2011年04月23日 (土)

環境中に出た「放射性物質の量」まとめ (判明分)

東京電力福島第一原子力発電所からは、一体どれだけの量の放射性物質が大気中や海水中に出たのか?これまでに明らかになった放出量に関するデータを、いったんまとめます。

なお、読者の方々からの要望をうけて、内容を一部差し替えます。不十分な点は今後の課題です。あわせて最初に少し説明書きを加えておきます。(4月25日)

 

Bq(ベクレル)について  ベクレルというのは、放射能(の強さ)の単位で、1秒間に何個の原子が放射線を出して別の原子に変わっていくか、その個数を示しています。従って、この値は「放射性物質の量」を知る目安になります。ただし、原子の種類によって、半減期や崩壊するときに出る放射線(種類やエネルギー)が異なります。

ヨウ素換算について  そこで、原子力安全・保安院などでは、INES(国際原子力事象評価尺度)の評価をする際には、さまざまな放射性物質について"放射線影響としてヨウ素131と等価になるよう"換算して『総量』を算出しています。たとえばセシウム137の場合、ヨウ素換算をすると40倍の値になります。

 ※ 注 意   以下のデータには、ヨウ素換算して算出した数値」と、「ヨウ素換算せずに核種ごとの数値を単純に足し合わせた数値」の両方があり、単純に比較はできませんので注意が必要です。

以下、保安院=原子力安全・保安院  安全委=原子力安全委員会

 

▼大気への放出量 (3/11~4/05) 3.7×1017Bq(保安院試算)※ヨウ素換算値

         (3/11~4/05) 6.3×1017Bq(安全委試算)※ヨウ素換算値

※放出されたヨウ素131とセシウム137の合計です。

※チェルノブイリ事故での放出量は5.2×1018Bqと推定されています。※ヨウ素換算値

 

▼海への放出量       

(ピットからの高濃度汚染水)  4.7×1015Bq(東京電力推計)※核種データを足算

(比較的低いレベルの汚染水)  1.5×1011Bq(東京電力推計)※核種データを足算

 

※高濃度汚染水は、2号機のピットと呼ばれる施設から、4月1日~6日にかけて凡そ520トンが流出したと推定されている。濃度は、ヨウ素1315.4×106Bq/cm3)、セシウム1341.8×106 Bq/cm3)、セシウム1371.8×106 Bq/cm3)で計算した(2日16:30採取したスクリーン流入水の分析値)。

※比較的低いレベルの汚染水は、東京電力が4月4日から数日間をかけて「廃棄物集中処理施設」の9070トンと、5-6号機の地下水を集める「サブドレインピット」にあった1323トンを放出した。

  

▼原子炉にあった放射能量(14号機)

       3月11日時点  6.6×1020Bq(東京電力推計)※核種データを足算

       4月11日時点  1.1×1020Bq(東京電力推計)※核種データを足算

 

放射性物質の量は、自らの崩壊により1ヶ月間に少なくなっています。

 

 

以上の値は、1011Bqだったり1020Bqだったりして、ケタがかなり違うので、兆(1012)の単位にそろえて並べてみます。

 

 

▼大気への放出         370,000 兆ベクレル     

               ~630,000  兆ベクレル     ※ヨウ素換算値

 

▼海水への流出(高濃度汚染水)    4,700 兆ベクレル     ※核種データを足算

     (比較的低いレベル)        0.17兆ベクレル     ※核種データを足算

 

▼チェルノブイリでの放出量  5,200,000 兆ベクレル     ※ヨウ素換算値

 

▼原子炉にあった放射能量   660,000,000 兆ベクレル(3月11日)※核種データを足算

              110,000,000 兆ベクレル(4月11日)※核種データを足算

 

参考:http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/400/78612.html

ここまで。

投稿者:かぶん | 投稿時間:19:32  | カテゴリ:原発データ&用語
コメント(7) | トラックバック (0)

トラックバック

■この記事へのトラックバック一覧

※トラックバックはありません

コメント(7)

Good Job!

