[第3次嘉手納訴訟]爆音放置は許されない

2011年4月28日 09時31分このエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録
(15時間12分前に更新)

 原告2万2058人。県民の70人に1人に相当するマンモス訴訟が始まる。圧倒的な数は、もはや米軍嘉手納基地周辺の住民だけが原告ではないことを物語る。一向に変わらぬどころか、悪化するばかりの騒音被害に県民がノーを突きつけたとみるべきだ。

 嘉手納町など5市町村の住民が国を相手に米軍機の夜間・早朝の飛行差し止めや騒音被害による過去、将来分の損害賠償などを求めた第3次嘉手納爆音訴訟をきょう那覇地裁沖縄支部に起こす。

 これまでの判決はいずれも飛行差し止めを棄却している。根拠としているのは、国は第三者である米軍の活動を規制する権限がないとする「第三者行為論」である。原告は今回、基地提供者の国が直接、騒音防止策をとる義務があるとして第三者行為論を論破する考えだ。このためには騒音と身体的被害の因果関係の立証が必要不可欠である。

 米軍のやりたい放題の運用は、基地の管理権・使用権が米軍に委ねられているからである。航空法の飛行禁止区域や最低安全高度が適用されない。ドイツでは、ボン補足協定に基づきNATO軍の演習・訓練についても国内法が適用される。独立国として当然である。第三者行為論が成立するはずもなく、日本の特異性だけが際だつ。

 1次訴訟では867人に約13億7千万円、2次訴訟では5519人に約56億2千万円の支払いを命じた判決が確定している。米軍機の深夜・早朝の差し止め判決が出ない限り、訴訟はエンドレスに続く。

 2009年2月の福岡高裁那覇支部の確定判決では、「国はより強く騒音改善を図る政治的責任がある」と国の不作為を批判している。

 日米間には1996年に締結した騒音防止協定がある。協定とはいうものの、抜け穴だらけで実効性はない。

 協定では午後10時~翌午前6時の飛行について「米国の運用上の所要のために必要と考えられるものに制限される」と規定している。米軍が運用上必要と考えれば制限されないということである。

 嘉手納基地には米原子力空母の艦載機が通告なしに飛来する。国内基地からの飛来も頻繁だ。米本国からは最新鋭ステルス戦闘機が2007年から5度、一時配備されている。一時といいながら3~4カ月に及ぶ。最近では常駐といったほうが実態にかなっている。常駐機に外来機が加わっては、昼夜問わず騒音が跳ね上がるのは当然である。

 「静かな夜を返して」。住民は何ら特別なことを求めているわけではない。裁判所は耐えられない騒音にさらされ、人間らしい生活が破壊されている嘉手納基地周辺の現実を直視してほしい。そうでなければ人権のとりでが泣く。

 裁判所が国の責任を指摘しているのに国は動かない。住民の要求に耳を貸さず、米軍の恣意(しい)的な運用を改めさせることはない。住民は騒音の中に放置されたままである。国はどこを向いているのか。

 裁判所が「殺人的」な騒音の現実を見据えるのならば、これ以上違法状態を追認することはできないはずである。

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