きょうのコラム「時鐘」 2011年4月27日

 来月に技量審査場所を迎える大相撲は、賜杯も懸賞金もテレビ中継もない。横綱白鵬が「優勝しない方がいいかな」とつぶやいた。無論、冗談である

勝負師はめったに本音を明かさない。隙を見せると負ける。元大関出島から珍しく本音を聞いたことがある。豪快な押しが身上で、勝っても負けても土俵下に転落した。「怖いっス。本当は」

怖さを隠し、「出る出る、出島」の闘志をむき出しにした相撲が、かっさいを浴びた。包み隠した方がいい本音もある。八百長問題は徹底的にウミを出す、と協会役員は言う。建前を貫けば、本場所は遠ざかる。別に本音が隠れているだろう

震災の義援金配分も、似ている。公平・平等という建前を振りかざし、配分がもどかしいほど進まない。面倒な仕事は後回しという本音が「公平」の裏に隠れてはいないか。そう勘繰りたくもなってくる

物事には潮時がある。万人を納得させる「徹底的」「公平」があるはずもない。「やる気ないな」という横綱のつぶやきは、そんな建前の限界を見抜いたからか。そうだとしたら、土俵の外でもなかなかのクセモノである。