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緊急特集:東日本大震災の国際ビジネスへの影響

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日本からの輸入食品の放射線検査の許容水準上限を引き下げ(EU)

2011年4月12日更新 ブリュッセル事務所発

EUの食品連鎖・動物衛生常設委員会(SCoFCAH)は4月8日、日本からの輸入食品・飼料の放射線検査の許容水準の上限を、日本にならって引き下げるという欧州委員会の提案に合意した。これにより、EUの検査基準はより厳しいものとなる。欧州委員会は11日に正式に採択し、12日に改正規則をEU官報に公示した。

欧州委員会の保健・消費者保護総局(SANCO)のVERSTRAETE氏によると、8日のSCoFCAHの会合で、日本からの輸入食品・飼料の放射線検査の許容水準の上限を日本にならって引き下げるという欧州委員会の提案が合意に至ったとのこと。

<現行規則の見直しの必要性>
EUがウェブサイトで8日に公開した日本からの輸入食品のQ&A他のサイトへによると、輸入食品の放射能に関するEUの現行基準は、1986年のチェルノブイリ原発事故翌年の1987年に定められたもので、24年間変えられてこなかった。基準値は年間の個人の食品の消費の10%がこの値の汚染レベルにある場合を想定しており、放射線への暴露が年間で1ミリシーベルトを超えないように設定されている。また、基準値は国際機関(WHO、FAOなど)のガイドラインに沿って作られている。

欧州委員会のバローゾ委員長は5日、欧州議会で、食品の安全基準が高い日本では、上限がEUよりも低く設定されていることから、EUもさらなる科学的分析の結果がでるまで、暫定的に日本の基準を適用すると説明した(9. Question Hour with the President of the Commission他のサイトへ)。そのうえで同委員長は、この変更はあくまで慎重を期した決定で、予防的な措置であることを強調した。EUは、6月30日までに科学専門家委員会(EURATOM条約31条)への諮問を行う予定で、さらなる科学的分析の結果を踏まえ、3954/87の基準値を正式に改定する見込み。

なお、上記のQ&Aサイトによると、EU加盟国では4月8日時点で、日本から輸入された食品のうち放射能汚染食品は一つも報告されていない。

<放射性ヨウ素131、セシウム134および137については基準値引き下げ>
許容水準の上限基準が見直されることで、日本からの輸入食品・飼料の検査対象となっている放射性ヨウ素131については、ベビーフード、乳製品、飲料水の許容水準上限が引き下げられ、また、セシウム134およびセシウム137については、ベビーフード、乳製品、その他食品(主要でない食品以外)、飲料水が引き下げられることになる。(表参照)

<検査対象は引き続き放射性ヨウ素131、セシウム134および137>
Q&Aによると、12都県産のすべての食品・飼料については、日本で出発前の検査を受ける必要があり、放射性ヨウ素131、セシウム134および137の水準がEU最大許容水準を超えていないことを証明する検査分析レポート(数値)、日本の当局の署名付きの証明書が必要と説明している。(参照:日本食品に対する輸入規制を採択(EU)

<食品輸入に関しては日本はマイナーな貿易相手国>
欧州委によれば、日本からの食品輸入は多くない。2010年のEUの日本からの農産品の輸入をみると、農産品は1億8,700万ユーロ、水産品は2,900万ユーロだった。日本からの農産品の主要輸入国は、オランダ(3,800万ユーロ)、英国(3,700万ユーロ)、フランス(3,400万ユーロ)、ドイツ(3,200万ユーロ)、の順となっている。水産品は、オランダ(1,300万ユーロ)、フランス(700万ユーロ)、ドイツ(400万ユーロ)、英国(300万ユーロ)、イタリア(100万ユーロ)の順となっている。また、2010年の野菜・果物の日本からの輸入は9,000トンで非常に少量であった。

加えて、EUによると、現在の状態では、対象の12都県からの輸入は、震災、津波の被害などで物理的にも難しいであろうとしている。

欧州委員会規則297/2011の基準値を改正する欧州委員会規則351/2011は、4月12日の官報で公示された。

なお、改正規則でも引き続き対象は放射性ヨウ素(I-131)、セシウム(Cs-134、Cs-137)に限定され、放射性ストロンチウムやプルトニウムなどは対象となっていないが、改正規則前文では、加盟国は、他の放射性物質の存在の可能性に関する情報収集という観点から、他の放射性物質の存在についても、任意に分析を行うことができるとしている(第5段)。

また、改正規則では、欧州委員会規則297/2011では当局の証明書に加え、検査分析報告書を要求する対象を12都県「原産の(originating from)」食品・飼料としていたのが、12都県「原産、または、発送された(originating in or consigned from)」食品・飼料と記述が追加された(351/2011第1条(1)(a)による297/2011第2条3項3段の改正)。
しかし、運用上はこれまでのとおりで、12都県以外の原産の食品・飼料を12都県から発送した場合は、検査分析報告書の添付は不要。
ただし、証明書の記載方法が変更となった。変更後の証明書記入方式は農林水産省:輸出に関する国内外の制度 (8)EU他のサイトへを参照。
加えて、これらの12都県近海(coastal waters)を原産とする産品についても、水揚げ地に関わらず、検査分析報告書が要求されるとした。欧州委員会規則351/2011の原文は以下で確認できる。
COMMISSION IMPLEMENTING REGULATION (EU) No 351/2011PDF他のサイトへ

食品・飼料における放射線量の許容水準の上限(単位:該当食品1キログラムあたりのベクレル)
食品 畜産物
ベビーフード 乳製品 その他食品(飲料水以外) 飲料水
放射性ストロンチウム(特にSr-90) 75 125 750 125
放射性ヨウ素(特にI-131) 100 300 2,000 300 2,000
プルトニウムと超プルトニウム元素(特にPu-239、Am-241) 1 1 10 1
その他放射性核種の半減期が10日間以上のセシウム(特にCs-134,Cs-137)ここではC14、H3以外 200 200 500 200 500

注:日本でとられている措置と整合性を確保するため、規則3954/87の基準値を日本の基準にあわせて暫定的に置き換える。
出所:EUの日本からの輸入食品に関するQ&A他のサイトへ

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