埼玉県立越谷北高等学校天文気象部地震研究チーム
2003年9月26日の北海道十勝沖地震で、電波による地震の前兆現象があったのか。
現在地震の前になぜ電磁波が出るかはっきりとは分かっていない。
しかし、いろいろな説は出ている。
大阪大学の池谷元伺の結晶サイズ、すなわちミニスケールモデルがある。
「界面動電現象」、あるいは「流動電位」というマクロスケールのものである。
水文水質データベース
とは国土交通省河川局で災害を最小限にする目的で観測している雨量・川の水位・ダムの貯水量・降雪量観測などのデータをインターネットで公開しているページである。
各観測点で観測したデータは地方ごとに1箇所(親局)にデータを集め、集めたデータをインターネットで配信している。
また北海道では、各観測点と親局とのデータの送受信は全て電波で行われる。
北海道以外の観測機材
北海道の観測機材
各観測所と中継局、親局はそれぞれ個々のIDを持っていて、自分のIDで送信要求が出された時のみ応答する。
何らかの原因で親局が異常なデータを受信した場合、親局は異常なデータを送信した局に対して再度送信命令を出す。
2回とも親局が異常なデータを受信したとき、欠測となる。欠測は、電波状態が悪く、ノイズの混入で元のデータにデコードできないときに起こる。
各観測所は常時親局から受信可能である。各観測所は降水や地震発生時、親局にそのイベント情報を随時送信する。
送信機と受信機は1対1通信、中継局と送受信機は2対1通信。
機械の点検時には、空欄「-」になるが、短時間である。長時間の機械点検の際は金曜日の19時から月曜日の8時までが通例である。
また、雨量観測が目的であるため、降水時は機械の点検は絶対にない。
八木アンテナの観測所 (図1)
パラボナアンテナの観測所 (図2)
水文水質データベースのトップページから、右側の｢地図からの検索｣をクリックする。
そして、｢全国図｣から北海道の雨量観測所をクリックしていき、｢任意期間雨量検索｣で、2003年の全期間の雨量データをExcelファイルに手動で出力した。
これを北海道の雨量計全ての観測点(222箇所)で繰り返し、北海道2003年の全雨量データを取得した。
2003年北海道の各観測点の雨量データを12観測点ごと、19個のファイルに月別に出力した（2003年北海道月別データ編集の様子� 法�
この後、北海道の地図に各観測点を入れていき、観測所ごとに月別の欠測数を5段階に分け、色を塗った（2003年北海道月別データ編集の様子�◆法�
各道府県の月別データからさらに地震発生3週前、2週前、1週前、1週後の4週に分け、週別にデータを作った。
（北海道総観測点週別データ）の作成
週別データで作成したデータをもとに日本地図に各観測点をあらわした。
そして、その地図上で週別データの作成のときと同じように地震の前後4週間での各観測点の欠測数を6段階に色分けしてあらわした。
また、色のついていないものは1年間欠測していない観測所。
9月5日〜10月2日の総観測点の欠測数について日付毎に集計し、グラフを作成した。
さらに天候による欠測数への影響を調べるために、同期間の帯広中心の天候をグラフ中に表示した。
過去数年以内の大規模な地震で、なおかつ全ての観測所で無線を使って観測しているため、
データを取りやすいこともあり、調べることにした。
北海道十勝沖地震の前に電波異常が発生していたことが分かった。
北海道総観測点週別データにおいて、3週間前には欠測数の異常はほとんど見られない。
しかし、二週間前になると震央から200数�匏�内一部地域の観測点に普段には無い数の欠測が目立ち始め、一週間前になると更に同範囲の欠測の程度がひどくなった。
地震から一週間たつと、欠測はほとんどなくなり、3週間前とほぼ同じ値に戻った。
また、電波異常は地震の前兆現象以外にも天候による影響（バックグラウンドノイズ）なども考えられるため、同期間において北海道の天候と降水量を調べ、総観測点日付別欠測数のグラフに表示した。
このグラフから、雨や雷による欠測では無いようだ。
欠測が多い日に注目すると、晴れている日が極めて多い。
また、地震発生後の晴れた日には欠測していないことから、天気が良い日に異常が見られるということが分かった。
さらに、この現象が9月特有のものでないことを示すために2002年9月の全ての観測点の欠測数を調べ同じようにグラフにしたが、異常は見られなかった。
よって今回の解析結果から、北海道十勝沖地震と電波には相関性があることが示された。
