 解散コンサートで熱唱するキャンディーズの藤村美樹、伊藤蘭、田中好子(左から)=1978年4月4日、東京・後楽園球場 |
1978年4月4日、東京・後楽園球場で行われた解散コンサートで、5万5000人のファンを前に燃え尽きた伝説のアイドル、キャンディーズ。30周年にあたる4日、東京ドームシティ内にオープンしたばかりのJCBホールで「キャンディーズ本人たちが出演しない、キャンディーズファンの大同窓会」が開かれる。
『盲導犬クイールの一生』の作家としても知られる編集者の石黒謙吾さん(47)は、高校時代の2年間をキャンディーズのラン(伊藤蘭)、スー(田中好子)、ミキ(藤村美樹)に捧げたひとり。全国キャンディーズ連盟(全キャン連)北陸支部の幹部として全国100ステージで応援に声を枯らした。シャツの袖をまくると、両腕に、今も文字のような傷跡がうっすらと残る。
「16歳のときカッターで左に『キャンディーズ』、右に『ラン』って彫りました。気合いが入ってたんで痛くなかったですよ。30年たって消えてきましたね」
全キャン連は、大学生を中心に最盛期は10万人以上。今は50歳前後になる。昨年秋、東京の中心メンバーが、がんで亡くなった。葬儀では故人の希望でキャンディーズの曲が流された。これを機に、参列者やファンサイトを通じて「30年目の同窓会を開きたい」という気運が全国のファンに広がった。
 石黒謙吾さん(左)らファンの気持ちが大里洋吉さんに届いた |
石黒さんは意を決して今年1月、当時のマネジャーで、解散コンサートを総合演出した大里洋吉さん(61)に手紙を送り対面した。熱い思いが通じて大里さんは大同窓会の演出を引き受けた。
大里さんはキャンディーズ解散の直前に渡辺プロから独立。芸能プロダクション、アミューズを立ち上げて現在、会長を務める。サザンオールスターズや福山雅治らが所属し、上場も果たしたが、30周年を機に後進に道をゆずるつもりだという。大同窓会は自身にとってもひとつの節目だ。コンサートの新聞広告を自腹で負担するなど、手弁当で東奔西走している。
「3月になって、TBSに保管された40万本の映像の中から奇跡的に完全収録した16ミリフィルムが見つかりました。解散コンサートは4時間半51曲に及び、放送されたのは1時間程度。家庭にビデオもなかった時代です。当日は3人が花嫁衣装を着る場面など、未公開部分も含めてお届けします」と大里さん。
ステージでは、解散コンサートでバックバンドを務めたMMPが再結成、作詞家の森雪之丞、当時のラジオ番組を担当した吉田照美や近田春夫、大橋照子といったゆかりのゲストも駆けつける。
 キャンディーズラストコンサート |
ただ、当人たちは出演しない。3人の近況について大里さんが明かす。
「今回の話が動く前に、たまたま伊藤さん、田中さんと別々にお食事しました。30年ぶりです。ご家族のことや、なつかしいよもやま話をしました。藤村さんも元気でやっていると聞いています」
無粋を承知で、キャンディーズ再結成の可能性をたずねた。
「絶対にないですね。解散したとき、もう3人一緒にいるところをマスコミに撮られることも、やめようと誓い合ったほど。でも絆は深い。だれかの自宅で会っているんでしょう」
大里さんは、笑いながらこう続けた。
「『キャンディーズ学校』の同窓会だと思っておこしください。本人たちも楽しみにしているようですが、恩師が来られない同窓会もあるでしょう」
* * *
大同窓会のチケットは応援用の紙テープ10本、同窓会会員証とワンドリンク付きで1万500円。4日は解散コンサートと同じ午後5時17分に開場し、午後7時スタート。当日券は午後4時半からホールで販売する。収益金の一部は、財団法人日本対がん協会に寄付される。
▽伊藤蘭(いとう・らん)1955年1月13日生まれ。53歳。80年に女優復帰。映画「ヒポクラテスたち」で高い評価を受けた。90年水谷豊と結婚。
▽田中好子(たなか・よしこ)56年4月8日生まれ。51歳。80年に女優復帰。89年の映画「黒い雨」で主演女優賞を総ナメ。92年に故・夏目雅子さんの兄で実業家の小達一雄氏と結婚。
▽藤村美樹(ふじむら・みき)56年1月15日生まれ。52歳。83年ソロ歌手として一時復帰したが、その後、実業家と結婚。芸能界から完全に引退した。
ZAKZAK 2008/04/03