき、わたしはやっぱり自分にこれが生活の素だって自分に言い聞かせて

―― 生活の素ですか(笑)

日景: そうそう。でもどっかで自分自身納得できないとこもあったりしますよね。ここ(オアシス)も自分で手伝うっていう形で始めたんだけど、やりだしたら現場の人たちが暖かく迎えてくれて、みんな心開いて「こっちへおいでよ」じゃないけどさ、そういうのがあって、自分がいまやっている仕事が生活の素になっているのが幸せだと思うし、こういう状況でその仕事に乗れないって言ったら、それこそ、そういう人間こそ最低の人間だと思いますよ私は!

―― どっかで自分の仕事を軽蔑しているっていうのは最低ですね(笑)

日景: 一番悪い奴だよね(笑)

―― ここのお店で働いてみて、日景さんは今どういう感じですか?

日景: わたしはもう一生懸命、お客さんに合うような話をしてるの。わたしは一種のアドバイザーみたいなもんですから。わたし基本的に人間大好きだから(笑)

―― 人間大好き!(笑) なるほど。嫌いなお客さんとかっています?

日景: 楽しい場所は紹介するけど遊ぶか遊ばないかはあなた次第よ、ってわたしは言うんですけどね、で、一番やめて欲しいのは金払うから強いとか偉いって思ってる人ね

―― 金持ちは嫌ですよね

日景: そりゃあね、金持ってて偉いのはよくわかりますよ。ただもしわたしが『その金いらない』って言っちゃったら、その人の金と一切関わりが無くなっていたら、見下される必要も無いよね。そういうもんじゃないですか?

―― その通りですよ。金銭で権力を買っちゃダメですよね

日景: うん、だから人間って一番大事なのはそういうところじゃないかな。あんまり人を追い詰めちゃダメですよね。強さって万札一枚二枚の強さじゃないじゃない。そういうことを言うと、お礼言ってくれるお客さんもいたりしてね

―― いい店ですねー(笑)

日景: いい店とかじゃなしに(笑)でもけっこう楽しいんですよ。やっててね

―― 生き生きとしていますよね。日景さん

日景: ほんと、楽しいですよ。で、まぁこういう風俗に遊びに行く人っていうのは、皆孤独で、求めるのはみんな美しいものを求めてるんですよ。だけど、その入り方が下手だったら、全然逆の方向に行っちゃうことがあるんですよ

―― 入り方、重要ですね

日景: 風俗っていうのは一人で満足できないから皆行く訳でしょ。一人で満足するっていったらハッキリ言ってティッシュペーパー何枚か使うだけで、お金なんか全然払う必要なんか無いんだもん。そうでしょ?

―― 一人だったら無料で満足できますからね(笑) 相手がいないといけませんよね

日景: そうでしょ。一人だったら全然満足なんてできないんですよ。相手を意識して初めて遊べるんです

―― 相手がいて初めて満足できる遊びができる、と

日景: それが一番大事ですよ。それはもう年齢関係なくね。わたしはテレビで出たときは、凄いもう、鬼のような形相で(笑)怒り狂って登場したわけですけど、なんかそれで一般的には怖い人だと思われてるかもしれないですけど

―― 確かにコワイっていうイメージはあるかもしれないですね。いろんな意味で

日景: でも全然そんなことないの。わたしもう違いますよ、と(笑)。今こうして風俗の情報館にいて、皆さんが一番疑問に思うのは女を嫌いな筈のわたしがどうして風俗の案内役なんかやってるんだっていうね(笑)。わたしね、女を嫌いってわけではないんですよ

―― 日景さんが女性ですからね(笑)

日景: そうなのよ(笑)

―― 日景さん自身は男性っていう意識はご自分で無いんですか?

日景: もうそれはね、全然無いの(笑)。男性っていう意識を持ったことない。恥ずかしい話ですけどね、わたしの病気っていうのはそこですよ

―― 女性だという風には意識してます?