大規模地震で前兆現象が出たのが分かった。
それではもっと小さい規模の地震では同様に前兆が出るのか調べることにした。
北緯42.19 東経143.04 深さ52�� M5.0
7月16日、22日に欠測数がかなり高い値になっているのでこれらが先行する電波異常であったと考えられる。
地図で見ても、地震の2週前・1週前に震央近くで欠測が増えている。
よってこの地震の前兆現象はあったと考えられる。ところで、本震後の8月3日の普段では考えられない欠測はなんなのであろうか？
我々が調べた結果、8月12日6:55に青森県東方沖でM5.1の地震があった。
しかし、同規模の地震でここまで欠測数が大きく変化するのであろうか？
�⊇従〇拂Ｆ酩�M4.7の欠測数を見ても、これほど大きな変化はしていない。
1週後の地図を見ると道北地方で欠測が多いので、8月3日の欠測のほとんどは道北の欠測（機器異常）によるものを多くカウントしていたと考えられるが、その後道北に地震は発生していない。
よって、8月3日の異常は地震の前兆現象以外のものと考えられる。
北緯42.30 東経143.01 深さ100�辧�M4.7
2003年9月26日ほどグラフの顕著な変化はないが、3月1日〜3日に普段には見られない欠測の変化があった。
この変化から地震発生までに約2週間の間があるが、2003年9月26日の十勝沖地震でも2週間前から欠測数が増えているので、前兆現象の可能性がある。
北緯42.22 東経144.57 深さ33�� M5.9
このグラフ（図13）を見る限り異常は出ているようには見えない。
6月18日にやや大きな値になっているが地震後にも似たようなものが出現している。
どのような理由で前兆現象が出なかったのか分からない。
震央が沖にあり観測地から離れていたことや、規模が小さかったことなどから、はっきり現れなかったとも考えられる。
よって18日の変化が前兆現象であったのかは、不明である。
北緯41.49 東経142.40 深さ55�� M5.4
この地震の前の8月10日に欠測数が増えているが本震から期間的にだいぶかけ離れている。
また震央からの距離や、規模を考えると、地震の前兆現象による変化なのかは、不明である。
これら4つの地震を総括すると、各々それらしい変化はあったものの2003年9月26日十勝沖地震のようなはっきりとした前兆現象は見受けられなかった。
よって、小規模地震については前兆現象が現れにくいことが分かった。
その原因として、地震の規模や、震央からの距離などが考えられる。
4つとも十勝沖地震に比べマグニチュードが小さい。�６�路沖M5.9、�け魂浪�M5.4の地震の場合、震央が沖にあり観測地点から離れていた。
また、欠測数の変化から地震発生までの期間にも疑問が残る。
その他に検討すべき課題は、欠測数の変化と地震発生までの期間の問題が挙げられよう。
十勝沖地震の場合は欠測数の大きな変化があった後すぐに地震が発生したが、
�⊇従〇拂Ｆ酩�M4.7、�６�路沖M5.9、�け魂浪�M5.4の地震はそれらしい変化から地震発生までに2週間かそれ以上の時間が空いている。
これらの原因が何によるものか、今後更に北海道の他の地震と比較・検討してみたい。
北海道での小・中規模地震で、毎日のように地震の前兆現象とは異なると思われるノイズが見られた。
2003年3月16日の地震ではそのノイズのレベルが特に大きいはどうしてだろうか。
その原因を季節的変化ではないかと考えた我々は各月で欠測数がどのような変化をするのかを調べることにした。
北海道の月別欠測総数グラフ（図16）を見ると、全体的な欠測数が季節によって大きく異なることに気が付く。夏は欠測数が少なく、冬には増加している。
冬季に地震の前兆現象以外の欠測（バックグラウンドノイズ）が多いのは降雪による影響ではないかと考えている。
北海道では大地震の前に前兆現象があることが分かった。
それでは、他地域で同様な現象は発生するのだろうか。
我々は2003年7月26日の宮城県沖地震と2004年9月5日の紀伊半島沖地震について調べることにした。
北緯38.24 東経141.10 深さ12Kｍ M6.4
3週前（図20−1）、1週前（図20−3）に多少の欠測数の増加が見受けられたが、北海道十勝沖ほど顕著な結果は得られなかった。
これは規模の違いによるものだろう。また、欠測をしている観測点に注目してみると、奥羽山脈に多いようである。
