ここから本文エリア
現在位置:asahi.com> マイタウン> 佐賀> 記事
3市の課題(中) 新幹線論争しぼむ声
2011年04月21日
4年前。鹿島市議選では、九州新幹線西九州(長崎)ルートの建設に反対する候補者と賛成する候補者が真っ向からぶつかった。選挙の結果、建設に反対する桑原允彦・前市長派の議員が多数を占めた。
だが、今回の市議選には建設反対派の多くが、それぞれの事情で立候補せず、引退。新幹線長崎ルートを巡って市長派、反市長派が市を二分したのは過去の話という印象だ。
これまで建設に反対していたある候補は「新幹線の扱いをどうするのかという争点は終わった。現在の市長の手腕は手堅いと、就任後の約1年間を見て分かった。市政には是々非々の立場で臨む」と話す。別の候補も「いまは鹿島市の浮揚が一番の関心事。最大の課題は1次産業や市経済の浮揚をどう再構築していくかだ」と話す。
その最も分かりやすい具体例は、隣の太良町の「道の駅太良」の盛況ぶりだ。大型バスが駐車でき、一般車両の駐車スペースも広い。それに比べ、わずか数キロ離れた「道の駅鹿島」は駐車スペースも狭く、「活気が無い」という人は少なくない。この格差は、新幹線受け入れを決めた太良町への「見返り」として、国や県から多くの予算がついた地域振興策の結果と、鹿島市民の多くが分かっている。
鹿島市の振興策が遅れた現状について、今回の県議選の鹿島市・藤津郡区で3選を果たした土井敏行県議は「桑原前市政は壁に向かって球を投げていたが、投げたときのまま戻ってきてしまった。その視点がやや欠けていた」と分析する。
一方、そう指摘された桑原前市長は「実を取る方向に鹿島市はかじを切ったのだろう。だが、大政翼賛会のような形ではなく、議会のチェック機能を果たしてほしい」と注文する。
長崎ルートの先行きを懸念する有権者も少なくない。「東日本大震災で状況は一変した。建設費や長崎線複線化、フリーゲージ車両の開発費など大震災前と同額の予算がつくか分からない」
今回の市議選の争点について樋口久俊市長は「新しい風をという市政への思いは吹き始めてきた。議会とは諫早干拓、TPP、震災後をどうするかの議論をきちんと続けたい。新幹線問題は長い経過を経てきた。賛否どちらかではなく、推移を見守っていくだけ、と就任当初から今でもノーコメントを貫いている」。
その上で、「今年度からJR肥前鹿島駅のエレベーター設置の工事が始まる。今後4年間で約12億円が投入される見込みで、市にふさわしい玄関口が整備される」と、市の浮揚への一歩となる「果実」を誇った。(長沢豊)
- PR情報
-
|