イー・ウーマン（ewoman）

商業捕鯨ってビジネス的にどう？（星野スミレ・東京都・40）

商業捕鯨をやりたい会社って、いま日本にあるのでしょうか？　捕鯨文化の保存や伝承という面においては捕鯨に賛成です。日本の捕鯨は、かつての欧米みたいに爆薬でどかーんと大量に殺しちゃうむちゃくちゃな捕鯨とは根本的に異なります。ですが、実際問題、「商業捕鯨が解禁されたら是非参入したいです」って言ってくれる日本の企業はあるんでしょうか。もし誰も手を挙げなかったら、商業捕鯨やりましょうってことになっても現実的に難しいのでは？

調査捕鯨という呼び方が（ＥＮＺＯ・東京都・21）

「調査捕鯨」という呼び方をまず見直すことが必要ではないでしょうか。調査という目的だけではないことは明らかなので、そのことを捕る側が認めないと議論が進まない。認めた上で「捕鯨」の議論をするのが適切かと。今年度は中止という政府の決定なので、せっかくですからゆっくり議論の時間にしてもらいたい。テロと呼べるほどの行動を起こすシーシェパードは議論での発言権はないと思いますが、そうなるといったい誰に捕鯨肯定論を説けば良いのでしょうか？　そしてテロ行為に屈して中止にする政府の決定も疑問です。

鯨の食文化を守るには。（kazuoi・大阪府・31）

沿岸捕鯨で、IWCの規制外でやるしか方法はないのかもしれません。南氷洋での捕鯨必要性がなく、当分の間の備蓄があるのなら、いいと思う。うちの近所のスーパーでは、和歌山に近いからかどうかはわかりませんが、最近冷凍鯨肉（それもミンククジラ）の広告掲載が多くなっていて、流通量が増えているのか？と不思議に感じていました。ただ、最近のクロマグロの問題にしても捕鯨にしても、確固たるデータがあるなら堂々と主張する必要があり、そういうところにも日本の弱腰が見えてならない。

致死性調査を続ける正当性なし（suzumeryo・東京都・38）

世界的にはホエールウォッチングによる生物多様性保全の潮流が主。国際的な信用を失い続けてきた水産庁が、今年ようやく過ちを認め謝罪する転換を果たした今、状況を正しく理解すれば南極鯨保護区から届く鯨肉を食べたい人は激減し、致死性の調査を望む人も激減すると、私は思う。

鯨肉をよく食べるわけではないが、シーシェパードのような団体による妨害で日本が捕鯨を中止するのは納得できない。その一方、商業捕鯨の隠れ蓑と見られる「調査捕鯨」という形で捕鯨を続けるのは得策とは思えない。このあたりは、多くのみなさんが同意できるところだと思います。
それではどうするか、というところで意見が分かれるのです。
 
「星野すみれ」さんは、日本に商業捕鯨をめざす企業があるのか、と問いかけています。仮に南極海での商業捕鯨が国際捕鯨委員会（IWC）で認められたとしても、ビジネスとして捕鯨をやろうという会社が出てくるは難しいと思います。現状程度の捕鯨頭数であれば、高い価格を設定するしかないし、それでは国内の需要が増えないからです。
 
しかし、南極海ではなく沿岸となれば、網走、鮎川（宮城）、和田（千葉）、太地（和歌山）などの沿岸捕鯨業者は、ツチクジラなどの規制外のクジラを獲ったり、近海での調査捕鯨としてミンククジラを獲ったりして捕鯨業を営んでいます。
沿岸での商業捕鯨が再開できれば、いまの近海での調査捕鯨頭数120頭に対して150頭を捕獲したいと、ささやかな要求をしています。
 
あれこれ考えると、南極海での商業捕鯨の権利を残したうえで、当面、沿岸での商業捕鯨だけにとどめる、というのが現実的な「落としどころ」という結論になりそうです。米国もこの妥協案には前向きだといわれ、南極海での縮小ではなく停止だと言えば、豪州も認めるのではないかと思います。
 
日本にはクジラを食べる食文化がたしかにあります。古代から続くその文化は言うまでもなく南極海での捕鯨ではなく、沿岸でのものです。こうした文化をもとに、年間150頭程度を捕獲するのであれば、国際的な反捕鯨の世論も変わってくると思います。沿岸まで反捕鯨団体が押し寄せ、実力行使をするなら、こちらは海上保安庁が駆逐できるでしょう。
 
クジラを食べる文化を守りたいというkazuoiさん、大量に捕獲しながら調査だと主張することに疑問を呈するENZOさん、suzumeryoさんも、これならある程度納得できるのではないですか。
一週間、熱い論議をありがとうございました。

• 2011.02.28
• 高成田享 コラムニスト、元 朝日新聞論説委員