その地域では70MHzの観測機材を使用しているので、この影響が出たのだと思われる。
北緯33.9 東経137.9 深さ44Km M7.4
紀伊半島では、特に前兆現象と見られる結果は出なかった。
その理由として考えられるのは、観測点が震源から離れていて沖にあることや、陸地の沿岸部に観測点が少ないことが挙げられる。
また、400MHz帯を使用している観測点があるので、前兆現象を検出できなかったのかもしれない。
このことから、大地震でも必ず欠測が起こるわけではないことがわかった。
今回の研究を通して、次のことが分かった。
(1) 大規模な地震については、地震発生の1〜2週間前に強い異常電波の放射があることが一般的である。
以上のことから、雨量データの送信に欠測があるかどうかをモニターすることで、大地震の予知につながる可能性がある。
兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)をはじめ、巷では｢地震の前兆現象があるのでは？｣と騒がれている。
実際大地震の前に地震雲をはじめ、ラジオが聞けなくなるという事例などが多数報告されている。
我々の研究から、大地震の前には電波が乱されるということが確認された。
これは行徳高校行徳データをはじめ、他の研究者も確認している。
しかし、我々の研究のように大地震の前に同じ期間でこれほどまでたくさんの観測点で電波異常を調べる研究は他の研究にはおそらく無いであろう。
もともと台風、豪雪、洪水などに対する防災が目的で始まった水文水質データベースだが、今後、水文水質データベースの欠測数をリアルタイムで表示できるシステムが確立すれば、大地震の前の電波異常を捕らえることができるかもしれない。
そうなれば数十年後、地震予測情報が報道される日が来るかもしれない。
今後は、地下構造と欠測地域の関係性の有無、晴れた日の欠測数の変化、地震の深さや地震のメカニズムによる欠測数の違い(海溝型、直下型の違いなど)について研究していきたい。
そしてさらに、水文水質データベースの欠測数から、過去の地震ではなく将来の大地震予測システムの確立も目指したい。
また、手作業でのデータ処理は大変な時間がかかるので、自動で全国の雨量観測所の欠測数を集計できるコンピュータのプログラムも作りたい。
この研究を行うにあたり、千葉県立行徳高等学校自然科学部の福島毅先生、新興技術研究所の松永昌太氏、S氏、K氏、植物生体電位観測の斉藤好晴氏にはたくさんの指導を頂きました。
また、国土交通省の方々にはテレメーターの仕組み等を教えて頂き大変お世話になりました。
この場を借りて、感謝の意を表します。
｢地震予知はできる｣ 上田誠也著
☆★ 第48回日本学生科学賞全国展進出作品 ★☆
地震と電波の知られざる関係
(ついに地震予知成功の日は来るのか？？？？)
(長本裕樹 巻幡朋寛 古川真理江 岩本恵 大島裕子 高橋宗彦)
１ はじめと研究の目的
我々は、地震の前兆現象に対して強く興味を持っていた。
2004年6月、以前から地震の前兆現象を観測･研究している千葉県立行徳高校の福島毅先生、植物生体電位観測の斉藤好晴氏、
新興技術研究所の松永晶太氏やその他行徳高校ネット部員数名で話し合いの場があった。
その中で、｢北海道十勝沖地震の前に、国土交通省で運営している雨量計のデータがおかしい。
電波で雨量データを飛ばしているのだが、故障でもないのに頻繁に欠測している｣との話が出た。
｢もしこれが地震の前兆だとしたら･･･｣ そう考えた我々は、地震と電波の相関性について突き止めるためにこの研究を始めた。
２ 研究の目的
規模が、小さくなると前兆の現れ方は変化するのか。
他地域の大地震では同様に前兆現象が発生したのか。
３ 地震の前に電磁波が起こる仕組み
文献(「地震予知はできる」)によると次のような説が紹介されている。
モデル2
４ 国土交通省観測システム（水文水質データベース）
�� 水文水質データベースについて
�� 水文水質データベースのデータ送信機・受信機について
周波数
70MHzと400MHzとGHz帯域が混在(比率約8:1:1)
電波出力
1W･3W･5W･10Wが混在(主に3W以下で、通信可能な最小出力を使用、一部中継局を使用)
アンテナ
MHz帯域は八木アンテナ(ほとんどが3素子アンテナ)（図1）。GHz帯域はパラボナアンテナ（図2）。
備考
山間部では主に70MHz帯域を使用する。
また電波出力は通信可能な最小出力で送受信する。
