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◆ 空間放射線量の測定について

Q1 モニタリングポストとはなんですか?

 大気中の放射線(空間放射線といいます)の影響を調べるためには、放射線(α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線など)のうち、洋服や靴などでは遮蔽されないため身体に到達する放射線(γ(ガンマ)線)の強さを把握する必要があります。
 モニタリングポストは、大気中の放射線の量(空間放射線量)のうち、主にγ(ガンマ)線を連続して測定する据え置き型の装置です。戸外に置く検出器と室内に置く測定器からなっています。放射線が検出器に当たると、検出器内でかすかな光を発する仕組みになっており、その光を検出・増幅して測定器で放射線量として計測します。
 東京都健康安全研究センターでは、ヨウ化ナトリウム タリウム(NaI(TI))シンチレータを検出器に用いたモニタリングポストを、周辺環境からの影響が少ない庁舎の屋上(地上約18m、床面より180cmの高さ)に設置して、1年を通して24時間連続で自動測定しています。モニタリングポストでは、極めて低い放射線量まで精密に測定することができます。
モニタリングポスト
検出器
検出器
測定器
測定器
【参考】
 文部科学省では、国内の原子力災害または国外における原子力関係事象による空間放射線量の上昇を把握するため、全国でモニタリングポストによる環境中の放射線量(γ線)の測定調査を行っています。モニタリングポストは、周辺環境からの影響を受けないよう、周囲に高い建物がない平坦な草地等の地上又は比較的高い場所(屋上等)に検出部を設置し、測定することになっています。

Q2 空間放射線量の測定結果は、使用する測定機器により違いはありますか?

 測定機器の特性の違いなどのために、同じ場所で測定しても数値が変わる場合があります。
 放射線を測定する機器には、モニタリングポストのほかに、測定の目的・用途に合わせ、人や物に付着している放射性物質(表面汚染)のチェックや空間放射線量の測定を簡易に行う各種のサーベイメータ、個人が受ける放射線量の測定・管理を行う電子ポケット線量計などがあります。
 サーベイメータは、小型で持ち運んで測定することができますが、24時間連続的に自動測定するようには作られていません。平常時からの大気中の放射線量を監視するためには、固定して常時測定できるモニタリングポストが適しています。
 また、簡易な測定器では、低い放射線量の測定は困難で、測定に誤差が生じて、測定結果のばらつきが大きくなります。
 以下に、放射線量測定に使用されている機器を紹介します。

◆ シンチレーション式サーベイメータ
 シンチレーション式サーベイメータの原理はモニタリングポストとほぼ同じで、主にγ(ガンマ)線を測定し、測定値はμGy/h(マイクログレイ/1時間あたり)で表示されます。
 空間放射線量の測定のほかに、医療用放射性廃棄物や食品放射能汚染の簡易検査に使われます。
 γ(ガンマ)線を放射性物質のエネルギーごとに補正する機能がモニタリングポストより劣るため、測定値の正確さではモニタリングポストが勝ります。
シンチレーションサーベイメータ シンチレーションサーベイメータ
シンチレーションサーベイメータ(TSC166)
日立アロカメディカル(株)

◆ GM式サーベイメータ(いわゆるガイガーカウンター)
 GM式サーベイメータは、1分間(または1秒間)に、検出器に当たった放射線の数を数えます。測定値の表示はcpmやcps※になります。機種によって、β(ベータ)線をγ(ガンマ)線と区別なく数えるものや、検出器をアルミで覆いβ(ベータ)線を遮蔽することにより、γ線を数えるものなどがあります。
 主な用途は、人や物に付着した放射性物質(表面汚染)の測定に使われます。
 GM式サーベイメータは、放射線の種類(β(ベータ)線、γ(ガンマ)線など)やヨウ素、セシウムなど放射性物質の種類ごとに異なるエネルギーの強さには関係なく、放射線の数のみをカウントしています。また、環境中に存在する放射性物質のうち、コバルトやカリウムなど低エネルギーの放射線の測定には、過剰に大きな線量として算出してしまいます。そのため、モニタリングポストに比べると、人体に影響のあるγ(ガンマ)線の強さを正確に把握することはできません。

 ※cpm(count per minute)は1分間に計測した放射線の数、cps(count per second)は1秒間に計測した放射線の数です。
GM式サーベイメータ(TGS-131) GM式サーベイメータ(TGS-131)
日立アロカメディカル(株)

◆ ポケット線量計
 一般的に小型の携帯用線量計の総称として使われています。測定の原理はシンチレーション式サーベイメーターと同様のもの、GM式サーベイメータなどと同様のものなど、機種によりさまざまです。
 個人が受けるγ線やX線(エックス線)などの放射線量を測定する機器で、医療従事者や放射性物質を取り扱う従事者などが、放射線作業時の作業前後で受けた放射線量あるいは一定期間の吸収線量(積算線量)を算出するための機器です。
 標準のものは、1マイクロシーベルトの精度で測定が可能です。身に着けて簡便に取り扱える反面、測定の精度は劣ります。
 文部科学省が、全国大学等の協力を得て行っている空間放射線量測定(γ線)は、小型の線量計を用いています。結果は、24時間分の積算値と、積算値を時間数(24)で割って1時間あたりの数値とした参考値の両方を併記した形で、ホームページで公表されています。
高性能個人被ばく線量計 高性能個人被ばく線量計 DOSEi―nγ
富士電機(株)


高性能個人被ばく線量計 DOSEi―γ
富士電機(株)

Q3 国内でも地域によって、身の回りの自然放射線量の違いがあるのですか?

 西日本は東日本に比べて、放射線量が高い傾向にあります。これは、西日本が東日本に比べてウランやラジウムなどの自然の放射性物質を含む花崗岩が多いため、大地からの放射線の量が多くなるからです。

文部科学省の全国環境放射能水準調査結果
μSv/h(マイクロシーベルト/毎時)
 平常時測定結果(一日の平均値)
平成23年3月15日※平成23年4月26日
東京都新宿区0.028~0.0790.1440.069
岐阜県各務原市0.057~0.1100.0610.062
鳥取県東伯郡0.036~0.1100.0670.064
山口県山口市0.084~0.1280.0920.093
※ 3月15日は東京都において大気中の放射線量が最も高い値になった日です。

日本各地の空間放射線量(2008年度)
財団法人日本分析センター『ようこそ「日本の環境放射能と放射線」へ』より

Q4 測定された数値は、測定場所による違いはありますか?

 空間放射線量は、測定する場所の周辺環境の違いにより、測定値が異なる場合があります。
 (1) 高い建物の傍などでは空中からの放射線が遮断され、計測されない
 (2) 測定場所の地質や地表面の降下物、周囲の建物等のコンクリートなどに存在する天然及び人工放射性物質の影響を受ける
と考えられるためです。
 東京都健康安全研究センターが、平成23年4月26日、同センター内の屋上面や地表面から高さの違う場所で測定した結果、それぞれの測定値に大きな違いはみられませんでした。また、同じ場所で測定したモニタリングポストの測定値(0.0692マイクロシーベルト)と、NaI(TI)シンチレーションサーベイメータの測定値(0.06マイクロシーベルト)も、ほぼ変わらない値でした(1グレイを1シーベルトに換算)。

測定場所の違いによる測定値の比較