【山崎解説・問われる原発の耐震性】
昨夜の地震による停電の影響で、青森県から茨城県にかけての太平洋側の原子力関連施設では、一部で外部電源が使えなくなるなどの影響が出ました。今後も懸念される余震に対し原発の安全性は万全なのでしょうか。
山崎記者に聞きます。
山崎記者:
福島第一原発はいろいろな設備がすでに大きなダメージを受けており、
仮の設備で何とか原子炉を冷やしている状況。
すでにいろいろな亀裂、漏れがあることを考えると、また汚染水が漏れる可能性もある。
そのリスクを念頭に予断を持たず、様々なバックアップを用意しておく必要があります。
昨夜の地震ではその他の原子力発電所でも影響が出たところがあったが、
そもそも非常用ディーゼル発電が起動するということ自体、平常時なら大変なニュースです。
今後の余震は、東北から関東にかけての広い範囲で起きる可能性があるといわれています。
ほかの発電所でも余震に警戒を強める必要があることはもちろんですが、
発電所の耐震性に関連して、今回の福島第一原発の事故で新たなことがわかりました。
(ニュース原稿はブログ記事の文末をお読みください。)
ポイントは福島第一原発の1号機は、2,3号機に比べて
原子炉の状況が悪化するスピードが非常に速く、
数時間で燃料を冷やす水が減り、圧力が急激に変化していたことがわかったのです。
上の図をご覧ください。
原子炉は、燃料の入った圧力容器と、それをまもる格納容器などで
構成されています。
圧力容器のなかの水位は、燃料をすっぽり覆っていなければならないのですが、
この水位が地震発生後、数時間で下がり、さらに燃料の入った圧力容器内の圧力が減って、
かわりに格納容器内の圧力があがったことが資料からわかりました。
これが何を意味するかというと、圧力容器のどこかに漏れがあり、
中の圧力が格納容器内ににげたことが可能性として考えられます。
そしてこの段階では津波ではなく、地震の揺れで影響を受けた可能性があります。
これまで日本の発電所は、地震の揺れについては耐震指針をもとに
万全を期していたと説明していました。
しかし今回、揺れによる影響が1号機にあったなら、この耐震指針が
万全だったのかどうかをあらためて検証しなければいけません。
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ニュース記事:
1号機 震災の夜に燃料露出直前
4月8日 7時17分
東京電力、福島第一原子力発電所の事故で、1号機では、先月11日の地震当日の夜までに原子炉の水が核燃料が露出する直前まで減り、安全のために最も大切な「冷やす機能」を十分に保てなかったことが、NHKが入手した資料で分かりました。
専門家は「その後さらに水が減り、核燃料が露出したことで、地震の翌日という早い段階で水素爆発が起きたのではないか」と指摘しています。
NHKが入手した資料には、地震当日の先月11日に福島第一原発の1号機から3号機で測定された原子炉の「水の高さ」や「圧力」などの値が示されています。これまでは地震の翌日以降の値しか公表してきませんでした。
資料によりますと、1号機では、地震発生から7時間近くたった午後9時半に、原子炉の中で核燃料が露出するまでの水の高さが残り45センチとなり、通常の10分の1程度に減っていたことが分かりました。
1号機から3号機では、地震と津波によってすべての電源が失われ、2号機と3号機では非常用の装置で原子炉を冷やし、水の高さが4メートル前後に維持されていました。
これに対し1号機では、地震当日の夜までに、すでに安全のために最も大切な「冷やす機能」を十分に保てなかったことになります。また核燃料が水から露出するまで、2号機と3号機では、地震から1日半から3日程度かかっているのに対し、1号機では18時間ほどしかありませんでした。
東京大学の関村直人教授は「1号機では、『冷やす機能』が維持できなくなったあと、さらに水が減り核燃料が露出したことで、地震の翌日という早い段階で水素爆発が起きたのではないか」と指摘しています。一方、東京電力は「調査はこれからで詳しいことは分からない」と話しています。
投稿者:かぶん | 投稿時間:15:13
| カテゴリ:取材エピソード
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コメント(4)
かぶんのみなさま、
おつかれさまです。
毎日、毎日次から次へと放出される新しい問題に
