窮地からの生還から絶望
『ガァア゛アァア゛アア゛ア゛ア゛ア゛!!!』
「がぁ・・・!?」
ニックは目の前の光景が信じられない。
ほんの数瞬前まで死の具現にも思えていたメタルスネークが、何かに噛み付かれて苦しんでいる。
痛みに苦しんでいても頭は働いているらしく、その何かのおかげで喰われることはなかったのだと思い至った。
もちろん無傷とはいかず、左腕は血で染まっていて重症だが、絶体絶命の状態から生き延びられたのだから行幸と言うべきだろう。痛いことに変わりはないが。
『ガァア゛アァア゛アア゛ア゛ア゛ア゛!!!』
しかし、危機が去ったわけではない。
メタルスネークを苦しめるほどの何かが目の前にいるのだから。
「くぅ・・あぁ・・・あ!」
なら、今の俺にできることは痛みになれ、二体の猛獣の戦いに巻き込まれる前にこの場を一刻も早く逃げなくてはいけない。
絶対の死からほんの一時とはいえ逃れられたことで恐怖感が麻痺し、死を傍らにしたことで極限まで集中力が発揮されて走馬灯のように体感時間が引き延ばされたニックは、数秒もたたないうちにその考えを弾きだした。
「ばっはっは!運のいい奴ですな!」
今起こった一部始終を見物していた所長が笑う。
「うむ、ほぼ絶対の死から逃れるとはな・・・確かに運はいいようだ」
副会長もニックの運のよさを認める。
命を危険にさらす美食屋にとって運とは生き延びる上で重要なことなので、運のあるニックを素直に認めた。
しかし、「運は運でも・・・悪運かもしれんがな」
本当に運があるかは生き延びてこそのものだ。副会長はまだ評価を下すには早いと判断した。
「まあそうですな。それにしても・・・」
所長は副会長の言葉を肯定し、ニックのいる現場を見た。
「う・ぎぃ・・!!」
『ガァア゛アァ・・・ア゛アァ゛』
このままいけばもうすぐこちらに気づくだろう。
急がなくてはいけない。周りから聞こえてくるメタルスネークの鳴き声に力がなくなっている。
おそらく死にかけているのだろう。早くこの場を離れなくては、メタルスネークより強い奴と対峙しなければならない。
そうなっては絶望的だ。
「よく連れて来れたもんですな」
「ああ、かなりの腕利きに任せたからな。あのレベルなら何とでもなるだろう」
「にしても、メタルスネークといい奴といい・・・ガキには手に余るのでは?」
「そうだな・・・しかし、この状況を生き残れれば掘り出し物と言えるだろう?」
「ばっはっは!それもそうですな!確かに」
状況を確認する前に一瞬でも早く逃げなくてはいけないので体を即座に反転させる。
しかし
『ガァ゛ア゛アァ゛ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛!!!』
--ズゥウウン!!
「っと!」
反転した瞬間メタルスネークの断末魔の叫びが聞こえ、食いちぎられた体の一部が偶然にも目の前に落ち、ニックの逃げ道をふさぐ。
「くっそ・・・!」
『ギュアァアアア!』
急いで進路を変えて再び逃げようとしたが、聞こえてきた雄叫びがニックの足を止める。
ニックは直感する。このまま逃げたら確実に後ろから喰われる、と。
恐る恐る振り返っている暇はないので、敵の姿を確認するべく高速で振り返っていた。
しかし
「なっ」
相手の姿を確認したニックの思考がほんの一瞬だが止まる。
こんな所にいるはずがない。何で?ありえない。
あまりのことに現実逃避をしたが、現実は変わらない。
あまりに巨大な体躯。恐竜のような鱗。8本の足。体の線に沿って生えている牙や角のような突起、口の中には蛭。
どれをとっても、ニックの読んで見たことがある猛獣だ。
「ガララワニ!!」
「あのガララワニから生き延びられれば掘り出し物でしょう」
『ギュアアァアアアァアアアアア!!!』
原作にて最もはじめに出てきた猛獣、バロン諸島の王者、ガララワニがそこにいた。
同じトリコ書いている方の意見が聞きたいと思いました。
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