|
きょうの社説 2011年4月29日
◎大型連休入り 身の丈に合ったぜいたくを
大型連休がスタートした。既に家族や友人らと過ごし方をいろいろ考えているという人
も少なくないだろうが、今年はぜひ、「身の丈に合ったぜいたく」を心掛けてみてほしい。東日本大震災の発生後、被災地や、電力不足に陥った首都圏だけでなく、全国に一気に 広がった過度な自粛ムードは、徐々に薄らいではいるものの、まだ一掃されたとは言い難い。それは、北陸信越運輸局が管内の旅行業者を対象に実施した調査で、連休中の国内旅行について、9割が「前年より感触が悪い」と回答したことからもうかがえる。 いまだに不自由な避難生活を送っている被災者を思いやるのは大事なことであり、「出 掛ける気にならない」という気持ちもよく分かる。ただ、いつまでも消費者心理が縮こまったままでは経済が回らなくなり、税収が落ち込み、ひいては被災地の復興のスピードにも影響が生じかねない。幸運にも大震災の被害を受けなかった北陸などが元気であり続けることは、巡り巡って被災者のためにもなるのである。連休を契機として、このことをあらためて認識してもらいたい。 とはいっても、無理に遠出をすることばかりを考える必要はないだろう。北陸でも、連 休中には青柏祭、高岡御車山祭、ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭、となみチューリップフェアなど伝統行事や大型イベントがめじろ押しである。それらの会場に足を運び、合わせて周辺の観光スポットなどにも立ち寄って、土産を品定めしたり、食事をしたりする際には、財布のひもを普段よりも少し緩める。そんなささやかなぜいたくも、積もれば大きな意味を持ってくる。 イベントの入場料や会場での物品売上額などの一部を、義援金として被災者に贈ること を打ち出している主催者も多い。それに参加して楽しいひとときを過ごすことによって、地域経済の活性化とともに、被災者への直接的な支援にもつながるわけだ。もちろん、会場では義援金の募金箱があちこちに設置されているはずであり、その前を通る時にも財布のひもをちょっと緩めたい。
◎被災者の心のケア 息長く支援を続けたい
東日本大震災発生から1カ月半が経過し、長引く避難生活を送る被災者の生活再建とと
もに心のケアが大きな課題となっている。より精神的な支えが必要となる多くの子どもや高齢者が避難所生活を余儀なくされており、現地では実態調査を行って具体的な支援を急いでいる。能登半島地震の際も、発生から3カ月を過ぎてからの調査で被災者のほぼ3人に1人が 「寝付けない」「疲れやすい」などのストレスを感じていて、何らかの支援が必要とされた。今回の大震災では石川、富山両県をはじめ全国から専門家が派遣されているが、甚大な被害状況から精神面でも長期的な支援体制が求められている。県内に受け入れた被災者を含めて息長く支えていきたい。 心のケアは大災害などに遭った人の心の傷をカウンセリングなどで手当てするもので、 阪神大震災などで注目されるようになった。大きなショックを受けた直後から不眠や吐き気を訴えたり、長期間にわたって抑うつ感や無力感が続くなどのさまざまなケースがあり、継続的な支えが欠かせない。 今回の大震災で被災地に派遣された県内の医師らは、心身の疲労が蓄積してきた被災者 が増えているとして、「心のケアがより重要になる」と指摘している。避難生活の長期化に伴い、全国の専門家による支援体制をより強化してほしい。今後、生活の場が仮設住宅に移っていくが、能登半島地震の際は、仮設住宅に生活援助員やボランティアらが訪れて、高齢者らの見守りや相談に応じていた。能登半島地震の経験や支援ノウハウが参考になることも多いだろう。 北陸に避難してきた人々に対する支援もきめ細かく行いたい。金沢市教委は被災地から 転入してきた児童、生徒の心のケアに努めるように市立小中高校の全校に通知した。射水市教委は心のケアの一環として、被災者を対象に市内の体育、文化施設を無料で利用できるようにした。各種の情報が被災者に十分伝わるようにして、将来に対する不安などを少しでも和らげるように地域ぐるみの支援を続けたい。
|