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福島第1原発:東電副社長が謝罪 飯舘村民ら補償求める

住民に深々と頭を下げ、謝罪する鼓紀男副社長(右から2人目)ら東電関係者=福島県飯舘村で2011年4月30日、須賀川理撮影
住民に深々と頭を下げ、謝罪する鼓紀男副社長(右から2人目)ら東電関係者=福島県飯舘村で2011年4月30日、須賀川理撮影

 東京電力の鼓(つづみ)紀男副社長が30日夜、福島第1原発事故で全域が「計画的避難区域」に指定された福島県飯舘村を訪れ、東電側の説明を聞くために集まった1000人以上の住民に「誠に申し訳なく深くおわび申し上げます」と謝罪した。時折怒号も飛び交う中、住民は東電の責任を追及し、家畜などの被害や長期的な補償も求めた。

 説明会で、東電側は事故収束に向けた工程表や仮払補償金について説明。政府の原子力損害賠償紛争審査会がまとめた指針に基づき賠償する意向を示した。

 住民からは「村が再生できる時まで補償して」「田畑や山の放射線をどうにかできるのか」「原子力損害賠償法の免責事項だという社長の発言は撤回するのか」などの質問が出た。

 「人災ではないのか」との問いに、鼓副社長は「個人的な感覚ではそう思っている部分もあるが、政府などの調査の見解を待ちたい」と述べるにとどめた。東電側の説明に納得できない住民から「ふざけるな」と怒号が飛び、女子高生が「将来結婚し、子供を産む夢がつぶされたら補償してくれるのか」と問いかける場面もあった。

 説明会に訪れた兼業農家を営む斉藤照吉さん(57)は「飯舘村は原発の交付金も何もなく、被害しか受けていない。村を元の状態に戻して、原発は福島から撤退してほしい」と求めた。菊を栽培している菅野満郎さん(69)は、「放射能は元には戻せないが、補償ならできるはず。これまで通りの生活を送れる額でなくては満足できない」と語った。

 自動車修理業の佐藤一行さん(59)は自宅のローン900万円を残したまま避難する。「この村に誇りを持っている。どうしてこうなってしまったのかを説明してほしかったが、『検討する』ばかりで納得できない」と怒りをあらわにした。

 鼓副社長は同日、隣接する川俣町も訪れ、計画的避難区域に指定された地区の住民に謝罪した。【小泉大士、小畑英介、津久井達】

毎日新聞 2011年4月30日 20時31分(最終更新 4月30日 23時09分)

 

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