魚のすり身にタマネギや国産のトウガラシなどを混ぜてナタネ油で揚げた「三宅水産」(広島県呉市広古新開6)の「うまいでがんす」。JR広島駅や広島空港でも販売され、知る人ぞ知る広島のふるさとの味だ。口の中でタマネギの甘みと国産トウガラシのピリッとした辛さ、魚肉のうま味が混ざり合い、幸せを感じる。「もう一切れ」。ついつい手が伸びる。【樋口岳大】
「がんす」は、古くから港町として栄えた呉で郷土食として愛されてきた。「がんす」は元々、「~です」という意味の広島の方言で、いつしか食品の名前になったという。
創業60年を迎えた三宅水産は広島県内のがんすシェアの大半を占めるトップブランド。厳選したすり身や国産トウガラシを使い、パン粉は手作業でまぶし、毎日新しい油で揚げるというこだわりの製法で、昔ながらの味を守っている。定番の「みやけのがんす」や、凝縮されたうま味が長持ちするお土産用の「うまいでがんす」が、オレンジと黄緑のパッケージとともに愛されている。
「がんす娘」を名乗って、商品の販売やデザインを担当する三宅結花さん(27)は「もみじまんじゅうのように、広島のふるさとの味としてがんすを残し、三宅水産がトップブランドであり続けたい」と言う。「ふるさとの味は記憶の中にずっと残っていく」と考える三宅さんは「あの時の、あの味として、広島を離れた人にも覚えていてほしい」と願う。
おすすめの食べ方は、トースターやテフロン式のフライパンで焦げる寸前まで焼くこと。タマネギやトウガラシの風味が一層引き立つ。大葉を添えるとまたおいしい。おでんの具にしたり、ヒジキやジャガイモなどと煮ても良し。うどんの具にしても良し。チーズやトマトとの相性も抜群で、ドリアにしたり、パンにはさんでもおいしい。とろけるチーズとバジル、生のトマトを乗せて焼くのもいい。チーズと合わせることで辛さがまろやかになり、子どもでも食べやすくなる。
問い合わせは同社(0823・71・7816)。広島県内のスーパー「フレスタ」全店などで販売しているほか、ホームページ(http://miyake1950.com/)でも購入できる。
「いらっしゃいませ。呉の広町からやってまいりました。うまいでがんすの三宅でがんす」。威勢のいい売り口上に、お客さんの足が止まる。「さあさあ、お一ついかがんす。まあ、いっぺん食べてみんさい」。笑顔ですすめると一つ売れた。「まいど、ありがんしたー」。4年前から「がんす娘」として、毎日のように県内のスーパーを回り、店頭販売している。
三宅水産の三代目・清登社長の長女。関西の美大で学び、デザイン会社に勤務後、4年前に家業が不振になったため、「大好きながんすを残したい」と里帰りした。古着屋で見つけたシャツにオリジナルの帽子というコスチュームで楽しげにがんすを売る姿が話題になり、テレビやラジオ番組などにも出演。デザインの技術を生かし、ホームページ制作なども担当する。「これは私の天職です」
店頭販売の予定はブログ「がんす娘。のスケジュール帳」(http://gansumusume.sblo.jp/)に掲載。
毎日新聞 2010年11月16日 地方版
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