きょうの社説 2011年4月27日

◎地域防災計画 見直すなら隣県連携強化を
 東日本大震災を受け、自治体の地域防災計画も抜本的な修正を迫られている。石川、富 山県は事務レベルで防災計画を見直す作業に着手したが、大震災から学び取る教訓は山ほどある。津波の壊滅的な被害や、原発事故に伴う避難区域の広がりをみれば、従来の県単位の取り組みに限界があるのは明らかである。

 現行の地域防災計画は、隣県なども同時に被災するような大規模災害への対応は十分と は言い難い。災害の広域化を想定すれば広域連携は一層重要になる。これから本格化する防災計画の見直し作業では、災害時の協力体制の構築や、隣県同士の被害想定のすり合わせなども大事なテーマだ。

 原発事故対応では、国の原子力防災指針に基づき、防災対策の重点実施地域(EPZ) は半径10キロである。このため、石川県の避難対象も志賀町と七尾市の一部にとどまっている。だが、福島の事故では、避難指示区域が20キロ、屋内退避指示は30キロに広がり、警戒区域や計画的避難区域についての考え方もめまぐるしく変わった。

 志賀原発に当てはめると、半径20キロでは石川の7市町、30キロでは富山県氷見市 なども含まれる。事故の長期化も想定すれば、避難手順だけでなく、住民の受け入れなどでも両県の調整が必要になる。

 津波にしても大規模なものを想定すれば、石川、富山両県、とりわけ能登内浦から富山 湾沿岸はまさに運命共同体である。自治体がバラバラに津波の高さを想定していては協力の土台も築きにくい。「広域防災」の視点で、予測に必要な科学データなどは積極的に共有すればいい。

 県の地域防災計画は国の防災計画をベースに策定されている。石川、富山県は原子力災 害の新たな指針を国に求めているが、京都府はすでに関西電力高浜原発に関して、EPZを半径20キロに拡大する方針を決めている。

 国の指針が明確にならないと見定めにくい部分があり、計画見直しは手探りの面もある が、それでも県が主体的に判断できる分野は少なくないはずだ。県の方向性が見えないと市町村も計画をつくりにくい。できるところから速やかに議論を始めてほしい。

◎サマータイム制 導入は各企業の判断で
 東日本大震災で心配される夏場の電力不足対策の一つとして、大手電機メーカーのパナ ソニックやソニー、東京証券取引所などが相次いで就業時間を早める「サマータイム」を導入する方針を打ち出している。政府はこうした企業の動きを歓迎しながらも、国全体の制度としてのサマータイム導入には慎重である。一見、中途半端で煮え切らない政府の対応はやむを得ない。

 国際的に普及しているサマータイム(夏時間制)は、夏場だけ時計の針を標準時より1 〜2時間進める制度である。他の季節より長い昼間の時間を有効活用することで照明などの節電ができ、勤務後も明るいので余暇活動などが活発になるという理屈である。

 省エネ・温暖化防止策として注目され、超党派の推進議員連盟も設立された。が、実際 に導入するとなると、コンピューターのプログラムや公共交通機関のダイヤ変更など手間もコストもかかる上、かえって残業時間が増える懸念も指摘され、政府の最終判断を下せない状況が続いている。

 こうした経緯から、大震災で国民の心が一つになり、現実問題として企業や家庭の使用 電力の削減が避けられない今こそ、サマータイム制の導入に踏み切る好機という声が聞かれる。しかし、国の制度としてサマータイム制を一律に実施するには、やはり国民的な合意と準備期間が必要である。

 大震災で東京電力と東北電力の電力供給力が低下した東日本と、電力不足の心配のない 西日本では事情がまったく異なる。節電で足並みをそろえなければならないわけではなく、準備に必要な時間も十分とれない状況では、サマータイム制導入の判断は個々の企業にゆだねるほかない。

 企業の勤務時間や形態の変更による節電対策としては、サマータイム制よりも、休日の 分散取得の方がより効果的という民間の試算結果も出されている。サマータイム制による始業時間の繰り上げだけでなく、夏休みの拡大や休業日の振り替えなど、さまざまな対策の組み合わせによって節電効果を高める工夫が望まれる。