日景: どっちかって言ったら女性ですよね。性的には女体見ても全然感じないんだもん。ただね、わたしも馬鹿じゃないから女体の持っている美しさ、それは理解できますよ。むしろ男性が思う『アソコにこうしたらもう死ぬほど気持ちいいんだろうな』っていう性的な欲望も分かりますよ。ただ、自分がそうかと言ったら違うんですね肉体が反応しないんですよ(笑)。いまの時代だったらわたしみたいなのを性別と肉体が一致してないとかって、一応病気ってことで認めてくれるんでしょうけど、わたしの時代はそうじゃなかったからね

―― そうですよね。日景さんの頃はそういう理解は無かったでしょうし

日景: うん。世の中こういうのはわたし一人しかいない、と思ってましたからね

―― 当時でも日景さんのような人って隠れてけっこういたんじゃないですかね?

日景: うん。時代は関係ないよね(笑)。いたと思いますよ、わたしのような『不良品』がね(笑)

―― 不良品ってすごいですね(笑)

日景: これからも出てくるんじゃないですか? 不良品。ただ、わたしが当時テレビでカミングアウトしたじゃないですか

―― しましたね。歴史に残るような(笑)

日景: そのときもだけど、いちいちそういうの説明するの大変なんですよ(笑)。だけど誰でも思い出せばさ、子供の頃絶対まわりに一人はオトコオンナみたいなのいなかった? いたでしょ? いるはずなんですよ。だけど子供のころっていうのはそういうので差別しない訳ですよ友達同士だったら全然違和感なく遊べるんですよ。それがこう、大人になっていくと、いやらしい垢みたいなものがついてくるから、もし会社とかで『あなたの隣のデスクにいる人ホモだよ』って言われたら、ええっ、うそ! ってなっちゃいますよね

―― なるほど。成長すると差別も大きくなりますからね

日景: (笑)でも、そういうのは世の中が作り上げたものだから、わたしは反抗するつもりはないの

―― 反抗しないんですか?

日景: ただ自分はこういう境遇だから仕方ないと。だけど、沖雅也って俳優、彼のことをわたしと一緒にいたから、わたしが育てたからホモセクシャルだって言われるのが一番辛いんですよ

―― ああ。自分が言われるのはいいけど、沖雅也さんまでそういう風に言われるのが嫌なんですね

日景: わたしがカミングアウトしたっていうのは、そこら辺のことをハッキリさせてくれ、と思ってやったの(笑)

―― あっ、それであの流れになったんですね

日景: そうなの。わたしはホモだから、相手がホモの人だったら惚れませんって

―― そうだったんですか

日景: ええ。それまでのわたしはブスに自信をもってたから(笑)

―― ブスに自信ですか(笑)

日景: でね、同性愛っていってもね。相思相愛が理想なんですよ。だけど、相手も男好きな人だったら絶対わたしのところにこないと思ってるんですよ。女の人が好きっていう人じゃないと、わたしのところに来ない。だから、わたしと沖雅也っていうのは一緒に暮らしたのは16年だったけど、夢みたいな話なんじゃないかな、一般の人から見たら。だけど、そこでわたしたちにそういう関係があって、でわたしがホモだから沖雅也もホモだってそういう風にね、経験も無いのに決め付けるのはダメ!

―― ダメですね。まさに偏見ですよ

日景: 男性をもっと研究してくださいと言いたいですよ(笑)。例えばね、お米が主食の人がいたとするでしょ、で、その人が何かのきっかけで蕎麦を食べると、で食べ終わったときに蕎麦は美味かった? って聞いて『うん、美味かったよ』っていうのはいいですよね。そこで『蕎麦は不味かった』っていう人はもともとホモなんですよ

―― (爆)何か深い例えですね!

