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【第271回】 2011年4月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
小澤祥司

【福島県飯舘村・現地レポート】
持続可能な村づくりを奪われた村
――原子力災害の理不尽な実態

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 そのころ福島第一原発は、地震と津波によりすべての電源を喪失、危機的な状況を迎えていた。運転中の原子炉3基は緊急停止したものの、炉心や使用済み燃料の貯蔵プールを冷却できない事態に陥っていた。12日にはとうとう1号炉が、14日には3号炉が水素爆発。15日早朝には2号炉で爆発があり格納容器が損壊、さらに炉内に燃料のないはずの4号炉でも水素爆発と見られる爆発があり、建屋が吹き飛んだ。

 避難民を受け入れるどころか、村にも危険が迫っていた。15日午前には飯舘村の南東部の一部を含む20~30km圏に屋内待避勧告が出された。最大の放射性物質放出があったと見られるこの日、村には南東寄りの穏やかな風が吹いていた。そして夕方からの雨が夜半には雪に変わった。

コツコツと進めてきた
持続可能な村づくり

 飯舘村は阿武隈山地の北端にあり、なだらかな山々に囲まれた美しい村だ。平成の大合併時にも独自の道を選び、自立自給の村づくりを進めてきた。

軟らかい木々の芽吹きに満ちた飯舘村の春
Photo presented by Koji Itonaga

 東北地方の方言で「までい」という言葉がある。漢字で書くと「真手」。までいにと言えば、手間を掛ける、手を抜かないという意味になる。スローライフならぬ「までいライフ」が村づくりのキーワードだ。標高が高くたびたび冷害に見舞われてきた村では、米作中心から20年以上かけて飯舘牛というブランド肉牛を育ててきた。村内には3000頭以上の牛がいる。その餌も大半は牧草、稲わらや飼料用トウモロコシを自給する。有機農業を手掛ける篤農家も多い。至るところに「までい」精神が行き渡っている。

 私自身が村に関わったのは、こうした村づくりを支援してきた日本大学教授の糸長浩司らとの出会いがきっかけだ。村が再生可能エネルギー導入の計画を作る際に、糸長らとともに関わることになった。このとき作成したプランの一つは、2年前、村で最大のエネルギー需用者である特別養護老人ホームに、木質チップボイラーを導入するかたちで実を結んだ。燃料は村内で調達できる木材。そのボイラーがデンマーク製だったところから、デンマーク大使館から人を招いて行ったシンポジウムには、首都圏からも多くの参加者が集まった。

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