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中東で民主化を求める民衆のデモが広がる中、シリアで治安部隊や軍がデモ隊を弾圧し、国際的な非難を呼んでいる。3月に始まった平和的なデモの参加者に治安部隊が無差別に銃撃する[記事全文]
東北新幹線が29日、東京と新青森を結ぶ全線で運転を再開する予定だ。東北自動車道、仙台空港に続く大動脈の復活を、活発な人の行き来につなげたい。JR東日本には、停電による不[記事全文]
中東で民主化を求める民衆のデモが広がる中、シリアで治安部隊や軍がデモ隊を弾圧し、国際的な非難を呼んでいる。
3月に始まった平和的なデモの参加者に治安部隊が無差別に銃撃するなどして、これまでの市民の死者は400人以上に上る。非常に深刻な事態である。
シリアといっても日本にはなじみが薄いが、ゴラン高原をはさんでイスラエルと接し、中東和平の実現のかぎを握る国だ。同高原には自衛隊が国連平和維持活動(PKO)で駐留している。さらに東はイラク、西はレバノンに接し、それぞれに強い影響力を持つ。
アラブ世界で対米強硬姿勢をとり、イランとは友好関係を持つ。逆に米国からはイランとともにテロ支援国家に指定されている。3年前に核開発疑惑が持ち上がったこともある。
国内では、アサド大統領が属する人口の1割の少数派イスラム教アラウィ派が、秘密警察を使って、多数派のスンニ派住民を支配する強権体制である。
現アサド大統領は11年前に死んだ前アサド大統領の息子だ。共和制でありながら2代40年におよぶ権力の世襲が続く。長期政権の下でアサド一族やアラウィ派、政権に協力するキリスト教徒らが政府に保護されて経済を独占し、腐敗がはびこる。
今年に入ってチュニジア、エジプトで強権体制を倒した民衆革命が、波及したのは当然の流れだった。デモ隊は多数派のスンニ派が中心だが、クルド人などの少数派も参加している。
デモ隊は当初「民主的改革」を求めた。アサド大統領は半世紀続いた非常事態令を解いた一方で、武力行使を激化させた。デモ隊は「体制打倒」を叫ぶようになっている。
このまま政府の暴力が続けば、リビアのように反体制勢力が武器をとって、蜂起することになりかねない。そうなれば政権が倒されて、アラウィ派やキリスト教徒が排除されるか、逆に軍、治安部隊による大規模な市民虐殺となるか、悲惨な状況は避けられない。中東の秩序と安定は危機に陥るだろう。
まだ、デモ隊は武器をとっていない。アサド政権は直ちに、治安部隊や軍による民衆への武力行使をやめ、実質的な民主化を実現しなければならない。
国際社会はアサド政権の暴力を非難し、国連安全保障理事会の決議などで政治的圧力をかけつつも、平和的な事態収拾の仲介に乗り出すべきだ。日本はこれまで経済援助などを通じてシリアと友好関係を築いてきた。役割が問われる場面である。
東北新幹線が29日、東京と新青森を結ぶ全線で運転を再開する予定だ。
東北自動車道、仙台空港に続く大動脈の復活を、活発な人の行き来につなげたい。JR東日本には、停電による不安定な運行状況をぜひ解消してほしい。
東北は、これからが美しい季節。桜の名所の多くはゴールデンウイークに見頃を迎える。例年なら観光客でにぎわうが、震災後の自粛ムードが影響し、旅行客は大きく減っている。
このままでは、地域全体の元気が出てこない。人の流れをつくるアイデアが必要だ。
ボランティアをしたいが、時間はあまりない。そんな人向けに、「地球の歩き方」を発行するダイヤモンド・ビッグ社はバス泊を含む5日間の「ボランティア・パッケージ」の受け付けを始めた。
岩手県遠野市の災害ボランティアセンターが受け皿になり、沿岸部で活動する。内陸にある花巻市の温泉地のホテルや旅館に宿泊することで観光地を支援する狙いもある。旅行会社も手数料はとらない。
被災地を訪ねると、物見遊山のように思われないか。そんな心配をする人もいるだろう。
「復興作業を妨げないよう気配りさえしてもらえば、どんどん入ってきて欲しい」。そう話すのは、衆議院議員の小野寺五典さんだ。選挙区に気仙沼市や南三陸町を抱え、津波で自宅が大破した被災者である。
自分の目で惨状を見れば、支援する気持ちも強まる。また、津波が到達しなかった地区では、営業を再開した店も多い。そこで物を買い、食事をしてもらえたら、街の人は元気になる。小野寺さんはそう考える。
もちろん、むやみに写真を撮ったり、渋滞を引き起こしたりするのは論外だ。
苦しんでいるのは、被災地ばかりではない。
津波に襲われた県でも、宿泊施設によっては避難所として活用されていたり、復旧作業のための要員が泊まったりする需要がある。しかし、青森、秋田、山形の3県は、こうした需要も少ないうえ、原発事故の風評被害にも苦しんでいる。
日本に来ること自体が危ないというような国際的風評を吹き飛ばすためにも、まず日本人が率先して東北に出向く姿を見せたほうがいい。
被災地でがれきを片づけなくてもいい。肩ひじ張らず、ごく普通に東北を旅し、喫茶店でコーヒーを飲んで、地元の人と話をする。それも立派な支援活動になるだろう。