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福島第1原発:周辺小中23校、再開断念 児童・生徒離散

震災後、楢葉中に届いた249人分の生徒手帳。学校再開のめどがたたず、段ボールの中で眠っている=福島県会津美里町で、河津啓介撮影
震災後、楢葉中に届いた249人分の生徒手帳。学校再開のめどがたたず、段ボールの中で眠っている=福島県会津美里町で、河津啓介撮影

 福島第1原発事故の影響で休校になっていた周辺地域の小中学校54校のうち、23校が新学期中の再開断念に追い込まれたことが福島県教委の調査で分かった。特に半径20キロ圏を立ち入り禁止とする警戒区域にある25校の約7割で学校単位の移転ができず、児童生徒が個別に避難先の学校へ転入する事態になった。子供同士の絆が断たれてしまいかねない状況に、学校関係者から懸念の声が上がっている。

 第1原発周辺では、警戒区域以外にも▽高い累積放射線量が予想されるエリアが「計画的避難区域」▽20~30キロ圏のうち累積放射線量は高くないが、緊急時に屋内退避などを求めるエリアが「緊急時避難準備区域」に指定され、法律上、この3区域内の学校は休校しなければならない。休校は12市町村の小中学校54校に及び、児童生徒約1万2000人が影響を受けた。

 県教委によると、54校のうち、学校単位で移転できたのは警戒区域の25校中8校、計画的避難区域の10校中6校、緊急時避難準備区域の19校中17校。これらの31校は移転先の廃校を利用して臨時分校を設置したり、現存する学校の空き教室を間借りするなどして、学校再開にこぎつけた。

 残る23校は再開のめどがたたないまま、児童生徒が分散して区域外や県外の避難先にある学校に転入したとみられ、一時的とはいえ学校が消滅した状態だ。このため県教委は5月初旬から順次、23校の教職員を教え子が比較的多く転校した学校に配置する措置をとる。立場は元の学校との兼務扱いとする。

 県教委担当者は「(教職員を兼務扱いとしたのは)教員の肩書だけでも学校名を残したいという措置。子供たちの心の安定にかかわる問題なので憂慮しているが、原発事故が収束しない中で見通しが全く立たず、子供たちに申し訳ない。仮設住宅建設などで地域住民がまとまって暮らすようになれば、学校再開の可能性が出てくるはずだ」と話している。【河津啓介、荻野公一】

毎日新聞 2011年4月28日 2時36分(最終更新 4月28日 3時07分)

 

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