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【第271回】 2011年4月21日
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小澤祥司

【福島県飯舘村・現地レポート】
持続可能な村づくりを奪われた村
――原子力災害の理不尽な実態

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安全、安心を強調する国や県

 放射線による人体への影響には、一時に大量に浴びた場合の急性障害と比較的低量を浴びた場合の晩発障害とがある。原発事故により大量の放射性物質が放出された場合に、まず問題になるのは前者だ。

 急性障害に関しては、しきい値(これ以下は症状が出ないという限界値)がある。影響は器官や年齢などによって異なるが、100ミリシーベルト以下では症状は出ないとされている。しかし、低量放射線を浴び続けそれが積み重なることによって生じる晩発障害については、しきい値がないとするのがICRP(国際放射線防護委員会)の基準だ。放射線で遺伝子が傷つき、被曝量に応じて将来癌や白血病、遺伝的障害が生じるおそれあるのだ。

 事故直後から、原子力安全・保安院などが伝えていたのは、一時的な被曝量を表す「線量率(時間あたりの値)」だ。これを元に、レントゲン検査1回分程度などと「安心感」をふりまいた。しかし線量率が1マイクロシーベルト/hの土地に1年居続ければ、8760マイクロシーベルト=8.76ミリシーベルトになる。体が受けるダメージは1マイクロシーベルトではなく、8.76ミリシーベルト分だ。

 飯舘村では20日ごろまでに、自主避難を含めて半数程度の村民が村外に避難していたと見られる。しかし、原発の状況が落ち着き始めると、家や家畜が心配だったり、仕事があったりして戻ってくる人が増えた。

 そんな中、県は放射線健康リスク管理アドバイザーに就任した長崎大学の教授を村に派遣した。しかし、彼は村内の汚染状況にかなり差があることや、そこに住み続けるリスクを明確に示さず、「安全」、「直ちに健康に影響はない」と村民の前で断言して帰った。「子どもが外遊びをしても何も問題はない」とまで言い切ったという。

 放射線は目に見えない。まわりにはいつもの春と替わらぬ景色が広がっている。もとより村にはなんの責任もない。その中で、放射線医療の専門家から安全のお墨付きを与えられ、村民の間には安心感が広がってしまった。

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