2011年3月27日3時11分
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岩手県は、疎開先として県内120施設で約9500人分の部屋を確保した。今回第1陣となった釜石市、大槌町、山田町で約1万7千人が避難所の学校などに身を寄せるが、3市町の疎開希望者は460人にとどまっている。
県の現場担当者は「気兼ねや不安から移動を言い出せない人が多い」とみる。「避難所の中には、自治組織が『出て行ったヤツは、戻ってこないでくれ』と明確にしているところもある」という。
県の狙いは、まずはお年寄りや妊婦、体調を崩した人たちに危険な状態から脱してもらうことにある。体調に不安のある家族が疎開すれば、残った人たちが安心して復旧作業に取り組むこともできる。
しかし、その目的は被災者に正しく伝わっていない。
釜石市の市民体育館では24日午後、県庁の担当者が疎開の申込書を配って、拡声機で説明。費用は県が支払う▽行き先は内陸部▽期間は仮設住宅ができるまで――といった内容だけで、約15分で終了した。被災者からはほとんど質問も出なかった。
県の性急な説明に加え、特にお年寄りには、自分だけが恵まれた環境に移ることへの抵抗感が強い。89歳の母と妻の3人で避難所生活を送っている漁業の男性(69)は「おれだけ盛岡に行ったら、逃げたみたいな感じになる」。母と妻だけでも、疎開させようか悩んでいる。(赤井陽介、小俣勇貴、吉永岳央)