日景: そう、そこの差っていうのが大きいんですよ、わたしに言わせればね。蕎麦に限らず食べるチャンスをこっちで用意したら七割は食べた後に『美味い』って言いますよ。人間関係で言ったら男というのは女性と違って、別れた後に女性はもう二度と会わないっていうのが多いけど、男は別れても何かあったらラブホテル行っちゃうでしょ? そういうことなんだよね(笑) だからわたしは男性の方が繊細だと思う。女性は現実的でしょ? だからそういう気持ちで動く男性の部分が好きで、だからこそカムアウトしたとおもうのね

―― 男性の繊細な部分が好きなんですね

日景: うん。だから女性が嫌いなんじゃなくて、相手が女性の場合に完璧な愛情が得られないっていうだけ。もう一人の女性を地獄に引きずり込まなくてもいいでしょ? わたしはね、沖雅也との16年間、本当に心に染みて幸せでしたよ

―― 沖雅也さんとの暮らしはどうでした?

日景: 最高に幸せな瞬間だったよね。そういうときに誰かにうしろから引っ張られたみたいな、そういう事件でしたから、だからしんどかったよね。彼がいなくなってから初めて色んなことに気付いたりとかね『雪がこんなにキレイなんだなぁ』とか。どうしてもうまくいかないときにも、わたしが勝手に求めているんだからあなたからは何もいらない、って言い聞かせてたんですよ。自殺したときはね、何カッコつけてんだ! っておもいましたけどね、お前その気持ちがあるならわたしを殺すべきだろってその時は思ってましたけど。でも、時間がたつにつれ『あいつも少しは悩んだな』と。わたしとの関係で彼が悩むなんて、あの頃は思ってませんでしたからね

―― そんなことは絶対ないと思ってたんですね

日景: ありえないと思ってた。彼の方に女性が振り向いても、それで彼の心が安らぐようなことが無かったんでしょうね。そういう意味では彼も不器用だから(笑)。だからわたしは彼にとって都合の良すぎる人間になりすぎだったんでしょうね。彼としてもわたしといて居心地がよかったんだと思いますよ。わたしと会って彼も初めて『好き』というんじゃなくて、初めて安心できる、心を許せるっていう存在だったと思うんですよね

―― 沖さんにとって日景さんの存在って大きかったと思いますよ

日景: 例えばね、わたしが『今日は何食べたい?』って聞かなくても、彼が食べたいものを用意しておくんですよ。それはわたし分かるからね。で、彼が帰ってきて『何で食べたいものがわかったの』って、そういうことなんですよ。それはわたしが彼のことを考えて、頭が集中しているからなんでしょうけどね。ただ、それだけ彼のことを好きだったんですよ

―― すごいですね。理想のカップルですね

日景: わたし中途半端が嫌なんですよ(笑)燃え尽きなきゃダメなのね。だからガチンコ勝負じゃないけどさ。わたしたちはたまたま居心地いい人間同士だったからできたんだけど。それからあとわたしに『何でプロダクションやらないんだ?』って言う人もいるんですけど、それは正直に言うとね、たまたま沖雅也が俳優志望だったから作ったんであって、彼がキャバレーやりたいって言ってたらキャバレーやってましたよ。そういう意味でもね、わたしは仕事にしても何にしても、人間関係が先じゃないとダメなんですよ

―― 人間関係から仕事も始めるんですか!

日景: そうですね。で仕事を実際にやってみて、そのとき初めて『できるんだなぁ』って思いましたよ。だからプロダクションっていうのは後から付いて来たようなもんなんですよ。でもぜんぜん後悔はしてないですよ

―― 後悔は無いって凄いことだと思いますよ。なかなかそういうこと言える人っていませんよ」

日景: でもね、後悔はしてないけど反省はしてるの。やっぱりわたしが何にもいらないよっていう姿勢でいてもね、彼の方はそうすることで悩むっていうことを沖雅也は教えてくれたんですよね。愛情なんて知らなくてもいいんですよ、でもそれを味わってきた人はそれを無くす時っていうのが大変なんじゃないかな。彼はそれを失う日っていうのが怖かったんだと思う

―― 愛情を失う時が来るということが怖かったんですね

日景: そうね。だからわたしは(愛情が)絶対なくならないと思ってたんだけど、彼はそれが無くなるかもしれないっていうのがあって、まぁ、自信がなかったんでしょうね。それが彼の自殺の、最大の原因だと思いますよ

―― いまだに沖雅也さんのことについて聞かれたりとかします?

