きょうのコラム「時鐘」 2011年4月30日

 東北新幹線全線がつながった。諸事はかどらない復旧の中で、まずは朗報である

復旧、復興の先兵役のような新幹線だが、地域の人には在来線も大切だろう。東北線は一足早く、21日に全通した。それまで石油などの貨物輸送は日本海沿いに青森、盛岡という遠回りのルートを余儀なくされた。まだダイヤ通りとはいかないが、鉄路の復旧は頼もしい

あっては困るが、北陸でも震災に備える覚悟がいる。災害に強い新幹線の開通が待たれるし、在来線もおろそかにはできぬ。赤字や空気を運ぶと軽んじるのは論外で、並行してつつがなく走らせたい

北陸線は海岸線に沿うように走るが、車窓から海が見える区間は意外に乏しい。艦砲射撃を恐れて線路を岸から遠ざけたのだという。親不知を経て県境を過ぎると、線路は海から遠ざかる。空爆を知らなかった明治時代の産物である

車窓の眺めを味気なくしたが、「災い転じて福」かもしれない。海から離れる線路は、津波の被害を遠ざける。大津波を知った今は、そんな鉄道が頼もしい。砲弾でなく津波。間違えたが、明治の鉄道人の備えに感謝したい。