2011年4月29日21時58分
東京電力は29日、福島第一原発1号機の格納容器に水を充填(じゅうてん)する「水棺」の試験のため毎時10トンに増やしていた注水量を元の6トンに戻した。温度や圧力が下がったためで、引き続き様子をみる。2号機では、坑道にたまった高濃度汚染水を集中廃棄物処理施設に移送する作業を、点検のため中断。30日にはポンプを1台追加して再開し、移送量を増やすという。
水棺は、原子炉圧力容器を囲む格納容器に水をため、圧力容器の燃料上端部の位置までを丸ごと冷やすのが目的だ。圧力容器内に一定量以上の水を注げば、弁や壊れた配管などから水や蒸気が出て、格納容器が水で満たされる。
東電は水棺を確実に実現するため、注水量を現状から増やそうと計画。ただ、原子炉や格納容器の温度、圧力がどう変化するか確かめる必要があることから、東電は27日午前10時すぎから、試験的に1号機への注水量を増やした。
当初は、注水量を毎時14トンまで増やす予定だった。ところが、温度や圧力が予想以上に低下。注水を増やす前の132度、1.5気圧が、29日午前5時現在では113度、1.1気圧になった。注水によって格納容器内を満たしていた水蒸気が冷やされて水になり、圧力が下がったとみられる。
圧力が1気圧を下回ると、酸素を含む外気が吸い込まれ、格納容器内にたまった水素が爆発を起こしかねない。爆発を防ぐための窒素の注入も進めているため「水素の濃度は1%未満とみられ、爆発のリスクはさほど高くない」とはいうものの、48時間が過ぎた29日午前10時すぎの段階で、注水量を元に戻すことにした。
水棺を実現するためにどの程度の注水量が必要かは正確にはわかっていない。ただ、東電によると、燃料の発熱量が下がっているとみられ、現状の毎時6トンのままでも、燃料を冷やす上では十分の可能性もあるという。格納容器内には現状でも、ある程度の水がたまっているとみられ、データを分析し、どのような注水方法がいいかを検討する。