自転車事故を防ぐ最も有効な方法は専用通路の整備とされるが、その設置はなかなか進まない。
千葉市は市役所周辺の市道で、路肩をカラー舗装で区分する「自転車レーン」を約1キロ整備する計画を立てた。昨年6月、約300メートルにわたり計4車線の両外側車線をつぶして幅1・5~2・5メートルを青く塗装した。ところが、専用通路の適否を検討する県公安委員会は「計画の一部しか完成しておらず、全部できないと専用通行帯としては危険」と判断。今も自転車レーンに指定されていない。
レーン設置は電線の地中化事業と合わせて行われているため、その後は予算面から整備のめどが立っていない。完成部分のレーンは自転車が利用しているものの、路上駐車も目立つ。
一般的にレーンを巡っては、商店の荷降ろしなどが不便となるため、反対論もくすぶる。
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安全教育の普及もはかどらない。
警察庁は自転車の利用率が高い中高生への安全教育に力を入れ、中学校では09年、全国で3054回の自転車教室を実施し、58万8218人が参加した。しかし、参加者数は全中学生数の16%にとどまる。3年に1度受講するとしても、在学中に約半数しか受講できない計算だ。
安全教育は学習指導要領に盛り込まれてはいるが時間数は決まっておらず、取り組みは学校の裁量次第。「学校によって温度差が感じられる。必修化も考えてほしい」と警察関係者は言う。
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一方、地域では独自の試みが芽生えている。神奈川県茅ケ崎市の市施設に09年11月、4歳児中心の幼児と保護者39組が自転車とヘルメットを持って集まった。広場に白線を引いて歩道と車道に見立て、市の指導員が乗り方だけでなく、駐車車両のよけ方や歩行者とのすれ違い方を教えた。
計画したのは主婦の目黒妙さん(34)。自宅周辺は路線バスが通り、路上駐車も多い一方、子供たちは早ければ2~3歳から自転車に乗る。小学校で安全教育はあるが、「それを待っていては遅い。ルール教育は乗り回す前にしなければ」と考えて市に相談。近所のお母さんたちに参加を呼び掛けた。
5歳で教室に参加した長男は「ヘルメットをかぶらなければ自転車に乗ってはいけない」と固く守っている。目黒さんは「子供がルールを守れば家族も守る。そうして住民全体のルールが良くなっていくはず」と考えている。=つづく
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東日本大震災の報道のため、3月8~10日の3回で休載していましたが、本日から再開します。
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毎日新聞 2011年4月30日 東京朝刊