日景: うん、よくね『まだ覚えてますか?』っていわれるけどね、覚えてるどころかリアルにね体温まで感じますよ。恥ずかしいけどね。最近ますます感じますよ、老いたせいかもしれないけどね(笑)。でもあそこでストップしてるかもしれないね。わたしは孤独じゃないんですよ。もともと寂しがりやだったんですけど

―― 最近の方が沖さんを感じてます?

日景: そうだね。ずっと一緒にいるような気持ちですよ。前にとある雑誌でね『20世紀100の恋』っていう特集が組まれたんですよ、で当時天皇陛下もそのカップルのうちの一つですよね。でそれとならんでわたしと沖雅也がカップルで取り上げられたんですよ(笑)それは嬉しかったですよ。わたしたちのことを世間がカップルって認めてくれたわけですから。それこそ三浦友和と山口百恵ですとか、若乃花と、だれだっけ?

―― 宮沢りえですか?

日景: そうそう、それとかと同じにね、取り上げてくれて。で、そんときは『わたしが色ボケしただけですよ』って言ってましたけど、だけど嬉しかったですよ

―― はじめてマスコミにカップルとして認知されたわけですね

日景: あとね、昔広告批評でわたしのことをおもしろいタレントが登場してきたって紹介しててね、『自分の体をコンクリートジャングルに叩きつけて血みどろになって自己主張している』って、書いてまして。そのものズバリですよね

―― 広告批評通りだと(笑)

日景: そのままわたしの生活だからね(笑)

―― 日景さんはそのままが一番素敵ですよ

日景: 中学の頃からずっとそうですしたよ(笑)。すいませんね、こんな感じでいいですか?

―― もちろん。最高です(笑)

日景: 他に何か質問とかあります?

―― シンドバットはどうして閉店なさったんですか?

日景: ああ、あれはね実のところわたしもあんまり立ち会ってなかったし、赤字続きでダメダメな感じだったからこのままやっても仕方ない、と思って閉めたの。お金っていうのは正直だからさ、でもそういうのをわかりながらも人間って、色々経験していくものだから

―― なるほど。次生まれ変わるとしたら何になりたいですか?

日景: ハッキリさせたい、どっちかにね(笑)

―― そっちの方がいい?

日景: そうね。でも、生まれ変わってみたら今の生き方の方がイイって思っちゃうかもしれないよね(笑)

―― 今の五反田の風俗って日景さんから見てどうですか?

日景: ギャル系だよね。あと最近の若い人って年上の女性好きでしょ? そういう年上系も多いよね。あとね、昔の娼婦というのはね、口は絶対使わなかったんですよ。だから、下は舐めさせたり入れさせたりするけど、キスは絶対にさせなかったの。でも今はなんだろう、価値観の違いだよね、生尺とかバンバンやるじゃない。それで本番やらないなんて馬鹿じゃないの? って思うよね(笑)。あとパイズリ、あれだって股開いた方が早いでしょっていいたいよね? 素股ってアレだってもともとはおかま用語なんですよ。ゲイバーの言葉なんですよ、アレは

―― そうだったんですか?

日景: だって男だから素股でやらせるっていうので始まったんですよ(笑) 今それが風俗用語になってるでしょ? 昔はゲイバーだけですよ。あと、素股が良くて本番がダメとかね、そういうのも誰が決めたんだよ!って思うよね。摘発されるときは一緒なんだからさ

―― そうですよね。あっ、そろそろ時間ですね。今日はありがとうございました

日景: あれなんでしょ? これホームページに載るの?

―― そうですね、風俗ミシュランガイドってサイトです

日景: また何かあったら言って頂戴

―― よろしくお願いします。また何か取材したいと思うので

日景: いつでも来てくださいね。五反田のオアシスに寄って下さい。わたし居ますから(笑)

―― 本当にありがとうございました


五反田オアシス
今回の取材に快く承諾していただき、場所まで提供してくれた五反田オアシスさんに感謝いたします。五反田で風俗遊びをする時は是非立ち寄ってみてください。日景氏を始めとする親切なスタッフがあなたにピッタリの風俗店を案内してくれる筈です。