【北京・米村耕一】北京の天安門広場東側の中国国家博物館前に今年1月に設置された孔子の巨大な石像が、20日突然撤去された。博物館は理由を公表していないが、天安門広場や毛沢東主席の遺体を安置した毛主席記念堂と隣り合う「政治的な場所」だっただけに臆測を呼んでいる。
孔子像は著名な彫刻家の作品で高さ9.5メートル、重さ17トン。1月11日に盛大な落成式があり、呂章申館長は設置理由について、中国紙に「孔子は中国伝統文化の代表だからだ」と答えていた。
だが、インターネット上などで石像設置について賛否両論が巻き起こった。保守派の一部は「封建思想の代表人物の像が、共産党の代表人物(毛主席)と共に天安門広場近くに置かれるのはふさわしくない」と批判した。
文化大革命時代(66~76)の中国では、孔子は「封建的な道徳を教えた反革命の元祖」として中国史上の悪人として扱われた。しかし、改革開放政策を進めた80年代以降、政府が愛国心を強調するため自国の歴史・伝統を重視し始めたことから、孔子の再評価が進んだという経緯がある。
中国のミニブログでは「たった100日で撤去するなど税金の無駄だ」との批判も起きている。石像は博物館の目立たない場所に移されたとの情報もあるが、石像のあった場所に立っていた保安係の女性は「どこに移されたか知らない」と答えた。
【ことば】孔子 紀元前551~同479年。中国・春秋時代に儒教を大成させた思想家。弟子がその教えをまとめた「論語」は「孟子」「大学」「中庸」と合わせ、儒教の四書に数えられる。前漢の武帝は儒教を国教とし、歴史的にも長く聖人として崇拝されてきた。
毎日新聞 2011年4月21日 20時55分(最終更新 4月21日 22時17分)