福岡県内の県立高校は6日から新学期が始まる。岩手県釜石市から、母の実家がある直方市に移り、県立鞍手高に入学する狐鼻(きつねはな)育菜さん(17)、若菜さん(15)姉妹も被災地の友人を思いつつ、新たなスタートを切る。
地震発生当時、育菜さんは県立釜石高2年、若菜さんは市立釜石東中3年だった。釜石高に被害はなかったが、海に近い釜石東中は津波にのまれた。「訓練通りの避難場所にも水が来て、さらに高台に登った」と若菜さんは振り返る。卒業式の2日前だった。
父親の幸貴さん(48)と母親の幸子さん(43)も無事だった。しかし「数年では元の生活に戻れないと思った」と、被災1週間後に全員が再会した直後から移住を考え始めた。津波を防ぐ堤防は無惨に壊れ、余震も続いている。交通網も寸断され、登下校も困難だ。
「誰か1人欠けてもおかしくない状況だった。同じ思いをしたくない」とあわただしく転入手続きを進め、4月2日に福岡県に来た。育菜さんは「友だちは心配だけど、メールで『転入おめでとう』『お互い頑張ろう』とメッセージをくれた」と笑顔。当初は携帯電話がつながらなかった友人とも連絡が取れ始め、少しだけ安心した。若菜さんも「新しい気持ちで頑張る」と話す。
2人は鞍手高の卒業生から譲ってもらった制服を着て校門をくぐる。「暮らしが落ち着いたら、被災地の仲間のためにできることを考えていきたい」【小畑英介、写真も】
2011年4月6日