経済産業省原子力安全・保安院は9日、外部電源の喪失に備え原子力発電所に常時2台以上の非常用ディーゼル発電機を確保するよう電力各社に保安規定の変更を指示した。これまでは運転中の原発では2台、炉内の温度が100度未満の「冷温停止状態」では1台の確保を義務付けていた。保安院は今後も原発の安全対策を抜本的に見直す方針だ。
7日に最大震度6強を記録した東日本大震災の余震のために、東北電力東通(ひがしどおり)原発(青森県)では2系統あった外部からの送電が停止した。
直後に非常用ディーゼル発電機1台が起動し、8日午前3時半に外部電源1系統が復旧した。ところが同午後2時前、運転中の非常用ディーゼル発電機から軽油が漏れ出し故障。別の2台は定期検査で使えず、全3台が使用不能となった。東北電力女川原発(宮城県)でも、2台の非常用ディーゼル発電機のうち1台が故障中だった。
今後、非常用ディーゼル発電機の用意が不十分なまま再び大きな地震に見舞われ、外部電源が遮断されると、原子炉などの冷却機能が損なわれかねない。現在では、東通原発の非常用ディーゼル発電機は復旧した。女川原発でも8日夕までに外部からの電源が回復し原子炉と燃料プールの冷却を継続している。
しかし、保安院は一連の事態を重視し、「冷温停止状態」であっても2台以上が作動可能となるよう、各社に保安規定の変更を求めた。西山英彦審議官は「原発は(放射性物質が漏えいしないよう格納容器など)五重の壁があり、絶対大丈夫だと思ってきたが、こういう事態になった。今回の経験を踏まえ、すべてのことを見直す必要がある」と述べ、これまでの規制に甘さがあったことを認めた。【関東晋慈】
毎日新聞 2011年4月9日 20時25分