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きょうの社説 2011年4月30日
◎電力不足対策 北陸も安心していられない
東日本大震災で生じた電力不足で、政府は東京電力と東北電力管内の企業や家庭に広く
節電を求めている。昨年夏に比べて一律15%の削減目標が提示され、今後、多くの企業が停電を避けて生産を西日本にシフトする見通しだが、福島第1原発事故を受けて北陸や中部、関西の各電力会社で原発の運転再開が遅れており、供給不足が波及する可能性が指摘され始めた。北陸の場合、夏場は526万キロワットの需要が見込まれるのに対し、志賀原発の1、 2号機を除く供給力は最大535万キロワットで、供給予備率は2%(9万キロワット)にとどまる。北電は「望ましい予備率は8%」としており、決して安心していられる数字ではない。 東電は被災や老朽化で停止していた火力発電所の再稼働やガスタービン発電機の新設、 揚水発電のフル稼働などで、震災直後は3100万キロワットにまで落ち込んでいた供給力を7月末時点で、5200万キロワットにまで上積みした。さらに企業の自家発電の余剰電力の購入に力を入れるという。北電は原発抜きの供給力を現在よりどの程度まで高めることができるのか、総点検をしてほしい。 電気は貯蔵、備蓄が難しい。需要に対して供給不足に陥れば、電力系統内で周波数低下 を招き、供給力の不足が一定以上になると、最悪の場合、全体で電圧を維持できない「電圧崩壊」を引き起こす。連鎖的で広域的な大規模停電を誘発すると、経済や社会生活に深刻な打撃を与え、修復に長時間かかる可能性がある。東電管内ではこうした事態を避けるために計画停電が実施された。 電力各社は供給不足に備えて、万一の場合には隣接の電力会社同士で電力を融通し合う 仕組みを持っている。北陸電力も中部電力や関西電力から電力を融通してもらうことは可能だが、今夏は中部電力や関西電力でも電力不足が懸念されており、万全な策とは言い難い。今夏が昨年に続く猛暑となり、これに発電施設の故障などが重なりでもしたら、北陸の電力不足は一気に深刻化する。北電は電力需要のピークを迎える夏に向け、必要な対策を打ち出し、県民の理解を得る努力をしてほしい。
◎能登有料道 無料化の備えを今から
能登有料道路の無料化が国土交通省の許可を受け、2013年4月に実施されることが
決まった。無料化は能登と金沢、加賀の行き来を活発にし、14年度の北陸新幹線開業後は金沢から能登への2次交通の主役を担う。交流人口拡大の起爆剤になりうる役割の大きさを考えれば、無料化の効果を最大限に引 き出す備えを今から練る必要がある。1年で最も交通量が増えるゴールデンウイークは、能登の大動脈の将来像を探る絶好の機会でもある。 能登有料道路は1982年に全線開通し、地方道路公社の管理では日本最長(82・9 キロ)の有料道路である。計画では14年1月までが料金徴収期間だったが、県が道路公社の出資金などを放棄することで10カ月の前倒しとなった。 全区間利用なら普通車で片道1180円だが、無料化に伴い交通量の大幅な増加が見込 まれる。何より大事なのは、道路開通当初からの狙いである能登の活性化に弾みをつけることである。道路からのアクセスを検証し、新たな出入り口も含めて大動脈としての機能を高めたい。サービスエリアなどの休憩施設も改善の余地がある。 日本海を一望した後、半島の丘陵地を縫う変化に富んだ景観が魅力である。沿道の景観 を磨き上げ、道路そのものの観光価値を高めていく必要がある。有料道路という名称に代わる訴求力のあるネーミングにも知恵を絞りたい。 無料化後も自動車専用道路であることには変わりない。交通量が増えても高速性を確保 するには、2車線区間の4車線化やゆずりレーン拡大なども課題となる。 東日本大震災をみれば、災害時の大動脈としての役割も高まっている。被災地の救援活 動や物資輸送などで東北自動車道が果たしている役割は、能登が被災した時にはこの道路が担うことになる。 4年前の能登半島地震では路盤崩壊が生じ、盛り土道路の弱点が見えた。その後、耐震 補強されたとはいえ、東日本大震災のような揺れには耐えられるだろうか。道路サービスを充実させるにしても、その前提は強固な安全対策にあることを忘れないでほしい。
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