ともあれ、旅行ブームで増えた顔ハメ看板は、21世紀を迎え、あらためて脚光を浴びることとなる。
旅先における夫婦、家族のコミュニケーションツールだった顔ハメ看板。それが今や浅見さんのようなひとり旅のマニアを惹きつけているのだからおもしろい。
ラブプラスファンや鉄道ファン向けのプランも
「ひとり旅」にはまる男たち
「誰か一緒に行ってくれる人でもいれば」
浅見さんは口ではそう言うものの、じつはひとり旅がかなり気に入っている様子だ。
気が向けば、デジカメ片手にふらりと巡礼の旅に出る。愛車を飛ばすこともあるが、のんびり電車を乗り継いでいくことも。平日こそまじめにビジネスマンをやっているが、週末は寅さんのように、風の向くまま気の向くまま、全国の顔ハメ看板を訪ね回っている。
こうした「趣味が目的のひとり旅」は最近、独身男性の間にじわじわと広がっているらしい。
象徴的なのが、今年7~8月に行われた静岡県熱海の「熱海ラブプラス現象(まつり)キャンペーン」。コナミが地元商店街などと開催したもので、対象は恋愛シミュレーションゲーム「ラブプラス+」(コナミ)のファンだ。ゲームの中では、熱海は女子高生の「彼女」と旅する恋の舞台。そこへファン男性が集い、2人の宿泊先「ホテル大野屋」へ実際に泊まろう、という趣向である。
「男性おひとりさまプランなので、布団は1枚でいいわけですが、ゲームの中の世界を味わってもらうため2枚敷いたそうです。iPhoneアプリと連動するARマーカーを利用すれば、市内のあちこちに浮かび上がる『彼女』と記念撮影することも。これが話題を呼び、何台もバスを出すほどの過熱状態となりました」(All About「旅館」ガイド:井門 隆夫氏)
また、伊豆・修善寺にある趣味の宿「花月園」は、鉄道模型ファンにとっては有名な旅館。というのも宴会場に巨大なレールが敷き詰められており、ファンが持参した模型を好きに走らせることができるからだ。常連客の模型はボトルキープならぬ「模型キープ」もできる、という徹底ぶり。