ご丁寧に対応してくださって、
ありがとうございます。
今朝のニュースは見逃してしまったので、大変ありがたいです。
今思えば、
当初、圧力容器と格納容器のひょうたんのような図から始まった
原発事故処理の説明も、毎回一つ一つパーツが増えていき、
とうとう、海を含む敷地全体まで模型ができてしまいました。
昨晩の余震後の東電の記者会見を見て、
素人ながらも、「プラントはもういたるところボロボロなんだな~」という印象をうけました。
また、東電の方々も数字を細かく検証する時間もないのだろうと思いました。
今回このブログを読ませていただいて、
原発の現場の方は、当初から大変な状況だと認識されていたにもかかわらず、
原発の安全性に絶対的な信頼をおいていた上層部、また、保安院の方々が、現場の方のヒアリングより、マニュアルや計器の数字しか見ていなかったように感じました。
隠蔽という言い方をするより、
「そんなはずはない」と思って深刻な状況をみすごし、結果、隠蔽になったのではないでしょうか。
それを思うと、地震直後に点検に入られて、お亡くなりになった2名の若い東電の社員の方は、本当に真摯に対応してくださったのだと思うと、涙が出てきてしまいます。
水素爆発をした後あたりで、
水野解説委員が解説をされながら、
情報の少なさにイライラされているのもわかりました。
今後は政府が国民と世界各国に対して
真摯で誠実な対応をしてくれることを「祈る」しかないと思っています。
今後の電力不足についても、政府は、
国民や企業にお願いばかりするのではなく、
東電の企業努力をもっと促してもよいのではないのでしょうか。
東電の会見で、電力不足対策は計画停電と節電を前提に動いていてギモンを感じずにはいられませんでした。
国民主権が日本にきちんと機能してほしいと思います。
これからも、
真摯で誠実な番組をどうぞよろしくお願いします。
投稿日時:2011年04月08日 17:45 | kaori
だんだん、色々なことが観測して分かるようになってきたのであって、事態が悪化したわけではない。非常用ディーゼル発電機が動作したのは正常動作であって、大きなニュースになるのでしょうか。ではなぜ、病院や大学や工場では非常用ディーゼル発電機を備えているのでしょうか。NHKではパソコンにUPSを付けていないのでしょうか。UPSが動作しても大きなニュースになるのでしょうか。原発の周りの家は津波でどうなっているのでしょうか。原発の建物が立派に残っているのではないでしょうか。想定以上の地震や津波に堪えているのではないでしょうか。建物は地震学者の見積もりに対応して、建設されているので、地震学者が想定外と言う地震にたいして、誰も地震学者が逃げていると非難しないではないですか。
地震の揺れによって原子炉が壊れたことにしたいようですが、二次冷却水の海水が津波(の引き波)によって取水できなくなったことが、1次要因だとは考えないのでしょうか。
原子炉の内部の沸騰水を一次冷却水で熱交換して、発電機を動かし、その一次冷却水を二次冷却水で冷やす仕組みのはずです。
また、地震の加速度ですが、1 Galは重力加速度の980分の1です。車のエンジンルーム内の加速度は8800 Galと言われています。トラック輸送中の荷物の受ける加速度も3000 Galはあると言われています。トラック輸送に耐える原子炉の容器がその1/6程度の加速度で壊れるものでしょうか。地震の揺れではなく、ずれによって配管などが破損したと考えるほうが理にかなっています。
技術立国日本なのですから、NHKさんも理学的に物事をとらえ、理解できなければ、まずいのではないでしょうか。
投稿日時:2011年04月08日 17:50 | 星野勉
かぶんの記者さん達も“記者クラブ”の住人なんだろうなと思っていました。
でもこのニュースを聞いて嬉しかったです。
さすがオタクの集団...ですね。
応援しています!
投稿日時:2011年04月08日 19:14 | せっちゃん
素晴らしい!良くぞ表に出してくれました。
当時作業していた方が、ひどい揺れがきて、水がザーッと落ちてきたと話していましたが。やはり地震直後に相当のダメージがあったはずです。
なのに、東電は津波が今回の冷却機能不全のメインの理由だとしています。
東電の説明には視聴者は納得していません。
いろいろな圧力や批判もあるでしょうが、私どもは真実が知りたいのです。山崎さんがんばってください。
投稿日時:2011年04月08日 21:25 | みなとさくら