1メートル80を超える長身としょう油顔の甘いマスクで、主婦層に人気だった昼ドラの顔が逝った。
警視庁池上署などによると、田中さんはテレビ朝日系2時間ドラマ「土曜ワイド劇場『法医学教室の事件ファイル』シリーズ」の収録のため、25日午前11時半に都内の撮影現場に入る予定だった。が、田中さんは姿を現わさず、電話も不通に。
心配したマネジャーが、大田区下丸子の田中さんの自宅マンションに急行。駆けつけた田中さんの母親とともに、午後3時半ごろ、窓際で自分のマフラーで首をつる田中さんを発見した。
都内の病院に救急搬送されたが、同4時20分に死亡が確認された。池上署では自殺とみて捜査している。目撃した住民は「担架で運ばれる田中さんの顔面は真っ青で、パート先から駆けつけた田中さんの妻は泣き崩れていました」と語った。
昨年12月から所属するオスカープロモーションによると、前夜マネジャーと電話で仕事の打ち合わせをしているが、悩んでいる様子はなく、現場にも遺書らしきものは残されていなかった。
田中さんは新たな環境を求めて知人の紹介で大手プロの同社に移籍し、日本テレビ系「デカワンコ」などドラマに相次ぎ出演。出演予定のものも2、3本あり、半年先までスケジュールは埋まっていた。本業以外にも同社で若手俳優の演技指導にあたり、関係者に「以前よりも仕事が増えた」と話すなど、周囲からは順調そのものにみえた。
その一方で、俳優仲間から「マジメで実直」と評される田中さんが苦悩をみせることもあった。仲のよかった俳優によると、折からの不況で2時間ドラマや昼ドラ枠をテレビ各局が削っている現状を危惧し、将来への不安を口にしていた。4月11日付ブログでは「下を向いて考える時はどこか気持ちが沈んでいるような…」などと綴り、沈鬱な心情を吐露していた。
私生活では約2年の交際を実らせ、93年に3歳年上の一般女性と結婚。近所では「夫婦仲がよく、子供の送迎に自ら出向く子煩悩な人」として知られていた。高校2年の長男や、幼稚園から高校まで一貫教育の都内の名門私立中学2年の長女の教育にも熱心だったという。田中さんを追いつめたのは、将来への不安だったのか…。
(紙面から)