発信箱

文字サイズ変更

発信箱:ニッポンの危機=福本容子(論説室)

 ビル・エモットさんは知日派で知られるイギリス人ジャーナリスト。大震災直後、イタリアの新聞のコラムで、日本がますますガラパゴス化しないか、と心配してくれていた。世界への関心を失い、国内に引きこもってしまう危険性がある、って。

 あれだけの地震と津波と「レベル7」の原発事故がいっぺんに起きたのだから、しばらくはその対応で手いっぱいになる。それは当たり前。だけど世界は、3月11日以降も動き続け、変化している。

 今月14日、中国の海南省にブラジル、ロシア、インド、南アフリカの首脳が集まった。中国と4カ国の間の貿易はぐんぐん伸びている。会議では貿易の時の支払いを自分たちの通貨でやらないか?なんて話も出た。米ドルへのけん制だ。決して仲良し同士ではないし競争もしている新興国組だけど、先進国中心で大事なことが決まっていく現状を変えようと結束を強めている。

 日本にも大いに関係ある動きが地球のあちこちで起きていることも忘れずに。救援物資を送ってくれた国々も、世界の中の日本の居場所までは面倒を見てくれない。原発や被災地はもういい、というのじゃなく、国際舞台で今まで以上に活躍するためにも、早く安全の確保と復興にメドをつけないと。やることはいっぱいなのだけど……。

 エモットさんが以前編集長を務めた英誌エコノミスト(4月16日号)に「ニッポンの危機」について記事があった。危機とは、政治。「もともと難しかった協力が震災後、ますます難しくなった」。与野党の協力もそうだし、民主党内の対立が困難に輪をかけている、と。

 小沢系の民主党議員が菅降ろしを始めた。内向きどころか内輪もめ。これでは日本がますますガラパゴス化なんて、ガラパゴスに失礼過ぎて言えない。

毎日新聞 2011年4月29日 0時11分

 

おすすめ情報

注目ブランド

毎日jp共同企画

一覧

特集企画