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法医解剖:警察庁研究会が創設提言 犯罪死見逃し防止で

 死因究明制度の在り方を検討してきた警察庁の研究会は28日、新たな解剖制度として「法医解剖」を創設することなどを柱とする最終報告をまとめ、中野寛成国家公安委員長に提出した。現行の司法解剖や行政解剖とは別に、法医解剖を導入することにより、犯罪死の見逃しを防ぐ狙いがある。警察庁は厚生労働省や文部科学省と連携し、必要な法整備を図る方針。

 法医解剖の対象となるのは、犯罪による死亡かどうかが不明な死体で、警察署長が実施の要否を判断する。司法解剖に属さないため裁判官の許可状は必要としない。近親者が容疑者であるケースを視野に入れ、遺族の承諾も不要とした。

 警察が取り扱う死体のうち解剖が行われる割合(解剖率)は現在約11%だが、研究会は法医解剖の導入で解剖率を高めることを求めており、「5年程度で20%に引き上げ、将来的には50%を目指すことが望ましい」としている。

 また法医解剖の受け皿として、国の解剖機関「法医学研究所」を都道府県ごとに順次、設立することも掲げた。実現までの間は大学の法医学教室などを拠点にする。現在約170人にとどまる解剖医を計画的に増やしていくことも提言した。

 司法解剖は、犯罪性が明白か、その疑いのある死体が対象。犯罪性が認められず、死因が明らかでない場合は伝染病のまん延防止など公衆衛生を目的とする行政解剖の対象となる。しかし、監察医と呼ばれる専門医を置く一部地域を除き、行政解剖の実施は少ないのが実態だ。研究会は「犯罪死の見逃しが起こる可能性が否定できない」と指摘し、新たな解剖制度を検討していた。

 研究会には法医、刑法学者、警察庁局長らが委員として参加。昨年1月の設置以来、14回の会合を開いた。【鮎川耕史】

 【ことば】司法解剖と行政解剖 司法解剖は刑事訴訟法に基づき、犯罪死と断定されたり、犯罪死が疑われる死体に行う解剖。裁判所の鑑定処分許可状を得て捜査機関の嘱託を受けた医師が行う。行政解剖は、犯罪死を疑わせる状況はみられないが、外見から死因が特定できない死体について、検疫法や死体解剖保存法などに基づき行う解剖。原則的に遺族の承諾が必要で、大学の法医学教室などで行われる。ただし、死体解剖保存法に基づき監察医(東京23区や横浜市、名古屋市、大阪市などで導入)の下で行われる場合は遺族の同意は必要ない。

毎日新聞 2011年4月28日 10時26分

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