東電側は「必要な人員だけ残し、その他は離れるとの判断なのに政府が取り違えた」(幹部)と説明する。だが、首相官邸と危機対応の現場では「複数のルートの情報があった。東電が事実上の撤退を念頭に置いていたのは間違いない」と見る関係者は少なくない。
■「東電に責任」
首相の怒りは、初動の遅れ、計画停電での混乱など東電へのいら立ちが募った結果でもある。伏線はあった。2日前の13日午後、清水社長は首相官邸を訪ねている。「なぜこんな事態になったんだ。あまりに不手際を繰り返している」。首相は話が進むうちに突然、激高した。直前に首相は東芝の佐々木則夫社長に「行政がやれることはすべてやる。しっかり対応してほしい」と声をかけた。あまりに対照的な対応だった。
首相は15日早朝の会談で清水社長に政府と東電の統合本部の設置を打診した。清水社長は「分かりました」と応じるほかなかった。首相が自ら東電本店に乗り込み、幹部らを前に「撤退したときは東電は百パーセントつぶれます」とぶった約1時間前の出来事だ。
統合本部には首相の名代、細野豪志首相補佐官が常駐する。放射性物質の封じ込めから米国との連携までを一手に担う。首相周辺は「統合本部こそが原発対応の要」と解説する。
政府が東電の意思決定プロセスに積極介入する一方で、東電を突き放すような態度も目立つ。厳しさを増す東電の経営に関して首相は「基本的には民間事業者としてがんばってもらいたい」との姿勢だ。賠償問題でも首相や枝野官房長官は「一義的には東電に責任がある」と歩調を合わせる。確かに「何十万件にもなるかもしれない訴訟案件を皆、国が引き受けることはできない」(政府高官)。
4月17日に事故収束に向けて東電が発表した工程表の作成には政府側が強く関与している。「東電に工程表を作るよう指示した方がいい」と細野氏は進言。首相も東電の発表から5日後の記者会見で「国も含めて取り組めば十分、実現可能だ」と期待を口にした。
東電ばかりを前面に出す姿勢には、政府内でも「官邸の責任の回避だ」との批判が残る。「一義的に東電、と言うのは責任逃れではなく、事実として東電の権限を国が制限する仕組みになっていないからだ」。馬淵澄夫首相補佐官は22日、講演で、東電の株主ではない国の関与には限界があると説明した。
それなら国策としての原子力推進は一体誰が担ってきたのか。政府高官はぼやく。「結局、東電こそが原子力行政そのものだった」
菅直人、東京電力、清水正孝、枝野幸男、放射線量、原子力安全・保安院、炉心溶融、原発、チェルノブイリ
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