大相撲の幕内阿覧(27)=三保ケ関、ロシア出身=が28日、福島第1原発事故の詳報をもっと報道するよう訴えた。故郷のウラジカフカスは1986年に爆発事故が起きたチェルノブイリ原発から約1400キロ離れていたが、それでも健康被害が問題になったと力説する。福島第1原発から約220キロの東京で、不安な気持ちを抱えたまま技量審査場所(5月8日初日・両国国技館)への稽古を積んでいる。
◇ ◇
ロシア出身者は原発事故と聞くと、どうしても「チェルノブイリ」を思い浮かべてしまう。2歳だった阿覧は当時の記憶がないというが、「父親から何度も聞かされてきた。いっぱい、病気の人が出たし、がんとかもあった」と訴えた。
最近、原発に関する報道が日ごとに少なくなっていると懸念する。「テレビでもほんのちょっとしかやらないことがある。大丈夫じゃないよ。まだだよ」と警戒。「チェルノブイリは今も放射能が残っている。これからが大変」と訴えた。
妻マリーナさんと昨年2月に生まれた長男サルマッツ君は、福島の事故が起きた後にロシアに帰した。自分も一時帰国を考えたが、日本相撲協会が外国出身力士を日本にとどまらせる方針だったため、断念した。
単身赴任になった直後は、市販の弁当で夕食を済ませることもあった。最近になって、三保ケ関部屋に住み込み、部屋のちゃんこを食べて、何とか栄養管理ができるようになったという。ただ、家族をいつになったら日本に戻すのか、現時点では分からないと嘆く。
この日は東京・墨田区の時津風部屋へ出稽古し、同じく出稽古に来た朝赤龍や鶴竜らと10番とって7勝。内容的にもまずまずだったが、表情はさえない。「この間も雨が降ったけど、大丈夫か分からない」と不安ばかりが口をついて出た。
ソーシャルブックマーク・RSS・twitter・Facebook