都市部付近では生活ノイズが多いため、400MHz･GHz帯域を使用し、電波出力も余裕を持たせている。
400MHz帯域、GHz帯域では、まず欠測は出ない。
周波数
70MHzと400MHzが混在(比率約9:1)
電波出力
1W･3W･5W･10Wが混在(主に3W以下で、一部中継局を使用)
送信可能範囲
70MHz 20〜30Km
400MHz 20Km以内
アンテナ
八木アンテナ(ほとんどが3素子アンテナ・垂直偏波で送受信する)（図1）
備考
山間部では主に70MHz帯域を使用する。また電波出力は通信可能な最小出力で送受信する。
都市部付近では生活ノイズが多いため、400MHzを使用し、電波出力も余裕を持たせている。
※デコード ：エンコードによって暗号化されたデータを元の状態に戻すこと。
※エンコード：データを一定の規則に基づいて符号化すること。
５ データ処理
�� 水文水質データベースのデータ取得
国土交通省水文水質データベースのトップページ (図3)
水文水質データベースのデータ取得の様子 (図4)
（インターネットで2003年北海道の全雨量観測点のデータを左上のExcelファイルに貼り付けをした。）
�� 各観測点のデータから北海道月別データの作成
2003年北海道月別データ編集の様子 (図5)
�� 北海道月別データから地震直前･地震直後の北海道週別データ作成
�� 北海道週別データから北海道全観測点における週別データ
�� 日別の欠測数と天気との相関グラフ
６ 北海道十勝沖
2003年9月26日 十勝沖地震
北緯41度46分 東経144度4分 深さ45Km M8.0
雨量観測所総数
241箇所(233箇所を使用)
データ取得日時
2002年6月1日〜2004年5月31日
週別データ取得日時
3週前 9月 5日〜9月11日
2週前 9月12日〜9月18日
1週前 9月19日〜9月25日
1週後 9月26日〜10月2日
結果
７ 小・中規模地震でも前兆が起こったのだろうか？
� �2002年7月28日 十勝支庁南部
雨量観測所総数
241箇所(233箇所を使用)
データ取得日時
2002年6月1日〜2004年5月31日
週別データ取得日時
3週前 7月7日〜7月13日
2週前 7月14日〜7月20日
1週前 7月21日〜7月27日
1週後 7月28日〜8月3日
結果
�◆�2003年3月16日 十勝支庁南部
雨量観測所総数
241箇所(233箇所を使用)
データ取得日時
2002年6月1日〜2004年5月31日
週別データ取得日時
3週前 2月23日〜3月 1日
2週前 3月 2日〜3月 8日
1週前 3月 9日〜3月15日
1週後 3月16日 〜3月22日
結果
�� 2003年7月3日 釧路沖
雨量観測所総数
241箇所(233箇所を使用)
データ取得日時
2003年1月1日〜2003年12月31日
週別データ取得日時
3週前 6月12日〜6月18日
2週前 6月19日〜6月25日
1週前 6月26日〜7月 2日
1週後 7月3日 〜7月 9日
結果
�ぁ�2003年8月30日 浦河沖
雨量観測所総数
241箇所(233箇所を使用)
データ取得日時
2002年6月1日〜2004年5月31日
週別データ取得日時
3週前 8月9日 〜8月15日
2週前 8月16日〜8月22日
1週前 8月23日〜8月29日
1週後 8月30日〜9月5日
結果
★小規模地震のまとめ★
８ 月別欠測総数について
９ その他の大規模地震
2003年7月26日 宮城県沖地震
雨量観測所総数
442箇所
データ取得日時
2003年1月1日〜2003年12月31日
週別データ取得日時
3週前 7月5日 〜7月11日
2週前 7月12日〜7月18日
1週前 7月19日〜7月25日
1週後 7月26日〜8月 1日
結果
2004年9月5日 紀伊半島沖・東海道沖地震
雨量観測所総数
517箇所
データ取得日時
2003年9月1日〜2004年9月30日
週別データ取得日時
3週前 8月15日〜8月21日
2週前 8月22日〜8月28日
1週前 8月29日〜9月 4日
1週後 9月 5日〜9月11日
結果
１０ まとめ
(2) 小・中規模の地震については、季節変化などによるバックグラウンドノイズや震央からの距離によって、雨量データの送信の欠測数が有意な結果にならないことがある。
１１ 今後の課題
１２ 謝辞
参考文献
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