投稿日時:2011年04月23日 21:08 | 匿名

東京大学特任研究員の鈴木と申します。

東電の発表した4700兆ベクレルは、ヨウ素換算していない単純な足し算で、3/11換算にもなっていないため、保安院と安全委員会が発表した大気への放出やチェルノブイリでの放出量(IAEA発表)とこのままでは比較できません。保安院、安全委員会の発表やチェルノブイリの数字は、事故発生時点での換算、セシウムのヨウ素への換算の両方をした数字です。
比較するために3/11換算にして(ヨウ素を7倍)、セシウムをヨウ素換算にする(40倍にするのはIAEAの計算方法)と、57,000兆ベクレルになります。
また、ヨウ素を無視してセシウム137だけ(940兆ベクレル)で比較してもチェルノブイリ事故の1.11%、保安院発表福島空中放出量の15.4%に相当します。
なお、東電のような単純な足し算では、このベクレル数は放射性物質の放出量とはいえず、放出時点での放射能の強さしか表現していないわけです。このように異なる数字を比較することは、視聴者や閲覧者に誤解を招きかねないと思います。単位をそろえたといいますが、逆にいえば単位しかそろえていない全く異なる数字を並べていることになります。東京電力の発表の仕方にメディアもうまく利用されているともいえるかもしれませんね。
以上の内容は素人でも計算可能ではありますが、ブログのエントリーの前にプロの研究者のチェックも入れるといいと思います。内容の修正を希望します。

投稿日時:2011年04月23日 22:21 | 鈴木健

放射性物質の放出量はいまだに放出が続いている事もあり、最終的な量は今より多くなることは確実です。
しかしながら、現在の放出量も極力少なく見せようという姿勢が伺える事は問題です。
このような姿勢が国民や世界中からの不信に繋がっている事がどうして理解できないのか不思議でたまりません。
端的な例は海洋への流出量です。
まず一つ目の疑問は海洋流出が始まった時期がピットへの流出が発見された前日の4月1日からとしている点です。
おかしな理屈です。
少なくともトレンチに水が溜まっているのがわかった3月28日から計算するべきです。
既に海では高濃度放射性物質が検出されていたのですから。
もう一つは一日あたりの流出量を過小評価してないかという事です。
ピットの流出写真から瞬間流量を想定して計算すると発表よりかなり大きな値になります。
そしてその事はトレンチから復水器に700tの水を戻して下がった水位が2日間で元に戻った事からもわかると思います。
これは私見ですが、これほど直に見破られるほど浅はかな過少報告を行った理由はまじめに計算したら京の桁になってしまったので、世間の反応を恐れて無理やり兆の位になるようにこじつけたと思われます。
兆でも既にとてつもない値ですけどね。
これらの過少報告が政府の主導で行われているとしたら、もはや現政府は救いがないですね。

投稿日時:2011年04月23日 23:02 | umax10km

明確な数値、大変ありがたいです。

初歩的な質問ですが、

▼原子炉にあった放射能量(1~4号機)
3月11日時点  6.6×1020Bq(東京電力の推計)
4月11日時点  1.1×1020Bq(東京電力の推計)
この値の変化は注水の効果のおかげなのか、
それとも外部に漏れだしたためなのか、
または燃料棒の放射性物質が安定同位体に変化したためなのか
回答をお願いいたします。

また、今後原子炉、燃料プールの放射性物質量は
現状の注水→一部がピットに漏出→回収して処理施設へ
→処理施設から汚染水を浄化して再度注水
この東京電力の工程表にそって冷却が進められた場合、
いつ、どれくらいの値まで下がるのでしょうか。

平行して原子炉の補強工事も進めるそうですが、
注水作業が建屋、圧力容器の崩壊に繋がらないのでしょうか。
未確定な情報が多いでしょうが、分かる範囲内での回答を
お願いいたします。

投稿日時:2011年04月24日 01:19 | aphasia

3月11日から4月11日の間に原子炉にあった放射線量が550,000,000兆ベクレル減っているように見えるのですが、これは何かの間違えですか? それとも既に原子炉外に出てしまったということですか?

投稿日時:2011年04月24日 10:18 | 加藤 滋

先ほどコメントした者ですが、半減期を考えても少し減り過ぎていませんか? 放射性物質の内訳が分かりませんので、引き続き調べて真実を報道して下さい。 

投稿日時:2011年04月24日 10:36 | 加藤 滋

すいません、素人なので素朴な疑問がありあます。

▼チェルノブイリでの放出量 5,200,000 兆ベクレル

って、チェルノブイリの事故発生から現在までの20数年間まとめての放出量ですか?


あと、

(ピットからの高濃度汚染水)(比較的低いレベルの汚染水)

っていうのは、事故前の通常の何倍になるのでしょう?
始めて聞く単位なのでピンとこないもので・・・

投稿日時:2011年04月24日 13:42 | 匿名

コメントの投稿

ページの一番上へ▲