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【第271回】 2011年4月21日
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小澤祥司

【福島県飯舘村・現地レポート】
持続可能な村づくりを奪われた村
――原子力災害の理不尽な実態

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国は一刻も早く避難条件の合意を

 そうした状況の中で行われたわれわれの調査だったため、結果の発表は慎重に進める必要があった。国は30km圏の線引きにこだわり、村の汚染を覆い隠そうとしているように思われた。

 ところが4月4日に調査チームのレポートが公開されると、国の動きに微妙な変化が現れた。レポートはすでに2日の段階で村に、そして村に派遣されている原子力安全・保安院職員に渡されていた。枝野官房長官は4月5日、年間被曝限度量の引き上げを示唆したが、これはこれまでのような「線量率」から予測を含めた「積算値」管理への転換を意味している。

 4月6日、村はわれわれの提案に基づき、南部の住民達の役場周辺への避難と、妊婦・乳幼児の村外への避難を決めた。その夕方、原子力安全委員会は記者会見で「村の判断は正しい」と見解を述べたという。このことは報道はされなかったが、親しい記者が私に伝えてくれた。

 さらに4月7日には菅野典雄村長が官房長官から呼び出された。そして11日になって国は飯舘村を含む圏外の地区を「計画的避難区域」に指定することを発表した。すでに放射性物質が大量に村に降下した15日夜から1ヵ月近くが経過し、村民はこの間いたずらに被曝を重ねてしまった。国はこれ以上の被曝を重ねないよう、村民への補償を含めた避難条件について一刻も早く村に提示し、合意すべきだ。村民は今、放射能への不安と今後の生活の不安、村の将来への不安という三重の不安を抱えながら暮らしているのだ。

 いま、飯舘村の山々は、軟らかい木々の芽吹きに包まれるころである。だが昨年と異なるのは、そこが目に見えない放射能に汚染されていることだ。村民は、彼らには何の責任もない原因で暮らしを仕事をそして故郷を奪われようとしている。あまりの理不尽さに、私は声を失う。(文中敬称略)

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