県災害対策本部は、県の放射線健康リスク管理アドバイザーを務める長崎大大学院の山下俊一教授と高村昇教授が県内各地で行っている説明会で、参加者から寄せられた主な質問とその回答をまとめた。【関雄輔】
--1時間当たり数マイクロシーベルトの環境に長く住み続けた場合、子供やお腹の赤ちゃんへの影響、将来妊娠した場合のリスクはどのくらいなのでしょうか?
◆報道されている値は屋外での線量で、屋内では5~10分の1程度に減ります。現在の状況が続いても、健康リスクがあるとされる100ミリシーベルトまで累積される可能性はありません。同じ線量でも、1回で100受けるより、少しずつ受ける方がリスクが遙かに少ないです。
チェルノブイリ周辺では、事故当時0~5歳の子供を中心に甲状腺がんの発生率が増加しましたが、妊娠中だった子供で、増加の報告はありません。将来の妊娠に対しても心配いりません。
--現在妊娠中で、飲料水も料理もミネラルウォーターを使っています。水道水で野菜を洗うのが怖いのですが、大丈夫でしょうか?
◆基準値以上の放射性ヨウ素が検出された水を飲まないのは賢明な選択です。ただし、数回飲んだからといって心配する必要は全くありません。逆に水を飲まない、ミルクをあげられないというのは、乳幼児の健康に良くありません。野菜を洗ったり、顔を洗ったり、お風呂に入ったりと生活用水に使うのはなんら心配いりません。
--子供を外で遊ばせても大丈夫でしょうか。洗濯物を外で干すのは?
◆1時間当たりの線量が10マイクロシーベルト以下であれば、外で遊ばせて大丈夫です。通学も問題ありません。ただ指についた土をよく洗わせたり、上着のほこりを払わせたりしたほうが良いかもしれません。洗濯物については、取り込むときに少し丁寧にほこりを払う程度で問題ありません。
--今後再び放射線量が上がってきたら、どのくらいで気をつけるべきでしょうか?
◆国の指標では、線量の累積値が外部被ばくで10~50ミリシーベルト、内部被ばくで100~500ミリシーベルトになる可能性がある場合に、屋内退避か避難を指示するとされています。一時的な線量で判断することはできません。国や県が公表しているデータの推移に注意してください。
--原発周囲20キロ圏から退避しているが、家の中の物を取りに帰りたい。
◆20キロ圏内は、退避指示が出ていますので、国から許可があるまで絶対に入らないでください。
--外出する際、どの程度の防護策をとったら良いのでしょうか?
◆マスクは放射性物質を防ぐ効果はあまりありません。外出した際の上着は、家に入るときに軽くほこりを払う程度で良いでしょう。ビニール袋に詰める必要はありません。多少の雨も問題ありませんが、念のため傘をさすほうが安心できるでしょう。手を洗ったり、髪を洗うのも、帰宅直後にしないといけないわけではありません。
--浄水器で水道水の放射性物質が除去できるのでしょうか。沸騰させる効果は?
◆セシウムについては、浄水場でろ過される際に吸着され、水道水には出ません。ヨウ素は、水道水に出てきて浄水器でもろ過されないと思われます。ヨウ素の沸点は高いので、沸騰させてもあまり蒸発しないでしょう。
--被ばくは人にうつるのでしょうか?
◆被ばく自体はうつりません。放射性物質をチリのようなものと考え、きちんと衣類などから払い落とせば、うつることはありません。
--「ただちに健康には影響ない」という言い方をよく聞くが、どう理解したらよいのでしょうか?
◆各種基準値は、そのレベルの放射線量の食品や水を1年間食べ続けたら影響が出る可能性があるという目安です。この場合は、数回または1週間程度、基準値を多少超えた食品を食べたとしても影響はありません、ということです。
毎日新聞 2011年4月5日 地方版