2011年4月28日11時18分
中部電力は、定期検査中の浜岡原子力発電所3号機(静岡県御前崎市)について、7月までに再稼働する前提で2012年3月期の業績見通しを決めた。28日午後、公表する。福島第一原発事故を受けて定期検査中の原発の再稼働の延期を表明した電力会社が相次いだが、中電は「計画中の津波対策を実施すれば、安全策は確保できる」として、電力需要が高まる夏を念頭に再稼働を目指す構えだ。
福島原発の事故処理が長引くなか、原発の稼働再開には地元自治体の反発が強い。このため、九州電力と北陸電力は27日に再稼働計画の業績見通しへの折り込みを見送ったばかり。中電が思惑通りに再稼働を実現できるかどうかは、なお不透明だ。
浜岡3号機は昨年11月下旬に定期検査に入り、今年4月にも再稼働する予定だった。しかし、東日本大震災の津波に伴い東京電力福島第一原発で大事故が発生したことを受けて、中電は4月中の再稼働はいったん見送った。
ただ、震災後の3月23日に発表した11年度の電力供給計画では、計3千万キロワット強の供給電力のうち3.7%を浜岡3号機が占める算定を打ち出すなど、11年度中に再稼働する方針そのものは変えていなかった。
海江田万里経済産業相の指示を受けて中電は、高さ15メートル以上の防波壁の設置や非常用発電機の屋上への設置など、総額300億円の緊急津波対策もまとめている。原子力安全・保安院は近く、対策の妥当性を評価する予定だ。
中電によると、3号機を稼働せずに電力を火力発電で補った場合、1カ月当たり30億円の損失が発生する。今回、7月までの再稼働を前提に12年3月期の業績見通しをたてたのは「再稼働を前提にしないと、逆に地元から断念したと思われ、説得がさらに難しくなる」(中電幹部)からだ。
一方、中電は原発を不安視する地元が同意するまで3号機を稼働させない方針も同時に打ち出している。静岡県の川勝平太知事は25日の会見で「対策が万全とは、現時点では言い難い」と語るなど3号機の再稼働については否定的で、今後の交渉は難航も予想される。(大月規義)
原発事故のニュースは、世界中をかけ回り、原発反対のうねりを呼び起こしつつある。選挙では、原子力政策にブレーキをかける動きもある。福島ショックは、どこまで波紋を広げるのだろうか。