「さくらさくらさくらさくら万の死者」。今週の日経俳壇にあった句が頭から離れない。作者は岩手県大船渡市の桃心地さん。すさまじい廃虚が広がる三陸の被災地からの投稿だ。選者の黒田杏子さんは「国民的鎮魂歌」と評している。
▼桜前線は津波にのまれた町にも達した。しかしそこには、おびただしい数の死がある……。深い悲しみを詠みながら、しんとした静けさを漂わせているのは言葉の力ゆえだろう。もちろん、これだけではない。震災からこのかた、本紙などの俳壇、歌壇には未曽有の惨禍を詠んだ作品が途切れなく寄せられている。
▼もともと、社会的な出来事にもなじみやすいのが日本の短詩型だ。大きな災害はしばしば句や歌に詠まれるが、こんどの事態は詠み手の精神をしたたかに揺さぶっていよう。切り立った言葉。魂のこもった表現。現実の重みが秀作を生む。戦争や動乱と同じように、震災はやがて、文学を突き動かしていくだろう。
▼「まがまがしい金の満月のぼりきて地球の裏の故国思へり」。こちらは日経歌壇に載った、メキシコ市に住む神尾朱実さんの歌だ。異郷の輝ける満月に、かえって深まる日本への思い。居ても立ってもいられぬ気持ちが作品になったのかもしれない。災厄の前で人は言葉を失う。それでも、言葉にはなお力がある。
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